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ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~  作者: 実川えむ
第9章

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第66話

 俺が目を覚ました時、アーロンはまだ戻ってきていなかった。

 ぐりぐりと瞼をこする。

 

『起きたか』

「うん。アーロンは?」

『一度戻ってきて、また出てったぞ』

「そっか」


 ベッドから下りて、椅子をズルズルと引っ張って窓際へと持っていく。俺の背丈じゃ、窓の外が見えないからだ。

 なんとか椅子にのぼって、ようやっと外の景色が見える。すっかり日が落ちているにも関わらず、街灯のせいか、思ったよりも明るい。


「……けっこう人通りが多いんだな」


 俺たちの部屋は、だいぶ高いところにあったらしい。日本でいう3階くらいだろうか。


「さすがにここから逃げるとなると、難しいな」

『逃げるの?』

「いや、まずはアーロンの話を聞いてからかな」

「そりゃいい判断だ」


 いきなり部屋のドアが開いて、アーロンが会話に参加してきた。

  獣人の聴力、ハンパねえな。


「……おかえり」

「おう。一応、飯貰ってきたぞ」


 彼の手には大きな木の皿に、パンと肉の塊とふかした芋のようなものが載っていた。ちょっと、見た目5才児の俺には量が多すぎる気がするんだけど。

 椅子から下りて、その椅子を引きずろうとしたら、先にテーブルに皿を置いたアーロンが持ってくれた。


「ありがと」

「さぁ、食え。食いながら聞け」


 アーロンはもう下で食べてきたらしい。

 肉が硬い。かぶりついても嚙み切れない。そんな俺を見かねたのか、アーロンが自分のナイフで細かい塊にしてくれた。


「どうも」

「おう……さてと」


 アーロンが長い足を組みなおし、見下ろしてくる。

 くそっ、でけーな、コイツ、羨ましいぞ。


「ギルドには一応、頼んできたぞ。すぐに伝わるかどうかは、わからんがな」

「……なんて伝言したの」

「ハルを預かっているってことと、今いる町に明後日まで滞在することかな」

「……明後日」

「ああ。お前を探している連中が、ここまで来れるとして、それぐらいがギリギリだろう」


 俺が隠れている間に見つけられたのはアーロンだけ。ということは、あいつらの仲間には獣人が含まれていないのだろう。

 アーロンが俺を抱えて走ってくれたものの、奴らのアジトからどれくらい離れたのかわからないからな。


「その後は、港町のカイドンに向かうことにする」

「うん。あっちの大陸に向かうって話だったからね」

「だったら、向かう方向は一緒のはずだからな」


 明後日までにヘリウスと合流できればいいけれど、その可能性は低い。それでも、港町まで行って、そこで待っていれば出会える可能性は増えるはずだ。


「へリウス様のことだ、なんとか合流してくれるだろ」

「……そう願うよ」


 アーロンは俺の頭をぐりぐりっと撫でると、食べ物がきれいになくなった皿を手に、部屋を出ていった。



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