表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~  作者: 実川えむ
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/94

第60話

「お、おいっ!?」


 目が覚めると、そう叫びながら俺は天井の方へと手を伸ばしていた。


「……なんだったんだ、アレは……そもそも、出戻りって何だよ、それに、ミサエって誰だよ?」


 ゆっくりと身体を起こしてみるが、なんだかフラフラする。

 落ち着いて周りに目を向けると、ここはギルマスの部屋ではないようだ。どこかの薄暗い小部屋……いや、倉庫みたいな所か。古びた木箱がいくつか積み上げられている。少し埃っぽい。おかげで、服は埃まみれ。

 そんな場所で、床に直置きとか、子供にすることじゃないだろう。ちょっとだけ、ムカッとする。この状況は誘拐されたのだろうか。


 ――紐で縛られてないだけ、マシか。


 外からの音は聞こえてこない。いったい、ここはどこなんだ。

 俺は立ち上がると、周りを確認していく。窓は高いところにしかな。その窓から入ってくる光からも、まだ、外は明るい時間なのだろう。木の箱を登って、どうこうできる感じでもない。


「まいったな」

『マイッタナ?』

「え」


 いきなり聞こえてきたのは、子供みたいな声。


「誰かいるのか?」

『ダレカイルノカ?』

「……真似するな」

『マネスルナ』


 そう答えてから、クスクスと笑う声が聞こえて、俺は幽霊か、とビビっていると、目の前に、野球ボールくらいの大きさの緑色の光の玉が現れた。それがふよふよと浮かんでいる。


「……なんじゃこりゃ」

『ナンンジャコリャ』


 こいつがしゃべってたのか!

 それから、夢の中であのオネエが言ってた言葉を思い出した。


「もしかして……これが精霊?」


 俺の言葉に、今度は何も言わずに、勢いよく上下に動き出した。


「お、おお……なるほど……って、お前、何か出来るのかよ」


 どうみてもただの光の玉にしか見えず、話せても、俺の言葉を繰り返すだけ。下手な家庭用のAIロボットよりも会話が成り立ってない。意味あるのか? なんて思ってたら。


 ズドーンッ


 光の玉から、いきなり何かがドアに向かって発射したかと思ったら、思い切り破壊されてた。びっくりして、俺は固まった。

 そんな俺の目の前で、緑の玉は、嬉しそうに? ぴょこぴょこ動いている。


「なんだっ! 何が起こった!」


 どこからか男の怒鳴り声が聞こえてきたことで、ハッとした。慌ててローブのフードをかぶり、木箱と木箱の間に出来た小さな隙間に隠れる。光の玉は、もれなく俺の頭の上だ。


「うお、なんだ、これ。ちょ……おいっ! チビが逃げたっ!」


 知らない男が、廊下の先に怒鳴っている。慌てているせいか、中をまともに探すこともしない。結構、お馬鹿か。後からやってきた男も同様だったようだ。


「くそっ、チビでもエルフはエルフってことかっ」

「何やってんだよっ、せっかくギルドからかっぱらってきたのにっ」

「そんなことより、さっさと探せっ」


 そう言うと男たちは部屋から離れていく。


「……なるほど」


 ギルド主体でやりやがったか、と思ってたんだけど。俺が意識を失っている間に、連れ去られたってことなんだろうか。どれくらい時間が経っているのかがわからないし、へリウスは気付いているんだろうか。


「くそっ、こういう時に、救援に来てくれる封筒があればよかったのに」


 そうは言っても、未だに、それに反応した者が現れたわけではない。近くに助けてくれる者がいなければ無意味だ。


「透明にでもなれれば、奴らに見つからないんだろうけど」


 そうポツリと呟いたら、頭上にいたはずの緑の光の玉が、目の前に降りてきた。


「そうは言っても、無理なものは無理か。とにかく、ここから逃げ出さないと」


 隙間からずるずると抜け出して見ると。


「……おいおいおい。なんだよ、この数は」


 いつの間にか、部屋の上の方に、すごい数の光の玉が浮かんでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ