表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルの異世界出戻り冒険譚 ~ちびっ子エルフ、獣人仲間と逃亡中~  作者: 実川えむ
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/94

第39話

 翌朝、白い靄が街の中にまでたちこめているような時間。俺はへリウスに肩車されながら、乗合馬車の窓口のある建物へと向かった。

 かなり小さな建物のドアを開けると、中はガラガラ。俺たちは正面にある、受付らしきカウンターに向かう。窓口にいるのは、普通の人族のおっさん。こういうのの定番は、美人のお姉さんだったりするんじゃないか、と思ったが、なかなか現実は厳しいらしい。


「カイドンまで大人一枚、子供一枚」

「……悪いが、しばらくカイドンへの直通は出ないぞ」


 無愛想にそう答えるおっさん。


「なんだって?」

「街道の何か所かで通行止めが起きてるらしくてな。直通で行く馬車は止まってる」

「通行止めだと?」

「ああ、噂では、Aランク級の魔物が出たとかで、その討伐が終わってないらしい」


 おっと。そんな物騒な場所なのか。この森林地帯は。

 俺は一瞬、不安になる。


「直通はなくても、途中までならあるのか?」

「なくはないが、その先が動いているかどうかまでは、ここではわからんよ」


 へリウスも渋い顔になる。まいったなぁ、と思いながら周囲を見回すと、壁にいくつかの紙が張り出されている。文字が書かれているんだが、俺にはそれは読めない。


「へリウス、へリウス」

「ん、なんだ?」


 俺はへリウスの頭をペシペシ叩いて注意を促すと、壁の方へと目を向けさせる。


「あれは何?」

「ああ、掲示板か。乗合馬車の向かう町までの情報なんかが貼られてる。どれ、仕方ねぇ。魔物の情報でも見てみるか」


 俺とへリウスの視線が、掲示板のあちこちに向かう。手書きで書かれているのは癖のある文字なのか、そもそも、そういうものなのか。元々俺は読めないからわからんが。

 辛うじて魔物の絵らしいのはわかる。大きな熊みたいなのやら、狼っぽいのが描かれている。こいつらが出没しているっていうのだろう。そんな中、珍しく、人の顔の似顔絵のような物も貼りだされている。


「あれも、魔物?」

「うん? いや、ありゃぁ、手配書だな」


 いわゆる犯罪者の顔を貼りだしてるのか。


「エルフで犯罪者の張り紙が出るとは、随分と珍しいな」

「そうなの?」

「ああ、エルフという種族自体が、秘密主義的なところがあるしな。身内の犯罪は身内で片をつけるのが一般的らしい」


 ――そんなんじゃ、片が付いたかどうかなんて、わかんないじゃん。


 そう思いながら目を向ける。その絵は、さすがに日本で見たような緻密な絵なんかではなく、色すらついていない、ただの線画だ。ストレートの長そうな髪に、少し吊り上がった大きな目、耳の特徴でエルフらしいっていうのがわかるだけだ。

 この絵だけじゃ、性別すらわかんないぞ。これで、ちゃんと指名手配できるんだろうか?


「その上、こりゃぁ、エルフの王族からの指名手配だ。何やったんだ、こいつは」


 へリウスがちょっと驚いた顔をしている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ