第３２話
ドアが開いた途端、まるでスーパーの特売かよ、と言いたくなるくらいの勢いで、冒険者たちが駆け込んでくる。幸い俺は、ヘリウスに庇われながら、受付のカウンターにいち早く着くことが出来た。
「おはようございます。新規登録ですか？ それともご依頼ですか？」
カウンターのお姉さんは、ぽっちゃりした大人しい感じの人だった。
「俺の新規登録なんだ」
「まぁ、あなたいくつ？」
「いくつに見える？」
ニッコリ笑いながら、逆に問いかける。正直に言うなら十八なんだけどね。
「そうねぇ、五歳くらい？」
ガクッ！ やっぱりか。
自分でも鏡を見た時、それくらいに思った。思ったけど、もう少し上に思われたかった！
ホビットたちは人やエルフの子供の年齢なんてわからないから、なんとも思わずに俺を連れ出してくれてたけど。へリウスも、五歳くらいって思ってるんだろうか。
「あら、違うのかしら？」
「あ、いや、えーと、五歳でも冒険者になれるの？」
ヘリウスが連れてきたんだから、出来ない話ではないんだろうけれど。
「登録することは可能よ。ただ受けられるクエストのランクは決まってるわ。それと、十歳以上にならないとランクアップは難しいわね」
マ・ジ・か～！
まぁ、子供が魔物の討伐とか受けて、危ない目に合わせるわけにもいかないんだろうな。
「そっか、まぁ、仕方ない。あ、じゃぁ、登録お願いします」
渡された書類に、必要事項を書き込むんだけど……読めるんだが、書けないことに気が付いた。
「ヘリウス～」
「仕方ねぇなぁ」
そう言いながらも、ニヤニヤしながら俺の上から頭をのぞかせ、書類に書き込んでくれた。これは字が上手いのか？ よくわからないなりに、サラサラと書いていくのを見つめる。
「ほれ、これでいいか」
「ありがとう！」
「では、少しお待ちくださいね」
ものの五分とせずに、手渡されたギルドカード。薄っぺらな金属のカードに、こっちの文字で俺の名前が彫られてる。ランクは一番下のＧ。たぶん、へリウスは書類にも五歳って書いたんだろう。とりあえず、あと五年はこのままＧランクってことか。
「五年か～。長いなぁ」
「そう言うな。それまでに、どんどん強くなっておけばいいだろう？」
「ヘリウス」
くしゃくしゃっと頭を撫でられて、ちょっとだけ和む俺。
そうだな。そもそも、ランクを上げる以前に、もっと強くならなきゃだ。まだ、自分だけで自分の身を守れるか、と言われれば無理。へリウスみたいな大人がいなきゃ、生き残れないだろう。
とりあえずは、誰にも追われないような身を隠せる場所を見つけなくちゃ。
俺はギルドカードを撫でながら、真剣な顔で見つめた。
