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第28話

 村を出て三日目。そろそろ魔の森の際に来ている。奥の方とは違って、木漏れ日が漏れているだけで、だいぶ明るく感じる。現れる魔物はほとんどなく、小さな獣の姿を見かけるだけだ。

 ボブさんたちの息子さんたちが住んでいるのは、この際の外にある町。ここからじゃ、まだ、町の影も消えない。たぶん、町自体が森から出る道の先にあるんだろう。俺たちは、その道からだいぶ離れた場所にいるもんだから、見えなくて当たり前だ。


「さてとぉ……町に行く前にっと」


 ボブさんは荷物を降ろして、リュックらしきものから何かを取り出した。その間に、メアリーさんは少し大きめな石を集め始めている。


「なんなんです? それ?」

「う~ん、獣人の仲間への合図する団子だなぁ。ちぃとばかし、臭ぇぞ」


 掌サイズの丸い草団子みたいなのを、石でつくられたかまどみたいなのの真ん中に置くと、そこに火打石で火をつけた。最初はジーッと燻ってる感じだったのが、徐々に火が広がり、白い煙がもくもくとあがり始める。


「くっ、マジで臭いっ」


 俺は袖で鼻のあたりを隠して、かまどから離れる。

 この匂いじゃ、魔物も野生の動物も近寄ってこないだろう。しかし、この匂い、キッツイなぁ。


                *    *    *


 草団子を焚きだして、そろそろ小一時間くらい経つ。その間、ウエストポーチにぶっこんでたゴブリンの耳を整理していた。一応、十個で一束になるように、麻紐で括りつけたてみたら、だいぶ数があってびっくりした。

 気が付けば、団子も黒い塊状態だ。煙もほぼ出てきていない。これで本当に、ボブさんの知り合いというのが来るんだろうか? と疑問に思っていると、少し遠くの方でカサカサッと音をたてて、何かが近寄って来る音が聞こえた。


「ボブさん」

「……でぇじょぶだぁ」


 そう言いながらも、ボブさんもメアリーさんも隙はない。俺も背中に背負っていた弓に手を伸ばす。弓を構えながら、何がきてもいいように待ち受ける。

 ガサガサという音が近くなり、ギュッと弓に握りの部分に力をいれる。矢をつがえて、グイッと弦を引く。これで、いつでも撃てる。


「おっと、矢を射るのはやめてくれよ」


 呑気な声が聞こえたかと思ったら、ずいぶんと大柄……見上げるような巨大な狼の獣人が現れた。


 ――すげぇ。


 素直に感動した。

 初めて見る獣人の姿は、美しいの一言に尽きる。

 顔は人間の顔(悔しいくらいのイケメンだ)なのだが、大きな耳が頭の上にあって、ピコピコしている。黒い毛並の太い尻尾がゆさゆさと揺れていている。綺麗なスカイブルーの目が、優しそうに微笑んでいる。


「ヘリウス、よく来てくれたなぁ」


 ボブさんたちは、にこやかな顔で狼の獣人を迎え入れていた。


「おう、ボブとメアリーの頼みじゃ断れないさ」


 ニカッと笑う顔に、こいつ、絶対、女にモテモテだよな、と思ったら、なんかムカついてきた。



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