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第16話

 俺が今、目にしているモノはなんなんだろうか。

 少し歪んだ古い鏡面に映るのは、可愛らしい少年エルフ。

 そう、どう見ても、()()()なのだ!

 白銀のくるくるっとカールした短い髪に、少しつり上がった群青色の目、ピンッと尖った耳……。一歩譲って、白髪っぽい、とか、青みがかった黒い目とかはある、そう、あるけどさ、この尖った耳は……。

 これって、天国じゃなくって異世界ってヤツだよねぇ……明らかにおっさんたちは人間じゃないし……まさかと思うけど、これ、転生とかいうヤツ?


 ――俺、エルフになっちゃったの?


 つい、遠い目になってしまうのは許してほしい。


「坊や、服、大丈夫け?」


 ドア越しに声をかけてきたのは、ぽっちゃりおばちゃん。


「あ、はい」


 俺の返事で、ドアを開けて入ってきた。


「ん~、やっぱり、エルフには私らの服は似合わんねぇ」


 申し訳なさそうに言うおばちゃん。俺としては、そうかなぁ? って思うんだが。

 実際、白いシャツに皮のベスト、くすんだ緑のパンツ姿は、普通にありそうな格好だと思う。さっき、村の中で見かけた人たちも似たような格好してたし。


「そんなことないです」

「そうけぇ?」


 ただ、靴がないのは厳しい。足の裏が頑丈に出来てるのか、みんな裸足なんだ。万が一、靴があったとしても、みんなデカいから、ブカブカだったろうけどね。


「どしたぁ? ダメだったかぁ?」


 のんびりした声は、後から入ってきたホビットのおっさん。


「……ああ、やっぱり、エルフには似合わんなぁ……」


 なんか残念そうな顔している。そんなに言うほどかぁ? ともう一度鏡を見るけど、俺はそうでもないと思う。というか、もう、俺、エルフ確定なんだ、と自分の現状を改めて考えてしまう。

 そもそもエルフって、どんな格好してるんだよ。


「さぁて、まんず、飯でも食うか?」

「えと」

「腹、減ってねぇか?」


 言われてみて、自分のお腹を無意識に抑えてる。夜中に逃げ出してから、どれくらい経っているのか。森にいた時はすでに日が昇ってはいたようだし、腹が減っていてもおかしくない。


「まぁ、食いもん見れば、食欲もわくべ、なぁ? ……あ、名前、なんてんだ?」


 おばちゃんに優しく言われて、ふと、自分の名前を素直に答えそうになる。

 しかし、不意に頭に浮かぶのは、ファンタジーの定番。真名を教えるのはいけないってやつ。見た目エルフの俺、何が起こるかわかんないし。この世界でのエルフの存在って、どんななのかわかんないし。まぁ、おばちゃんたちの感じから、けして畏怖の対象ではないんだろうって思うけど……。

 俺は、コクリと喉を鳴らしてから、おばちゃんを見つめて、ゆっくりと答える。


「ハル」

「!?」


 おばちゃんとおっさん、二人ともなぜか驚きの顔で、俺を見つめる。


 ――えぇぇ? 俺、なんか間違えた?


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