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第15話

 あまりの勢いにまともに会話する暇もなく、おっさんに抱え込まれながら着いたのは、なんとも不思議な場所だった。


 周囲を、天に届くんじゃなかろうか、と思うほどの大きな木々に囲まれた、ぽこりと凹んだ場所。苔むした土地の中に、家というのか、地面にドアがついた状態のものがいくつも作られている。

 いわゆる俺が知っているタイプの一戸建てのような建物は一つもない。強いて言えば、竪穴式住居的なものといえばいいんだろうか? そして地面から煙突が生えているようで、煙がいくつかあがっている。これは、村、みたいなものなんだろうか。

 そして、おっさんと同じくらいの大きさの男たちが数人、俺たちのことに気付いたのか、驚いた顔でこちらを見ていた。

 俺の方も、あまりにも見たことのない風景なものだから、ぱっかーんと口を開けたまま、呆然としている。

 そんな俺のことなど気にもせず、おっさんは俺を抱えたまま窪地に勢いよく降りていくと、いくつもあるドアのうちの一つを開けて入っていく。


「かあちゃんっ! なんぞ、着るもんないかっ」


 家の中に入ってみれば、外よりも暖かいことにホッとする。

 壁は土の壁に、可愛らしいデザインの小さな木製の家具がいくつも置かれている。これは、かあちゃんと呼ばれる相手の好みなのだろうか。


「あぁ? ずいぶん早いな、どうした……だ?……ひえっ!?」


 キョロキョロと観察していると、エプロンで手を拭きながら現れたのは、やっぱりちんまいおばちゃん。ふくふくしいほっぺを赤くして、まるで子供が好んで可愛がりそうなぽっちゃりした人形みたいだ。

 しかし、おばちゃんは俺の顔を見て真っ青になると、おっさんを怒鳴りつけた。


「あんたぁ! どこでこの子、攫ってきたのよぉ!?」


 狭い空間に響く、おばちゃんの声に思わず、両手で耳を塞ぐ。

 おばちゃんは『拾う』ではなく『攫う』一択なのは、なんでだろう?


「馬鹿言うでねぇ! 魔の森の奥で一人でいたから、慌てて連れてきただよ!」

「んな、馬鹿な! こんな素っ裸で、そもそも魔の森になんぞ、エルフの子供がいるわけねぇだろっ」

「だが、いたんだ! 仕方ねぇべっ!」 


 ……うん?

 おばちゃんの不審な言葉に、思わず身体が固まる。

 《《エルフ》》、って言ったか?


「まずい、まずいわ」

「そんなとこでウロウロしてねぇで、まずは服さ、出してけろっ」

「ああ、ああ、そ、そうだな」


 二人が慌てている中、おばちゃんの言葉を考えている途中で、自分の耳の違和感に気付く……やたらと耳が上に長くないか? そして、尖ってるっ!?


「な、な、なっ……なんじゃこりゃっ!?」


 思いの外可愛らしい、甲高い俺の声が、家の中に響いた。



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