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第13話

 俺が目が覚めたのは、あんまりにも寒かったから。

 確かに、雪道を彷徨ったけど、一応、ジャンパーも着てたし、長靴も水が沁み込むようなものではなかった。しかし、ここまで寒いってのは、おかしい気がする。


「へ、へ、へっくちょんっ!」


 ん?

 あれ? 俺のくしゃみにしちゃ、ずいぶんと可愛らしい声じゃないか。

 あ、風邪か? 風をひいちまった? 

 手で鼻の下を拭うが、鼻水は出てなかった。

 くしゃみの勢いで、目を開く。見上げた空……じゃなくて、見えたのは背の高い緑の木々。むしろ鬱蒼とした森の中みたいで、空も見えない。木漏れ日……もない。そして。


「あ?」


 おかしい。突き刺さるような冷たさを感じない。

 ……雪がないっ!?


「あぁっ!?」


 慌てて飛び起きたが……なぜか、マッパの俺。

 丸みを帯びたぽっこりお腹に……自分の分身さんが……ずいぶんと可愛いサイズになってる。


「あ、あぁぁぁぁぁっ!?」


 ギャーギャーギャー


 俺の叫び声に反応してか、鳥の鳴き声が響く。


「どうなってんだよっ!」


 甲高い声を上げながら立ち上がり、自分の身体を確かめる。

 どう見ても、十八歳の健全な男子ではない。これはむしろ……。


「五才くらいじゃねぇか?」


 むちっとした腕に、小さくなった手……というか、なんでマッパなんだよ。声も子供の声になってるし。


「服、服はどこいった」


 周りを見渡しても、服らしいものはない。


「というか……ここ、どこ?」


 たまたまなのか、俺の立っているあたりは、ぐるりと木々には囲まれているが下草のあまりない、開けた場所。『池』と言うべきなのか怪しいが、小さな池がある。綺麗な水が、こぽこぽと湧いているようだ。もしかしたら、この森の生き物たちが集まるような場所なのかもしれない。


「ていうか、寒っ」


 俺は自分の腕を摩りながら、周囲を見るが、俺の服は見当たらない。

 どうしてこうなったのか、考え込んでいたら、すぐに思い出した。

 神社の池で黒い手のようなものに、池に引きずり込まれ……。


「あ、あー。……俺、死んだ?」


 意識が朦朧としたところまでは覚えているが、そこからは記憶にない。


「え、ここって、天国か何か? だからマッパ? だからお子様?」


 それにしたって、案内役みたいな人とか物とかないのか? 周りを見渡したけど、それらしいのは見当たらない。

 仕方なしに、マッパのまま、様子を伺いつつ周囲を歩いてみる。

 背の高い木は、樹齢何百年、とか言われそうなくらい太い幹に、たっかいところに枝がある。思わず見惚れるくらいの高さだ。

 一方の下草の高さは、開けたところはさほど高くはなく、お子様体型の俺でもなんなく歩ける。裸足で歩いても大丈夫なくらい草が生えてるのは助かったけど……ここって、人とか来ないってこと? 

 そんなことを考えていたら、急に血の気がひいてきた。


 ――もしかして、貧血?


 俺はたまらず、その場にしゃがみ込んだ。


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