番って下さい
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ルイド君と冒険者ギルドに飛び込んで、ギルドのカウンター内に居たみつ豆さんに事情を説明した。
みつ豆さんは表情を変えると私達を応接室に案内をしてくれた。そこで改めて聞き取りを再開しながら、私とルイド君の話を書き留めている。ルイド君はさらにこう訴えた。
「いきなりリレッタを呼びつけて脅し、おまけに拉致…恐喝。高位貴族だからとはいえ特権を振りかざすにも限度があります。リレッタでなければ切りつけられて亡くなっていたかもしれない!」
みつ豆さんは、少し待っていなさい…と言って私達を置いて応接室から出て行った。
ルイド君は個人的にも報告書を書いて上に提出するようで、今も報告書類を書いている。奴隷印のこともあり、病気休職中…という扱いになったと言っていたのに、休職中にも働くルイド君に異世界の社畜根性を垣間見たような気がした。
「リースベル=ナエリアシス侯爵子息の事は、ギルドから国王陛下に報告をあげれば監査の手が入ると思う。もしかすると他の街でも優秀な術師に何かしらの脅迫事件を起こしてるかもしれないしな!」
ルイド君はそう言うけど、相手は高位貴族だよ?私みたいな庶民が訴え出たって、はいはいそうですか~で終わりそうな気がするけど…
そして暫くするとみつ豆さんが戻って来た。
「ギルド本部長に報告しておいた。近いうちに本部に行ってもらって事情聴取を受けてもらうことになるかもしれない」
と教えてくれた。みつ豆さんはソファに座り直すと、眉間をモミモミしている。
「実は本部長は明言されなかったのだが、リレッタのような事案が各ギルドから報告に上がっているようなんだ。私の予想ではよその街や国では大きな被害が出ているのではないかと思うね」
「大きな被害…」
「ドラゴンの治療術師達がここまで一挙に、身罷られるのは…我らがこの世界に移住して初めてのことらしい…」
みつ豆さんの言葉にちょっと疑問を感じた。移住…聞こえは良いが要は異種族の彼らが侵略して来た…と言ってもおかしくはない戦争が8000年前に起こったのよね?今でこそ確執はないと思うけど、長命で強靭な異種族達にとってはつい最近のいざこざ程度の認識なのかもしれないと考えてしまう。
みつ豆さんはルイド君と私を交互に見ながら話の続きをしてくれた。
「長老達の中には、人間同士の争いには興味が無いと言っているのもいるが…元はと言えばドラゴンの作った万能薬のせいで争いが起こっているのも事実だ…人間と共に生活している私はそれを放置は出来ない」
うむ…と言ってみつ豆さんはルイド君と私を交互に見た。
「ルイド、お前は休職中だしちょうどいいな。リレッタと一緒に古代竜のワースクエイトに会いに行ってみないか?もしかすると『万能薬』の調合方法を教えてくれるかもしれない」
「ええっ!」
ルイド君と私の声が重なった。
古代竜?確かにさっきみつ豆さんがチラッと言ってた長老…という竜達のことだよね?5000才以上の竜の総称って本には書いてあったけど、そんな太古の化石みたいな竜、実在するの?
「万能薬って人が作れるんですか?」
ルイド君にみつ豆さんは微笑んだ。はいっ555才美オヤジの微笑、頂きました!
「勿論だよ、私達も詳しい成分は分からないが入手困難な素材が多いことだけは分かる。そこで鼻の効くルイドの出番だよ。ルイドなら万能薬の素材採取に役立つと思うよ?ただ問題はその調合方法を教えてくれるかどうかだ、私個人としては、調合方法を教えていいと思うんだよ。世に存在する薬術師に是非作ってもらいたい。そして無駄な争いをしないようにしてもらいたい」
そうだよね!うんうん、みつ豆さんの言う通りだ。薬術師を生業にしている人なら一度は万能薬を作ってみたいと思うよね。調合方法を是非教えて欲しい!
そう言って、古代竜に連絡を取ってくれるというみつ豆さんからの連絡を待つことにして、私とルイド君は一旦、ラウンの森の中に建つ私の家に帰ることにした。
その前にルイド君が騒ぐので都会の市場で魔獣肉を買うことにした。
「食材の代金は俺が払うから魔獣肉料理作ってくれ!」
肉屋の前で興奮しながらルイド君はそう叫んだけど…ちょっと疑問に思ったことを聞いてみた。
「あの聞きたいことがあるんだけど、ルイド君は料理は出来るの?」
「お茶を沸かして入れることが出来ます」
「それは料理じゃねえよ…」
「………済みません、何も作れません」
「ルイド君は長い独身生活でずーーっと食事を買ってきたり、外で食べたりしていたの?」
ルイド君はコクコクと頷いている。はぁ…これはバランスの悪い食生活送っていたっぽい気がするな~いやそもそも、ワーウルフのバランスの良い食生活って何だよ?って感じだけど。
「分かったわ、古代竜に会いに行く為にもしっかりと栄養の取れた食材をいっぱい食べて、体力を付けましょう!」
「おーっ!」
ルイド君は拳を突き上げた。ノリが学生みたいだよ?
という訳で、ルイド君が食材費を持ってくれると言うので魔獣肉を大量に買って帰った。多分魔獣肉の総重量は数トンは買っていたと思う。何せ私の持っている魔法のショルダーバッグが新たな魔獣肉を入れようとして吸い込まなくなるくらいに満杯になっていたからだ。私のお母さんが作った、その名も『エコバッグ』に容量オーバーなくらいまでモノを詰め込んだの初めてだわ。
「異世界風に調理した魔獣肉料理にしても構わないかな?」
王都の転移乗り場に移動しながらルイド君にそう聞くと、嬉しそうに微笑むルイド君。
そして……転移でジャンデ村に戻って、うっかり忘れていたのだ。今、ルイド君はモフモフじゃなくて、キュルリンとした美少年だということに……
村に着いて、歩き出して気が付いた。村娘さん達が見ている…私じゃなくルイド君を!?
しまった!キュルリンしたままだった!
「モフモフ!?」
「なんだっ!?」
私に指差されて、腕を引っ張られたルイド君は、オロオロしていた。
そして、家まで一気に転移しようと身構えた時に、配達の途中らしき酒屋の息子マミスさんと遭遇してしまった。
キュルリン美少年の腕を取っている私……
マミスさんは目を見開いたまま、固まっている。するとマミスさんを、押し退けるようにして顔見知りの女の子達が数名が、キャッキャ言いながら私達の前に走り寄って来た。
「きゃあ!格好いい!」
「リレッタさん、この人誰ぇ!?」
「もしかしてリレッタさんの彼氏?」
ひええっ!?また噂が広まってしま……
「そう彼氏…恋人。そう言うことだから…」
なぁっ!?………と思ってルイド君を睨みつけようとして顔をあげた瞬間、視界が揺れていつの間にかラウンの森の私の家の前に転移していた。
転移魔法を使ったのはルイド君だ。高位魔法使えないんじゃなかったの?
「どうしてあんなこと言ったのよ!また誤解されちゃう!」
ルイド君はまだ私の二の腕を掴んだまま、私を真顔で見下ろしている。吸い込まれそうな金色の瞳だ。
腕に触れたルイド君の魔力が、ゆっくりと動いているのが視える。私は魔法での治療術の才能は殆んど無いが、魔質や魔力が目で視える能力は持っている。
ルイド君の表層魔質がゆっくり揺れて、私を優しく包み込むように流れてくる。
嘘っ!?この魔質…まさか…ルイド君が私の顔をグイッと引き寄せた。
唇に触れるルイド君の温もり…魔力が流れてくる。気持ちいい…魔力ってこんなに気持ちいいの?
その時ルイド君の舌が私の口内に入ったきた。
あっ甘い!?え?ファーストキッスは甘い苺の香り……んな訳あるか!唾液だよ?口からの分泌物だよ!変な想像しちゃった…
「…ん…あっ…ル……」
ルイド君は無言で唇を押し付け、舌を絡ませてくる。
口付けが甘い…何これ?唾液の中に何か薬が入ってない?体が熱い…気が付いたらルイド君にしなだれかかっていた。
「やっぱりな…間違いない」
体に力が入らない。ルイド君に顔を覗き込まれる。
「もう認めるしかないな…リレッタは俺の番だ」
ふえっ?頭がボーッとなってよく分からなかった…え?
また口付けられて、お互いの舌が絡まる。甘い、甘いよ?何これ…
「汗や唾液…番の身体から出る体液は俺にとって極上の甘さで媚薬に感じるんだ。リレッタ…お前もだろう?違うか?」
「番は……甘いの?」
「そうだ、それに匂いが堪らない。俺はリレッタの匂いを嗅いでると酩酊しそうになるな。お前も俺の匂いが良い匂いって言ってた」
言った…確かにモフットルイド君からは優しくて甘い香りがしていた。ずっと嗅いでいたくなる香り。
「あれ番の香りだったの!?」
「そういうこと…んっ」
ルイド君が私の体を抱き寄せた。本当に良い香り…モフモフだから香っていた訳じゃなかったんだ。
私の番…
「…という訳でリレッタ、番ってくれるよな?」
私は良い笑顔のルイド君を下から睨み上げた。番の色気?でポヤンとなっていたが我に返った。
「なんでそーなる!あのね、まずは順番!何事にも順番があるでしょう?まずは『お付き合いして下さい』その次は『ご両親にご挨拶させて下さい』それが終われば結婚…婚姻、ここで初めて番って呼べるんじゃないの!?」
ルイド君は嫌そうな顔をした。
「それは人間基準だろ?出会って番だと認識したら、もう番だし死ぬまで…いや、死んでからも離れない。番はお互いの魔力を分け合い寿命も分け合う。死ぬ時は共に死ねるようになる。それが番だ」
「ちょっとちょっとっ!?今さりげなく重要なポイントが差し込まれていたけど!?死ぬのは自由にさせてよ!それに死んだ後はゆっくりさせてよ!どこのストーカーだよ!死んでからもお父さんと同じお墓は嫌だわ〜って言ってた前世のオカンと同じことをうっかり言っちゃいそうだったわ!」
ルイド君は益々嫌そうな顔をした。
「時々異界語が挟まれていて、分かりづらかったけど…俺と番になるのが嫌なのか」
そう言いながらルイド君は険しい表情を見せてくるけど、私は首を横に振った。
「モフモフとずっとモフモフ出来るなんて最高!だけど、もっと余韻?甘酸っぱい期間を味わいたいのよ!」
ルイド君は表情を和らげると、首を捻っている。
「益々分からないけど、恋人として振る舞うなら今からでも大丈夫なんじゃねえの?」
ルイド君の提案に、私には付いていないケモミミがピンっと立った気がした。
何それ?決して自分はお花畑状態にはならない!と妙な自信があったけど今、間違いなく頭の中にお花畑が咲いている。
「恋人として今から宜しくお願いしますっ!」
「早えぇ!……まあいいけど?番ってくれるんならなんでもいいや。こちらこそ宜しく」
私はルイド君が差し出した手を握った。2人、手を繋いだまま家に入った。
そして今日王都で買ってきた食料を片付けようとしているのだが…
「こんな大量に買って大丈夫だったのか?」
ルイド君は私と一緒に台所入ってきて、魔獣肉でパンパンの私のショルダーバッグを指差した。
あれ?
「あ、うんショルダーバッグの予備は何個か持ってるんで、生肉入れてるバッグは食料保管庫の代わりにするわ」
そう返事をして、魔術肉以外の薬や財布、着替え等を取り出してきて、別のバッグに入れ替えることにした。
ルイド君は台所の椅子に腰かけて、特に何をするのでもなくボンヤリしている。
あれれ?
ルイド君は普通だ。変な表現だが『番』だとお互いに確認しあったのに、いつものモフモフと同じような雰囲気だ。
私、番ってもっとガンガン近付いて来て溺愛デロデロになるイメージだった。ほら、異世界転生の強面将軍の溺愛なんとか…て小説もあるじゃない?
違うの?
お茶を入れて、王都で買ってきたお煎餅みたいなお菓子を持ってルイド君に声をかけた。
「ルイド君、お茶飲もうか?」
ルイド君は頷くと、リビングのソファに座った……えーと対面ですね?番の立ち位置としては合ってるんでしょうか?
私は思い切って聞いてみた。
「ルイド君はその…ベターッてくっついてきたりしないんだ〜アハハ」
ルイド君は一瞬目を見開いた。
「…何と、誰と比べてるの?」
しまった!キュルリン美少年が殺し屋みたいな顔になってきている!
私は慌てて異世界の、獣人溺愛デロデロ系の小説を説明した。
ルイド君はへえ〜と感嘆の声をあげた。
「異世界の作家の人って想像力豊かだな〜そうだな…溺愛っていうならドラゴン種の方が強いかな?ワーウルフは番を認識すると、すでに魔力と匂いと気配をどこに居ても感じられるようになるって言うな。俺達は近い距離にいるから実感しづらいかもしれないけど、距離が離れると分かると思う。どこかにいる番の存在を感じられるはず」
「なるほどね~存在を感じているから、側に引っ付いて〜とかあまり思わないの?」
ルイド君は苦笑いをした。
「それは個体差にもよるんじゃないかな?俺はワーウルフの中でも割りと淡白な方かも……リレッタは引っ付きたい?」
「ううん!そういう意味では私も一匹狼?っていうか群れない性格っていうか、一人で楽しむ時間を大切にしたい。勿論ルイド君は特別だけど…たまに、こう沸き上がる情熱?モフモフギュッとしたい衝動に駆られるというか…触りたくなったら触ってもいい?」
ルイド君は頬を染めながら、両手を広げた。あれ?
「勿論いつでもいいよ。え~と…今すぐモフモフする?」
ちょっとぉぉ~ここで溺愛攻撃してくるのぉ~?
「今ぁいやぁしたいけど、今はモフッというより、ガシッと抱き付きたいというかぁ~……よろしくお願いします」
私はテーブルを回り込むと、両手を広げてニコニコしているルイド君の腕の中に納まった。
クンカクンカ……やっぱり甘くて優しい匂いが充満している。そうかコレ香水の匂いとかじゃないんだ。番の匂い…
「リレッタまた匂いを嗅いでいるんだろ?」
「だってルイド君、良い匂いなんだもの…」
頭頂部にチュッとルイド君が口付けを落としている。
「気持ちは分かる。リレッタからは雌の良い匂いがする…そそられるなぁ」
雌…物凄いパワーワードだね。オスとかメスとかってこのメス豚めぇ!とか言う年齢制限のある映像ものでしか聞いたこと無いわ…
ルイド君の綺麗な顔が近付いて来る…ウットリとしながら目を閉じた…
「リレッターーァァ!!」
バァアアン!と豪快な音がして私の家の扉が開けられた。そして走り込んで来た人達とルイド君と抱き合ったまま見詰め合う……
「お父さん…お母さん…」
「っな!」
ルイド君が私を抱き締めたまま仰天している。
障壁を張っているはずの私の家の玄関を蹴破って侵入…もとい、入って来たのはリエガー=リコランティス(父)とローズエッタ=リコランティス(母)だった。
なんたるタイミングだ…子供の濡れ場?に親が乱入するこの気まずさよ…
「リレッタ……あなた…」
お母さんがワナワナと震えている。普段は能天気な言動の多い母が、流石に娘のふしだらな現場を見て怒っているのか?
「どこでそんな美少年見付けてきたのよーーでかしたぁ!」
「そっちかーーーぃぃ!」
思わず異世界風のツッコミを入れてから、びっくりしてキョドッテいるルイド君を立たせると両親にルイド君を紹介した。
「こちらは、手紙でも書いたワーウルフのルイド君です。見ての通り…え~と美少年という風貌ですが…ワーウルフなので実年齢はもう少し上です」
「まああっ!そうなの?こんなに可愛いのにぃ!初めましてーローズエッタ=リコランティスよ」
ルイド君はお母さんのおば様圧に押されているようだ。
「色々と大変だったみたいだね、君の力になれると思うよ。リエガー=リコランティスだ、宜しくね」
流石にお父さんは浮かれずにいつも通り淡々としている。
ルイド君は自分のショルダーバッグから、ギルド証を持って来てお父さんに差し出した。
「初めまして、ルイド=シルバレーと言います。冒険者ギルド所属のSクラスに在籍しています」
「おおっ!冒険者なのか~」
「きゃあ!Sクラスなのお!」
流石に両親もSクラスの冒険者を生?で見たのは初めてなのか、ギルド証を2人して覗き込んで……そして固まっている。
「あ…あら?この生まれ年号の所…ねえ?リエガー、私には405年に見えるのだけど?」
「そ…そうだね?今は…457年だよね?あれ…?」
「年は間違ってないよ…さっきも言ったけどルイド君、ワーウルフだから…」
「…!」
両親は驚いて一斉にルイド君を見詰めた。どれほど眺めたってキュルリンとした美少年には違いは無いから…ルイド君が困っているよ…
「52才…」
「はい…あ、それと俺…リレッタの番です。彼女と婚姻の予定です。よろしくお願いします」
流石にお父さんはそれほど驚いてはいないみたいだった。お母さんは顔を真っ赤にして私とルイド君を交互に見ている。やっぱり、番なんて認めません!とか言って怒るのかな?と思ったら…
「おとうさーーーん!聞いた?ねえ聞いた?リレッタがやーーっとお嫁に行くわよぅ!」
「そっちかーーーぃぃ!」
また異世界風にツッコんでしまった。
という訳で、色んな意味で大興奮の両親を交えて、ルイド君に会った経緯と奴隷印…それから例の侯爵子息の狼藉からみつ豆さんの万能薬の件までを一気に伝えた。
お母さんは煎餅をバリバリかじりながら聞いてくれている。お父さんはお茶を静かに飲んでいる。
私とルイド君の説明を聞き終わるとお父さんは、なるほど…と小さく呟いた。
「実はね、ローズと出かけた旅行先で何度かリレッタみたいに、どこかの貴族らしい者達に囲まれたりしたんだ」
「ええっ!?」
「やっぱりっ!」
私とルイド君がそれぞれに叫んだ。お父さんはお母さんを見つつ、私とルイド君に頷いて見せた。
「心配することはないわ。勿論、そんな輩には従わないし、正規の手続きを踏んで治療を申し込んでくれれば診察にお伺いしますと伝えたの。でもね…云う事聞かないのよね~早く診ろ、死期が迫っている…病をすぐに治せ…の一点張り。寿命が尽きる人に治療魔法は効かない、死期や病魔が襲っていて余命いくばくもない状態なら無理だ…と説明したんだけどねぇ」
お母さんも私と同じような説明をしたんだ。
「しかし、ドラゴン種が今そのような状況になっているとはね…それで不逞の輩が湧いて出て万能薬を寄越せと言ってくるのか…」
「お父さんは万能薬持ってるの?」
そうお父さんに聞くと、頷いた。
「まあ一応一個だけは…治療術師のドラゴンの知り合いから随分昔に購入したんだが、その彼は身罷ったのか…そうか…」
「ねぇ…それで奴隷印ってどうなってるの?視た所、ルイドちゃんの魔流は綺麗に流れてるけど?」
お母さん、ちゃん付けで呼ぶんだ…ルイド君の方が年上だと思うけど?
「ちょっと見せてくれる?」
「はい」
ルイド君は大人しく、首元をお母さんに見せた。お父さんも横から覗き込んでいる。
「ねえ、古代語だよね?読めるお父さん?」
お母さんはルイド君の首を見て目を見開いた。
「……これ」
「なんだ…殆ど解術出来ているじゃないか」
両親の言葉にポカンとする。
奴隷印、解術出来ているだってぇ!?
やっと番になりました(^.^)