ワンコの擬態
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「俺はSSクラスに在籍していた伯父とチームを組んで仕事をすることが多かったんだ。それで半年前にくらいに伯父が亡くなって…単独で仕事を受けることになって…ん~前からAランクの冒険者の男達とかに、嫌がらせとかされることもあって気を付けてはいたんだけど…」
「嫌がらせっ!?冒険者なんでしょう…そんな…」
世界規模のすごい組織の冒険者なのにイジメなんて…幻滅だわっ。
「どこに行っても差別とかはあると思うよ?それに俺は…舐められやすいしな…」
それは分かるわ。ルイド君ものすごく綺麗だものね…その辺の女子より綺麗だものね。同性の男子からやっかみも受けるよね…うん。
「それで数人の冒険者のヤロー共に囲まれてボコボコにされたんだ…」
「殴られた…の?」
「うん、それでそのまま奴隷商に連れて行かれちゃったって訳…それが20日くらい前かな?」
殴られただけなんだ…良かったぁぁ。いや、殴られて良かったもないけれど、あれやこれやされたんじゃないかと、心配だったけどそこは大丈夫だったのよね?怖くて聞けないけど…
「奴隷商に捕まったものの、めっちゃ暴れてやったら…その奴隷商があの古代語魔法の奴隷印の術式を持ってたみたいで、それを埋め込まれちゃったって訳だ。まさかドラゴンの秘術を町の奴隷商が持っていると思わなくて完全に油断してた…」
「あっそうだ!質問!」
「何だ?」
私がサッと手を挙げるとルイド君が促してくれたので、話の続きをした。
「古代語魔術の奴隷印の捕縛魔法かな?は他はどんな効果があるの?私が知っているのは従属奴隷の主人からは遠く離れられないとかくらいだけど…」
ルイド君は頷いた。
「一般的に知られているのはそれくらいだろうな。実はそれ以外にも細かな従属強制事項があるんだ。一番厄介なのが『魔力抑制』これがキツイ」
「魔力抑制?つまり魔力を上手く扱えないということなの?」
「強制的に魔力の巡りを滞らせて、高位魔法の発動を制限するんだ。つまり奴隷印をつけられたら高位魔法が使えない」
「あっ!それであの檻から逃げられなかったのね!だっておかしいと思ったのよ…ルイド君の潜在魔力量は膨大な量なのにあの檻一つ壊して逃げることが出来ないなんて…」
ルイド君は舌打ちをした。モフモフの舌打ち…違和感があり過ぎる。
「俺も奴隷印の成り立ちや術式等の簡単なことしか知らなかったから、まさか高位魔法を封じられるとは思ってなかったんだ。それにもう一つ『黙秘』これをかけられていた」
「黙秘…古代語魔術の確か…特定の言葉以外は言葉を封じられる魔法ね」
知らなかった奴隷印って驚くほどの、秘術が絡み合ってとんでもない従属性のある捕縛魔法に仕上がっているんだわ。魔術構造はどういう術式何だろう…私でも読み解けるかしら…
「『魔力抑制』と『黙秘』で何も話せないし、逃げるに逃げれないし…檻の中で飲まず食わずで頑張っていたらあの子に買われて…そして更に暴れていたら、ここに辿り着いたって訳だ。でも全部俺の不徳の致すところだ。捕まってしまったのは自身の慢心が招いた結果だし、Aランクとはいえ下位の冒険者に後れを取ったのも事実だ」
私は、ルイド君のそれを聞いて床に座っているルイド君ににじり寄った。
「何を馬鹿なことを言っているのよ!不徳ぅ?そんなの集団で襲って来たそのAランクの馬鹿共が全部悪いに決まってるじゃない!なんでルイド君が自分を責めないといけないのよ!」
私が怒ってそう言うと、ポカンとしていたルイド君だったが…変な顔をしていた。つまりは笑ったのだ…因みに狼が笑うと変な表情になっていた。美しくはない、念のため。
「うん、ありがとう…だがやはり冒険者ギルドのSランクに在籍している以上、どんな不測の事態にも対処出来なければいけないから、冒険者失格なのも本当だ。一度ギルドに行って事情は説明してみるが…まあ除籍処分だろうな。高位魔法がつか……あれ?」
あれ?って言ってからどうしたの?呟いてから彫像のようになって動かなくなった、人狼ルイド君を見詰める。
「俺…今、結構喋っているよな?」
「うん、そうね?包み隠さず話している感じだね」
モフモフルイド君は首を捻っている。どうした?
「さっきも言ったけどまだ奴隷印は俺にかけられたままだと思うんだけど…『黙秘』が解術されているかも…」
「ええっ!?そ…う言われてみれば確かによく喋っているけど、これって術が解けてるの?え?そうだ、ちょっと首元見せてくれる?」
ルイド君はモフっとした首元を私に見せてくれたが…おいっ!モフ毛で奴隷印が見えないってばよ!
「モフ毛で奴隷印が見えないけど…人型になれる?」
ルイド君は、え?あ?とか言いながら急に顔を赤くして慌てている。私は大きめのバスタオルを持ってくるとルイド君の前に置いた。
「これで下半身を隠せば大丈夫でしょう?さあ下半身の露出を隠して…」
「かぁ…下半身を連発するなよ!…分かったよ…くそっ!後ろ向いててくれ」
はいはい、裸の一つや二つ…乙女だね。
いいぞ…とルイド君に言われて、ルイド君の方を見た。
はあぁ~やっぱり美少年だねぇ…人型になるとミッドナイトブルーの髪色が神秘的で綺麗ね…肌がピカピカだよ?ニキビとか無いの?
「首の左側にある、見てくれ」
と言ってルイド君は、私の方に首が良く見えるように顔を傾けてきた。美しい喉仏だ…
首にかかる髪を少し撫でつけて奴隷印に近付いた。うわっ…これが?前に倒れている時はすぐにモフモフに変化したから分からなかったけど、鈍く光っているし魔術印が呼吸しているみたい。
魔法陣の端から古代語を見ていく。全部は分からないけど何とか読めるかな?これでも臨時とはいえ魔術学院で教鞭を取ってたんだからね~と思いながら首筋の文字を指でなぞった時にルイド君が
「ん…んっ」
と色っぽい声を出してきた。思わず
「お色気禁止だぁ!」
と叫んでしまった。
ルイド君は、半眼で私を見ながら「いいから早くしろ…」と言ってきた。
くそぅ、モフモフのくせにモフモフの分際でモフモフの…うん?
奴隷印をなぞりながら、文字が不自然に抜けている箇所に気が付いた。指の先に感じる血の巡りと魔流の流れ…ここ初めて会った時にルイド君の体に直接魔流を流し込んだ箇所だ…
「魔術式が消えている…綻びが出てる」
「えっ?どこ…」
私は術式の周りの文字を見ていく…間違いない。言葉…強制…沈黙?精神圧迫かな?途切れているけど、この辺りの術が消えているような気がする。この術が『黙秘』ならばだ。
「恐らく『黙秘』の術式が綻んでいるみたいね…消えてるから術が解けたみたい」
「やった…!」
ルイド君の顔が輝いた。おおっ眩しい…流石美少年!笑顔が光魔法のようですね。
「だけど術式が綻ぶなんてあるのかな…古代語魔術の禁術だぞ?それこそドラゴンの上位魔術師が編み出した秘術で勝手に解けるのか?」
ルイド君の言葉にギクッとなった。
勝手に解けている訳じゃないと…思う。嫌な冷や汗が流れる。偶然か偶々か…私が魔流を流した箇所の魔術式が解けてしまっている。
私、無意識で解術してしまったのかな?おかしいな…魔術師の才能はそれほど無くて、治療術もほとんど使えないはずなんだけど…
「ルイド君…やっぱりお母さんとお父さんが来るまで、様子見ようか…私じゃさっぱり分からないわ」
「そうか…うん。そう言えばお前の親って『ローズの魔道具店』の魔道具開発の神様だったんだな。俺も収納袋持ってた、あれ便利だよね…あれのお陰で荷物を運ぶのが格段に便利になった」
おお、ルイド君はうちの魔道具の顧客様でしたか、お客様にご満足頂けたようで何よりです…
さて
隣の村、ジャンデ村に転移魔法で飛んできましたよ。因みに隣村くらいまでなら自分の魔術で一瞬でいけるんだよね。
「ルイド君、外で待っててもらってもいいんだよ?」
思わず私の後ろからトテトテとついて来る狼少年ルイド君を見る。
「わーい!大きいワルワだ!」
「大きいね~」
ホラ…ルイド君ってば村の子供達に取り囲まれちゃったよ?子供は嫌いじゃないのかな?それほど嫌そうにはしていないけど、でもウザくない?
因みにワルワとは小型犬っぽい魔獣の一種だ。
へんしーーん!俺様ぁワーウルフだぞう!ガオーッ!とか言って脅かしたほうが子供達もいなくなって静かになるからいいんじゃないかな?あ…でもこんな村の真ん中で人型になったら美少年ならぬ痴少年になっちゃうか…
そしてモフモフと子供達に囲まれながら、バルカスさんに教えてもらった衣料店を見付けた。
「ここだね、すみませ~ん!」
「は~い、いらっしゃい」
恰幅の良いおば様が店先に出て来た。私は早速、人型ルイド君の大体の身長と全身の寸法を伝えた。おば様が背丈に見合ったパンツ、シャツ…そして下着も出してくれた。ふむふむ…
「まだ若い男の子なので出来る限り可愛らしい服を…ヤダッもう、何?」
何故だかルイド君が私の手を甘噛みしてくる。今は犬に擬態?しているから喋ってはくれないのだが、この服がイヤなのかな?
「え?この服がイヤなの?」
ルイド君は私の手をぺろぺろと舐めてくる。これはYES!なのか?それともNO!なのか…どっち?そうだこういう時は二択で…
「ルイド君、こっちの橙色の可愛いシャツとこのおじさんっぽい色の…早っ!決断早過ぎるよ!」
私が全部言い終わらないうちに、おじさんっぽい渋い緑色のシャツを持つ手の方へ素早く擦り寄るワンコ擬態中のルイド君。
「ええ~この明るい色のシャツ可愛いのにぃ…」
そうルイド君に訴えてもプイッと顔を横に向けられる。すると店のおば様は笑い出した。
「まるでその子が着る服を選んでるみたいだね~賢いワルワだね」
ギクゥ…はい、本人が着る服を選んでおりますの…
そして私が選んだ可愛い色目と可愛いデザインのパンツはルイド君に悉く却下されて、全身コーデは渋いおっさんが好むデザインの地味目の服になってしまった。因みに靴も濃い茶色だった…
渋々…本当に渋々、ルイド君の服を購入した。でもまだ認めてないよ!
「もう買うけどさ~納得いかないよ?あのシャツめっちゃ可愛かったのに…そうだ!王都に行ったら、フリルのついたシャツを…もうっ!ジャンピングバックキックするの止めてよ!」
「ジャ…?」
私に対して後ろ脚でバックキックをかましてきたルイド君だったが、私が聞きなれない異界語を言ったことに思わず反応して人語で喋りかけてしまって、ゲホンゴホンと咳払いをして誤魔化している。モフモフが咳払いって結構不審じゃないかな?
そしてどこか人目につかない所で着替えましょうか…と店を出たら、さっきまでワルワワルワと言っていた子供達と酒屋の息子マミスさんと野菜屋の息子、ガレーさんが待ち構えていた。
何故だか、店を出た途端ルイド君が唸り声をあげている。どうしたどうした?さっきまでワルワワルワと騒いでいた子供達も、ルイド君の様子に怯えている。
「リレッタ…バルカスさんから聞いたんだが、若い男の婚約者がいるんだって?」
バルカスさんっ!?なんて素早さで噂をばら蒔いているだよっ!バルカスさんの口は私の睫毛より軽かった!
マミスさんがそう言った後、野菜屋のガレーさんが驚愕したような顔をした。
「嘘だろマミス!?俺、若い男用の贈り物を探しているってしか聞いてないぞ!?リレッタ!恋人か?まさか婚約者がいるのか!?」
ガレーさん惜しいっ!半分正解です!婚約者や恋人はおりませんが、若い男はおります……あれ?色々問題があることに今更気が付いた。
よく考えたら未婚の女性の1人暮らしの家に若い男性が同居って確かに、宜しくない状況だよね…
「え~とそのぉ…親戚、そうっ親戚の男の子の服なのよ!えっちょっと…ルイドく…」
まだ話の途中なのにルイド君が私のマントの裾に噛みついてグイグイと引っ張って来る。このマントは防御系の魔法をいっぱい使っている、その名も「ヒーローマント」だから引っ張られたくらいじゃ破けないけどさっ!ちょいちょいーぃ!ルイドモッフリの涎ッティがマントにいっぱいついてるじゃないか!乙女の衣服に涎をぶっかけるって何事ォ!?
「どうしたのよ?何…」
今は犬に擬態中だから喋らないようにしているのだから、やたらと手を舐めてきたり涎をぶっかけてくる行為が多いと思うのだけど…どうしたのよ?ワンコ擬態のせいで、人間の理性がぶっ壊れたのか?
ルイド君にマントをグイグイ引っ張られるで仕方なく
「マミスさん、ガレーさん、何だかうちの子が興奮しているみたいだからまたね~」
と言いながら振り返ってマミスさんとガレーさんに手を振った。
「ぅお…?」
「ああ…」
マミスさんもガレさんもポカンとしていた。そんな皆さんに挨拶もそこそこに、私はルイド君に引っ張られながら村役場の近くまで来ていた。
私はやっとマントに噛みつくのを止めてくれた、ルイド君に向かってすごんでみた。
「もうっルイド君!ちゃんとバルカスさんが撒き散らした噂を否定しておかないと、ルイド君が私の恋人で婚約者だと誤解されたままになっちゃうわよ!?」
ルイド君は私の前にちょこんと座ったまま、ツーンとそっぽを向いている。ムカつくなぁ!何だその態度はぁ!?
ルイド君は顔を背けたままこちらを一切見ようとしない。あくまでもワンコの擬態を続けるつもりのようだ。そっちがその気なら……私はニッコリと微笑んだ。
「ルイドちゃん~じゃあ今から王都に行こうか~?」
根比べだよ、こうなりゃとことんルイド君をモッフリ扱いしてやろうじゃないのさ。
ルイド君は毛を逆立てると、耳をピンと立てた……けれど、そっぽを向いている。
「さあ、ルイドちゃん~こっちだよぉ」
私はワンコに対するようにしてルイド君を呼び寄せた。ルイド君は私に近付いて来つつも、顔が怖い…このツンツンルイド君なら羞恥心で、今叫び回りたいくらいなはずだ…しつこいようだが、根比べだ。
村役場の隣に立っている『転移乗り場』で王都までの料金を確認する。
そして窓口の係のお兄さんに向かって大きな声で告げた。
「すみませーん、王都の公所前まで大人1人とワルワ一匹お願いします!」
ルイド君のしっぽがピーンと上がった。フフフ…お犬様だぞう…フフフ。
「さあルイドちゃぁ~ん怖くないからお姉ちゃんと一緒に行こうねぇ」
「グルル…」
ルイド君は唸っているけど、気にしない気にしない!お犬様だぞうのルイド君の首をなでなでしながら、係のお兄さんに微笑みかけた。
「大きい子なんですが、怖がりでぇ~」
「ホントですね、体が震えてるね~」
ルイド君はキッと係のお兄さんを睨みつけている。
「お兄さんを睨んだりしたら、ルイドちゃん、めっ!」
そう言ってルイド君の頬毛をムニーッと引っ張ってあげた。ルイド君は目を丸くしている。これは楽しいな…
「じゃあ起動しますね」
「お願いします!」
「ガウゥ!」
転移陣は移動して……王都フィルバレーに着いた。着いた早々ルイド君は
「着替えを寄越せ」
と言って、服を咥えて猛ダッシュでいなくなった。そして一分もしない間に戻って来た。
あのさ、ジャンデ村の衣料店だよ?比較的若い子向けのショップだったけど、服屋のおば様には悪いけど置いている服はそこそこのダサさだったわけよ?
なのにさっ今ここに立ってるルイド君が着ている服、同じ服か?ええ?おかしいな?渋いおっさんが好むデザインの地味目の服だったはずなのに、どうしたソレ?どこのモデルさん?
「お前…よくもやってくれたな…」
何それ?どこの悪代官?ルイドモフモフモデルさんには、似つかわしくない台詞だけど?
ルイド君は目をギラギラさせて……私に近付いて来ると、腰を掴んだ。
……ん?腰?理由はすぐに分かった。
「リレッタ、可愛いな…」
声~~~声~~~耳の傍で囁くな!腰を密着させるな!
ルイド君は人型の美少年の威力をいかんなく発揮して『私の恋人(若いヒモ?)に擬態』にして私に嫌がらせをしてきた。
「くっつかないでよ!目立つでしょう!」
「叫んでいる方が目立つよ、それに引っ付いて歩いている男女連れなんて結構いるじゃないか」
ぐううぅ…確かにルイド君の言う通り。ここは王都フィルバレー、往来ではイチャコラしながら歩いているカップルも結構目に付く…
「さあ行こうよ、冒険者ギルドはすぐそこだよ」
ルイド君が指差しているのは公所の隣に立つ、大きな建物で同じく大きな看板が上がっていて『冒険者ギルド』ドヤッ!と表示されている。そのギルドまではわずかに50メートルの距離だ。
例え腰を抱かれていようとも、体を密着されていようとも、耳元で甘ったるく名前を呼ばれようとも…高々50メートルだ。
「よ、よしっ!行くわよ」
歩きにくい…ルイド君ってばあんなに下半身の露出に狼狽えていたくせに、私の腰を撫で回すように触るのには躊躇いはないみたいだ。
これは…結構遊んでいるんじゃないかな?そりゃそうか、美少年だもんね…
「リレッタ…の体から良い匂いするなぁ~」
いつもそんな台詞言ってるんでしょう?
「体…柔らけぇ」
おっ!?お尻を触るな!
「もうっいい加減に…」
「ルイド!?」
冒険者ギルドの入口でルイド君の名前が呼ばれてそこを見ると……人外の生き物がいた。え~~とお馬さんくらいの大きさの…ドラゴンでした。
生ドラゴンを初めて見て気絶しなかった自分を褒めてあげたい。
流石都会…普通に野良?ドラゴンがウロウロしているようです。
「ミツマメさん!」
え?何だって?ミツマメ?みつ豆?
ルイド君はみつ豆さん?とそのお馬さんサイズのドラゴンに呼びかけながら走り寄って行った。そのみつ豆ドラゴンさんと知り合いなの?
「お前、どこに行ってたんだ!」
みつ豆さんは大層ご立腹だった。怒るドラゴン…髭?がピイィンと立ち上がってます。
「話せば長いのですが、彼女に助けて頂きました…」
ルイド君がそう言って私をご紹介してくれたので、慌ててみつ豆ドラゴンさんに頭を下げた。
「初めましてっリレッタ=リコランティスと申します、薬術師をしています!」
みつ豆さんは爬虫類の眼光でジロリ…かどうかは分からないが私を見た後に
「リコランティス…ということはローズの魔道具店の関係者かい?」
と言った。
「あ、ローズエッタ=リコランティスの娘です」
みつ豆さんは私の両親のことをご存じのようだ。流石都会のドラゴンは違う。
「おおっ!娘さんか!ああ、立ち話もなんだから、中に入りなさい」
とみつ豆さんが促してくれたので、ノシノシと歩くみつ豆さんの後に続いて冒険者ギルドの中に入った。
次回、ルイド君とみつ豆さんの秘密がちょっぴり明かされます