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ルイド編 2

ルイド編 短めです

誤字修正しています

文章を一部変更していますが、内容に変更はありません


シルバレー商会の素材ハンターの皆とイサクリータの捕獲に来ている。必要な部位は心臓だが、それ以外の部位も素材として高額で売れるので是非とも最小の損傷だけで仕留めたい。


「喉笛だけ狙えばいけるか?」


「体格差がやべぇな…」


「いっそのこと、獣化したほうがいいんじゃないか?」


「そうだな、獣化の方が短期決戦には向いているかもな。長引けばあっちの方が体力がある」


「とにかく、早く仕留めて帰ろうぜ」


「……」


皆の視線が俺に向く。


隣に立っていた一番年長のゴップスが俺の肩を抱いて、大笑いしてきた。


「そうか~そうかぁルイドも番を得たもんなぁ!今、新婚だもんなぁ~いや~おやっさん、ずーっと心配してたもんな…リレッタちゃんが待ってるし早く帰りたいよな!」


「リレッタちゃん、可愛いもんなぁ」


「うんうん、分かるわ~あんな可愛い奥さんが待ってると思ったらな~」


まだ番のいない年下のガキ2人がそう言ってニヤニヤとしている。リレッタが可愛いのは当たり前だ。


俺の番は可愛い。番の贔屓目抜きにしても可愛いと思う。癖の無い金髪に丸い目に空色の瞳…身長はやや小さめだが、肉付きは良い。


勿論、内面も非常に良い。お人好しの傾向が強いが優しいし、誰に対しても思いやりに溢れている。俺の番は最高だ…


「おい…よせよ、こんなとこで番を思い出して発情するな…魔の眷属が美味しそうな魔力だと思ってルイドに近付いて来るぞ」


俺と年の近いフェーリーが鋭い目で俺を見ている。少し前までフェーリーは俺より頭一つ大きくて、体格でも負けていたけれど…今は同じくらいの身長になっている。


成獣ってやっぱり違うよな…潜在魔力量も倍以上に増えているし、体力腕力…全部桁違いに増えている。もう成獣の奴らに遅れはとらない…!


「はいはい、じゃあ新婚さんのリレッタちゃんの為にルイドを早く帰せるように頑張りますかね~」


「ルイドさんが発情してるんなら、囮をしてもらおうっか?」


「ルイドさん、囮お願いしまーす!」


「っち…おいこらっ!」


獣化している仲間達は一気に駆け出した。俺も既に獣化して皆と走りながら思い出していた。


あれ、これリレッタの好きなモフモフの討伐じゃね?里でもモフモフ軍団?とか言って騒いでたもんな。今度、皆に頼んでリレッタの前で獣化してもらおうか…フフフ。


「おーーい発情した雄ぅぅ~!魔獣がそっちに行ったから始末宜しくぅ!」


「えっ!?もうっ…」


確かに俺の後を数体の四つ足の魔物が付いて来てやがる。仕方ない…囮でも何でもやってやるよ!


「こっちだっ!きやがれっ!」


先を走る仲間とは別方向に誘導する。以前の俺なら単騎での戦いは避けていたが成獣の今は違う。俺だけでも問題無い!



……無事に捕縛を終えて帰って来た。遠くに感じるリレッタの魔力は元気そうな感じだ。皆で森の近くの転移陣でマホーミッツ帝国まで戻って来た。


「この後の解体作業も大変だよなぁ」


「血の匂いで酔いそうだよな…」


ワーウルフは鼻が利く分、匂いを発する生き物の解体には難儀をするのだ。そんな話をしながら帝国の転移陣からシルバレー商会の前まで皆で転移して戻って来たら、玄関口にオヤジとリレッタが笑顔で立っていた。


「おかえり~ルイド君。怪我は無い?」


俺は笑顔のリレッタに急いで近付くと、腕の中に抱き込んで匂いを嗅いだ。ああ…俺のリレッタの匂い。


「こんな日の高いところで抱き合うな!」


「そうだよっ!」


ガキ2人が叫んでいるけど気にしない。


リレッタは俺の背中に手を回しながら、何やら体に引っ付いて匂いを嗅いでいる?


「ルイド君、ちょっと血の匂いしてない?怪我じゃないのよね?」


「イサクリータの返り血を全身に浴びたからかな…匂うか?」


リレッタの目が輝いた。


「じゃあ綺麗にしないとね!ルイド君、お風呂入ろっか?」


ああ、これ俺のしっとりモフモフとやらが見たいんだな?相変わらずだな~


「おいなんだぁ~風呂に一緒に入るのか~流石新婚だな!ガハハハッ」


ゴップスのおっさん…商会の前で声、でかいよ。


「だって…ルイド君のモフモフ洗えるの楽しみで…」


リレッタがそう言うと、フェーリーが鋭い目を向けてきた。


「モフモフ?何それ」


リレッタは嬉しそうに微笑んだ。


「えっと獣化しているルイド君の狼の毛皮が大好きなんです!だから皆さんのモフモフも見せて欲しいのです!」


ああ、言っちゃった。フェーリーが更に鋭い目をしてリレッタを睨んでいる。だがこれは怒っている訳ではない。


「獣化が見たいのか?変わった嫁だな…」


フェーリーが俺を見て呟いた。


「フェーリーすまん」


「なんだぁ?こんなおっさんの狼姿ならいつでも見せてやるよ!」


「俺もなりましょうか?」


「いいっすよ!」


ゴップスのおっさんとガキ2人が軽く答えると、リレッタは俺の腕の中で震えている。どうした?


「見た……見たいですっ!お願いします!ハァハァ…今ですかぁ!?ああ…外は痴少年になっちゃうから…建物の中で、ハァハァ…中でじっくりお願いします!」


「……」


フェーリーがドン引きしている。


リレッタはハァハァ言いながらシルバレー商会の中に入った。そして一応別室で獣化して皆がリレッタの前に現れると…


「きゃあああああああ!!!!!萌える!ヤバイ!死ねる!保存っ保存したーーい、ハァハァ…」


リレッタの語彙力が著しく下がっている…俺の番の精神崩壊が始まっているようだ…


フェーリーが更にドン引きして固まっている。因みにフェーリーは銀狼なのだが、それがリレッタの何かを更に刺激しているようだった。


「フェーリーさぁぁぁん最高です!シルバーァァ!」


ハァハァ言っているリレッタに近付かないようにフェーリーは壁沿いに動いている。俺の番がすまん…


「皆さんとてもとても素敵です!いやぁ~素晴らしいモフモフをお持ちで!勿論、うちのルイド君が世界一なんですがね」


さり気なく俺を褒めた後、リレッタは上機嫌で両手を肩ぐらいまで上げて掌を握ったり閉じたりしていた。


「ガォーーッに触りたいけど…流石に番以外を撫で回せないので…心の中で撫で回してもらっておきます!ぐへへ…」


フェーリーはすっかり怯えていた。尻尾がクルンと下がって垂れていた。


逆にゴップスのオッサンは楽しそうだ。ガキ2人も喜んでいる。尻尾が千切れんばかりに振られている。


「ガハハハッ俺はリレッタちゃんになら何回でも撫でまわして貰ってもいいんだけどな!」


「俺もリレッタちゃんに触られてぇ~」


「リレッタちゃん、触りますぅ?」


「きゃあ!やだぁぁ…触り…むぐぅううう」


俺はリエッタの体を横抱きにすると、俺達の家に飛んだ。俺は抱え込んだリレッタのおでこに自分を額をつけた。


「リレッタは俺のモフモフだけ触ってろ」


「はぁい…」


その後


獣化してリレッタと一緒に湯に浸かった。ずっと異界の言葉?の歌を歌って、俺の体を撫でまわしていた。


俺の番は変わっている…


■□◇


万能薬の素材は残り一つになっていた。最後の一つは時期が来れば手に入る素材だった。10の月の満月の夜にだけ咲く花…スミメイシアンだ。


群生地はオヤジが知っているので、張り込んで花が咲いたら摘んで来ればいいだけだった。地味だけどある季節にしか咲かない、生らないものは自然の産物なのである意味で揃えるのが大変なのだ。


このスミメイシアンの花の採取地は特に危険はないので、リレッタと一緒に花を摘みに来ている。


「この平原いっぱいに咲くの?」


「ああ、だから素材的には足りないとかは無いと思う。それに今日は摘み手が他にもいるしな」


別の素材ハンターの軍団とかうちのシルバレー商会のフェーリー達を見て、リレッタは楽しそうだ。


「皆でキノコ狩りに来ているみたいだね」


「キノコ?」


「うん、この世界には無い食材なんだけど、10の月くらいに木の根に群生する食用の野菜なの。歯ごたえが独特で香りも良くて美味しいんだよね~ああ、食べたくなっちゃった」


時々リレッタが異界の話をしている時に、遠くを見る目をする。異世界転生…どんな感じなんだろう?前の記憶があるのはリレッタの心に負担を強いているのかもしれない。それにこうして思い出して、懐かしむというよりは苦しそうにしているのは…見るのが辛い。


「リレッタは前の生の記憶を持っていて辛いか?」


リレッタはキョトンとした顔をして俺を見てから、また遠くを見た。


「う~ん…こっちに生まれた最初の頃は何故憶えているんだろう…って戸惑ったけど、今は憶えてて良かったって思う。ルイド君を見てもワーウルフだ~凄い!としか思わなかったし、この世界独特の先入観もなかったし…もし記憶を持ってなかったらね、ルイド君が異種族のワーウルフだと知ったら私、怖くてダメだと思うんだ。でも記憶持ちの私は憧れと懐かしさの方が強かった」


「懐かしさ?」


「うん、犬って言ってね~ワーウルフの血脈っていうのかな?そういう生き物が異世界にはいて、家で飼っていたの。こちらでは『ワルワ』って生き物が犬に近いかな~」


「飼う…」


奴隷とか…か?俺が暗い顔をすると、リレッタは違う違う~と笑いながら答えた。


「う~んと、生き物だから飼育するっていうのかな?とても可愛い生き物なの。起源が狼って言われてるから、異世界のモフモフなんだよ。その生き物のモフモフが大好きだからこそルイド君を見た時に、可愛い!ってすぐに思ってしまったの。あれ?オジサマに可愛いなんて言ってすみません~おほほ」


「お気遣いなく~アハハ…」


ニヤニヤしたリレッタの頭を小突いてやると、またリレッタは笑い出した。


「だから~ルイド君のモフモフは私の懐かしみとモフモフの欲求を叶えてくれる素晴らしいモフモフなのだ!」


「ま~た分からんこと言って…」


「……おいっこんな夜中に鬱陶しいぞ」


リレッタと引っ付いてお互いの体を触り始めていたら、フェーリーが俺とリレッタを睨んでいた。


「それはともかく…リレッタ、お前の言っていたキノコという植物は木の根などに生える植物なんだな?名前は違うがルマイという木の実がある。そこの木の下の落ち葉を除けて見ろ、生えてるはずだ」


フェーリーの言葉に飛び上がったリレッタは小走りに駆けて行き、フェーリーが指差した木の下で落ち葉を掻き分けている。


ルマイって確かに香りはあるけど独特の歯ごたえのある木の実だよな…?しゃがんだリレッタの後ろから覗き込むと、落ち葉を掻き分けていたリレッタが叫んだ。


「キ…キノコだーーー!フェーリーさん、これ食べられるの!?」


「ああ…炒めたり煮込んだり…」


フェーリーがそう答えると、リレッタは踊りながらルマイを抱き締めて満面の笑顔だ。


やがて満月が真上に来て、スミメイシアンの花が咲き始めたので、ハンター達は花の収穫を始めた。


因みにリレッタは花を放置して、ルマイ狩りとやらに精を出していた。


「キノコ狩りーー!秋を満喫ーー!」


とか叫んでいたけど異界語だろうか?


次の日からルマイ尽くしの食事が一週間続くとはこの時の俺は想像もしていなかった。


次は最終話の予定です(あくまで予定です^^;)

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