表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流され系魔女の無人島ライフ  作者: 白月らび
本編
83/373

我が家にワンコがやってきた

「あのぉ、ドロシー? リバーシの石は犬の骨で作るのぉ?」


「いやそんな気持ち悪い事しないよ……」


神獣を遊び道具の材料として見ないでくれるかな?


「うわー大っきい~!」


「フサフサだー」


アザレアもルティエも、自分より大きい犬に警戒心全くないね。


別にいいけど。


「ムニエル様と同じ感じがするのです。もしかして神獣なのです?」


「そうだよ。この子は神獣のフォボス」


「フォボス!?」


メルルが悲鳴のような声をあげた。


知ってるのかな?


「だ、大丈夫ですの? 悪い夢とか見せられたりするのでは?」


さすがメルル、知識豊富だね。


「私の夢を食べて、胃もたれしちゃってるから当分大丈夫よ」


「胃もっ……」


……そんな気持ち悪い物を見る目で私を見ないで。


ああっ、後退りしないで……。


泣くよ? 泣いちゃうよ? いいの?


思いっきり悲しい顔をしていたのか、アザレアが心配そうに寄ってきた。


「おねーちゃん?」


「あ、うん。アザレアはフォボスの事怖くないの?」


誤魔化すように話の流れを変える。


大きい獣は普通怖がられるものだからね。


「凄いって思ったよ。それにおねーちゃんが乗ってきたんだから大丈夫でしょ?」


あ~~~もうだめ。


今の私にはその言葉は優しすぎるよ。


思いっきり頬ずりするしかないじゃない。


アザレアは私の頭を撫でながら、なすがままになっている。


しばらく頬ずりしていたら、すっかり気分もよくなった。


振り向くと、ルティエの触手に絡まれて動けないメルルがいた。


絵面がやばいからやめようよ、ソレ……。


ミラもここぞとばかりに、メルルの口にビスケットの残り放り込んでるし。


…………見なかったことにしよう。


むぐっ(そんなっ)!? むぐーーーーー(たすけてくださいまし)っ!!」


さて、お昼近いからひとつ頼んでおこうかな。


「セニア、悪いけどムニエル探してきてくれる? フォボスと顔合わせしておかないと、面倒な事になるかもしれないし」


「わっかりましたぁ! あ、お昼は甘いものも食べたいですぅ」


頼んだ代わりにセニアからのリクエストを引き受けた。


アザレアには、フォボスは神獣だからムニエルと同じで、言葉を理解するという事を伝え、この場を任せておいた。


ムニエルで慣れてるから問題はないだろうし。


一応ミラも昼食作りに誘って、一緒にキッチンへ向かった。




さっき夢の中で記憶が掘り起こされたおかげで、昔のメニューを新たに思い出したし、また忘れる前に作ってレシピを残しておきたい。


まず私はパン生地をこねることにした。


その間に、ミラには魚を切り身にして火を通してもらい、タマネギを炒め、野草を切り、ジャガイモをレンジであたためて潰してもらう。


教えながらとはいえ、ミラは手際がいいね。


パンの生地はほぼ出来た。


次は伸ばさないといけない。


セニアの荷物に“めん棒”があったので、遠慮なく使わせてもらおう。


「それは何をするのです?」


下ごしらえをした具材を調味料と一緒に混ぜながら、ミラが聞いてくる。


「なんて言えばいいのかな、新しいパンを作るようなものだと思ってちょうだい」


作っているのはパイ生地。


パン生地を伸ばしてはたたみ、伸ばしてはたたみ……数回繰り返したあとは少し寝かせる。


それを2つ作った。


ミラが作った具材を片方の生地に乗せ、もう片方の生地は切り込みを入れて具材の上にかぶせる。


生地の端を、オシャレにフォークを使ってつぶしてくっつけておく。


後は、トレイの板ごと温めたオーブンに入れて、パンの要領で焼くだけっと。


たしかこんな感じで大丈夫……なはず!


なんとなく見ていると、少し膨らみながらきれいな焼色がついていく。


成功だと思う。


変な物は入れてないから、懸念点は食感かな。


私は料理人じゃないから、味なんて家庭料理程度で十分なのだ。


「みんなー! お昼出来たよー!」


縁側から大声で呼ぶと、ムニエルとフォボスがやってきた。


なんだか仲良く並んでいる気がする。


「もしかしてもう話は済んだ?」


フォボスに聞くと、わふっと頷いた。


話が早くて助かるね。


「喧嘩したり悪いことしなければ、好きにしていいからね。フォボスの事は、ムニエルに任せるよ。何か困った事とかあったらミラに伝えてね」


神獣同士じゃないと分からないこともあるだろうし、一旦丸投げしておく。


そうこうしている間に、全員テーブルについていた。


それじゃあ昼食タイムといきますか。




「今日のお昼はフィッシュパイだよー」


出来た料理をテーブルにドンと置き、お皿に乗るサイズに切っていく。


「パンの中に料理が入っていますわ」


「えぇ? これパン? ふっくらしてないよぉ?」


そういえばパン屋さんに言ったときも、パイは見たことなかった。


世界が滅んでから、伝える人がいなかったんだねぇ。


思い出してよかったよ、これ美味しいし。


「切り分けたから、おかわりする時は1切れずつ取って食べてね」


そういってお皿に1切れ置いて、順番に渡していく。


好きなように食べていいと教え、私はフォークとナイフで食べていく。


そのほうが崩れないし食べやすいから。


ちなみに手で食べてるルティエはボロボロとこぼしている。


しかも気づいていない。


ミラが気づいたので任せておこう。


「どりょひー、もぐ……こにょきじなんむぁんでふかぁ~? ほんなのひゃひめふぇふぇふぅ~!」


「……飲み込んでから喋ってくれる? 口から飛びまくってるよ」


セニアが食べながら興奮してる。


パン屋の経験があるのに、知らないパン(のようなもの)が出たからかな?


まぁあとで教えてあげよう。


作ってくれると私も楽だし。


あー、アップルパイ作りたいなぁ。


はやくリンゴの木、育たないかなー。


そんな事を考えながら食べていると、パイが終了。


みんな満足した様子だし、よかったよかった。


「そういえば甘いものはぁ?」


「ちゃんと覚えてるよ、今から出すね」


セニアのリクエストの甘いデザートを取りにキッチンへ。


アイスメーカーの中から、小さなカップを人数分取り出した。


スプーンと一緒に分けていく。


「これはなんですの?」


「甘くて冷たいお菓子だよ」


大陸には寒い地方にしか冷たいものを作る手段が無かったらしいから、知らないのも無理はない。


その為、ゼリーですら固めるのに苦労する高級品扱いなのだとか。


魔法の衰退って怖いね。


私は見せつけるように、スプーンですくって食べる。


うん、あっさりしてるのに甘くて美味しい。


私の様子を見たみんなは、ぱくっと一口。


『~~~!!!』


みんな目を見開いて驚き、すぐに笑顔になる。


ものすごく幸せそうだね。


みんな甘いもの好きなんだね。


「すっごく美味しいよおねーちゃん!」

「ドロシー姉ちゃん、結婚して!」

「ふふっ、アタシの(からだ)はもうすでにドロシーのものですわ」

「これではますますドロシーに料理で突き放されるのです……」


「ありがと、美味しくできてよかったよ」


とりあえずアザレア以外は無視しておく。


これはふやかして潰したジャガイモと、アザレアの蜜を混ぜて作ったポテトアイス。


粘り気が強くなるまで混ぜながら冷やしていくと、アイスクリームみたいになった。


ミルクとか使ってないというのに、とっても甘くてクリーミーになっている。


アザレアの蜜は不思議である。


ちなみに、試しにオーブンで焼いたら、スイートポテトみたいになった。


納得いくようないかないような、謎なレシピが出来た。


他のアルラウネの花蜜で出来るかが分かるまでは、この島限定のメニューだね。


「どうかなセニア? この甘い物は気に入ってくれた?」


「はい……ボクはもぅ、ドロシー無しじゃ生きていけないよぉ……」


目にハートマークを浮かべながら、とんでもないことを言い始めた。


「いや、誰でも作れるし、レシピは教えるから。ちゃんと普通に生きてね……」


この後、すっかり従順に懐いてしまったセニアを元に戻すのに、メチャクチャ苦労した。

料理の復活がテーマになりかけている気がする。

気を付けないとお料理ノベルになってしまいそう。

もっとこう、KENZENな展開をほどほどに用意したいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※ 他の投稿作品 ※

【からふるシーカーズ】

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ