オモチャは子供用ですよ
近くにいるセニアに聞いてみることにした。
「え? オモチャ? そんなに寂しいならぁ、ボクがなぐムッ!?」
はいはい、いらないこと言う口は塞ぎましょうねー。
「……アザレアとルティエ用の遊具よ。出来れば私達も一緒に遊べるようなのがあるといいんだけど」
セニアは少し考える仕草をし───
ぺろぺろ
「うわゃっ!?」
掌の感触にゾワッとして、思わず口を塞いでいた手を離してしまった。
「……なんで舐めたの」
「そこにドロシーの手があったからぁ♡」
てへって感じでウィンクされても……。
メルルとセニアのセクハラに関しては、半分諦めている。
だって夜魔族だもん……。
もし一線超えそうになったら張り倒すけど。
「で、何か案はある?」
「無くはないけどぉ、材料が用意できるかどうかが問題かなぁ」
島の素材は限られてるからね。
「じゃあメルルにも聞きに行くから、考えておいてくれると嬉しいかな。この件は急がなくていいよ」
「はぁい」
セニアと別れ、そのままメルルの元へ。
「オモチャですか? そんなに溜まっているのでしたらアタ───」
「こらこらこら! メルルまで同じ事言うなっ!!」
ええいこのやり取り面倒くさい!!
特定のワードをイケナイ方向に持っていこうとする習性は、どうにかならないの!?
「なるほど、子ども用のオモチャでしたの」
なぜ真っ先に大人用にしたがるのか。
「昼は外で、夜と天気悪い日は家で遊べるのがいいんだけど、何か無い?」
メルルは少し考え……
「家にいる時は、ボードゲームやカードゲームが街での主な遊びです。案外ルティエちゃんは、積み木のような創作玩具などを好むかもしれませんわね。アザレアちゃんの事は、ドロシーが考えた方が良いかもしれませんわ」
なるほどなるほど。
「本人達に聞いてみては?」
「もう聞いたよ。ルティエは地上でどういう事が出来るかが……アザレアは遊ぶ事自体がよく分からないみたいで……」
「あの子はドロシーといるだけで幸せそうですものね」
なんか照れる。
「で、でも何も知らないのは可愛そうだし」
「そうですわね。これから少しずつ考えていきましょうか」
常識人モードのメルルは、本当に心強い。
私は今の世間の遊びを知らないからなぁ。
「まずはリバーシを作りましょうか。あと、家造りをしていて忘れていましたが、トランプなら持っていますわ」
そういえばリバーシなんてのもあったなぁ……。
メルルの提案で、作りやすい室内用ゲームから作ることになった。
ルールも簡単だし、私達も一緒に楽しめるね。
永らく遊び相手いなかったから、すっかり忘れてたよ。
「私は何を作ればいい? 板はともかく石の方はちょっと……」
魔法を使った細かい作業ができない不器用な自分が恨めしい。
「ドロシーは明日、白黒石用に、できるだけ白い木か石を探してきてくださいまし。もし白い石を作る場合は、重さは普通がよろしいですわ」
なるほど、原材料の調達担当ね。
それならなんとでもなるよ。
「おっけー、任せてっ」
本格的に作るのは明日からになった。
「それじゃぁ折角だしぃ、みんなでトランプやってみよっかぁ」
「いいですわね! ミラ、アザレアちゃん、ルティエちゃん!」
メルルは3人を呼び、全員で床へ輪になって座った。
「メルル、それなぁに?」
トランプを知らない3人は、メルルがシャッフルしているカードをまじまじと見つめている。
「これはトランプといいますの。これだけで色々な遊びが出来るのですわ」
「ふ~ん?」
アザレア楽しんでくれるかなぁ。
最初は私とアザレア、メルルとルティエがペアとなって、ルールを教えることになる。
ミラは一緒に遊びながら、セニアに教わることになった。
「最初は何するの?」
トランプには沢山のゲームルールがある。
簡単に出来るパーティゲームが好ましいけど。
「今日のところはババ抜きでもしましょう」
ババ抜き?
思い出した、たしかオールドメイドのジョーカー版だっけ。
ルール簡単だし、最初に教えるには良いかもしれない。
メルルが4組にカードを配っていく。
「さ、ルティエちゃん。このカードがアタシ達の手札ですわ」
「ふんふん……」
メルルがルティエにルールを教え始めた。
私とセニアもそれぞれ解説を始める。
「───こうやって2枚同じ数字のカードがあったら、真ん中に出していって───」
「───先に全部無くなったら勝ちなんだね」
「最初だからバラしますわ。このジョーカーのカードが最後まで残っていた人が負けとなりますわ」
今はルティエチームがジョーカー所持してるから、取らないように気をつけたいね。
順番は、セニア、アザレア(私)、ルティエ(メルル)、ミラになった。
その方がミラに教えやすいって事で。
各々のペアカードを捨て、練習回開始。
「じゃあアザレア、セニアから1枚カードを取ってね」
「どれでもいいの?」
セニアがカードを扇形にして差し出している。
アザレアは少し迷ってから、真ん中にあるカードを引き抜いた。
「これでペアになったら捨札山に出すんだけど……あったあった、これで1枚減るよ」
「はい、これでいいの?」
「うん、次はルティエがアザレアからカードを取る番だよ」
メルルに教わりながら、ルティエがカードを引き抜く。
ルティエは残念ながらペアにはならなかった。
悔しそうにしている。
続いて、ミラがルティエからカードを取る番。
「この中から1枚取るのですね」
「ええ、ですが先程見せたハズレのジョーカーも入っているので、お気をつけて」
「うぅ、そう言われると緊張するのです……」
そしてミラは見事ジョーカーを引き当てた。
「あわわわわ! 引いてしまったのです!!」
「ふふふ、他の人にバレると警戒されますわよ?」
「しまったのです! なるほど、駆け引きもあるのですね」
どうやらミラは色々と理解した様子。
2戦目からは手強くなるかもしれないね。
ミラはセニアに手札が見えないように広げ、緊張しながら差し出す。
セニアが涼しい顔をして1枚引き抜くと、ミラの顔が落胆した。
わかりやすい……。
「大体ルールは分かったぁ?」
「はいです、ルールは簡単なのです。問題は駆け引きなのです……」
もうミラは大丈夫っぽいね。
そのまま何周かして、全員の手札も半分を切っていた。
「むむむむ……これっ!」
勝ちたそうなアザレアは、悩みながらもセニアからカードを取り……
「ぁっ……」
うっかり小さく声を出してしまった。
セニアがニヤついている。
取っちゃったねー、ジョーカー。
アザレアは念入りにジョーカーをシャッフルし、ルティエに差し出す。
そして───
「にゃっ!?」
早速ジョーカーが持っていかれた。
嬉しそうだね、アザレア。
そんな、ポーカーフェイスなどの駆け引きが一切無いまま、さらに数周。
ルティエ対ミラの、壮絶なジョーカー争いが勃発していた。
セニアが最初に上がって、次にアザレアが手札を無くした。
「おねーちゃん、これ面白いね!」
喜んでくれてよかった。
「それにしてもぉ、2人共運が悪いねぇ……」
もう5連続でジョーカーを引き合い、決着がなかなかつかない。
お互いあと1枚だから、数札を引いたほうが勝ちなんだけど。
いまはミラが真剣に2分の1の札から選ぼうとしている。
「こっちなのです!!」
結果は?
がっくりと落ち込むミラ。
ほっと安心するルティエ。
うーん、なんかハラハラするね。
すでに勝ったから面白おかしく見ていられるけど。
さて、次のルティエのターンは?
……勝ち誇った顔で手札を捨てた!
「やったー!!」
「ぐおおぉぉぉ……負けてしまったのです……」
まさかの練習回でここまで白熱するとは。
「面白いね! このトランプっていうの!」
ルティエもすっかり気に入っている。
「悔しいのですっ! でもまだ遊びたいのですっ!」
負けて相当悔しがってるけど、とりあえず楽しんでる事はわかったよ。
この後、私とメルルも参戦し、順番を変えながら寝るまでババ抜きを遊んだ。
「さて、もう遅いし、寝ようか」
「えっ?」
「もっとしたい」
「今夜は寝かさないよぉ♪」
「どうしても勝ちたいのですっ」
こらこら……。
「だーめ、また明日ですわ」
「そうだよ、ちゃんと寝ないと明日遊ばせてあげないよ?」
「ワガママ言ってごめんなさい」
アザレアは聞き分けのいい良い子だね。
それに比べて……
「あと1回! あと1回で勝てるのですっ!」
「わちしもっと遊びたいっ」
ミラとルティエはのめり込み過ぎだよね。
まさかここまでハマるとは思わなかったよ。
……もちろんこの後、興奮した2人を寝かせるのに苦労した。
「オールドメイド」は海外版ババ抜きなのです。
ジョーカーではなく、1枚抜いたクイーン(独身女性)がババ扱いという、ブラックジョークの効いた遊びなのです。




