次なる料理をもたらす物
「それで、こんなよく分からない生活だけど、セニアさんはここに住むの?」
「はいっ! ぜひ住みたいですぅ!」
移住の確認に、セニアさんは力いっぱい答えた。
まぁ大人だし、何か仕事はしてもらうけど。
「先程も言った通り、セニアには建築の内装をやっていただきますわ」
「へぇ、サキュバスって建築とか得意な種族なのですねー」
家事が得意になったマーメイドがなんか言ってるけど、この2人が特殊なだけだと思うよ。
「何にしても助かるよー。ちょっと困ってたんだよね」
「あら、ドロシーが困るって何事ですの?」
「今、魔道具作りをミラに止められちゃってて。せめて片づける場所が出来るまで、禁止って言われてたの」
正直に話すと、なぜかメルルがジト目で睨んできた。
「一体何をやらかしたんですの……」
やらかしたなんて失礼な。
「えっとね───」
「放っておいたら魔道具をポンポン作って、『今日は休んで』って言ったのに、テンション上がって作りやがったのです」
言おうとしたら、妙に攻撃的に言われてしまった。
「あー……それはアタシも止めますわ……」
「えー……」
メルルの言葉に、思わず講義の声を上げてしまった。
「えーじゃないのです。ドロシーは明らかにやり過ぎなのです」
「ひどいっ! 横暴よっ!」
悲しくなったので、アザレアに抱きついた。
「おねーちゃん……」
アザレアが困った顔をして撫でてくれる。
困った顔も可愛いよ。
「……という事は、魔道具がいくつか増えてるのですね?」
「はいです」
メルルとセニアさんを連れてキッチンへ移動。
まずはつづら型冷蔵庫を見せ───
「凄すぎてぇ、もうお腹いっぱいですぅ……」
「早っ!?」
へたり込むセニアさんに、私より先にメルルの方が驚いた。
まだ1つ目なんだけど……。
「メルルぅ! この家どうなってるのぉ!? 食料保存用の箱って既におかしいよぉ!」
「セニア落ち着いて。これはまだ序の口、初心者向けよ」
取り乱すセニアさんをたしなめるメルル。
何その初心者向けって。
次にコンロを紹介してみた。
「何なのぉ! この大きすぎる魔石はぁ! しかも超簡単に使えるしぃ!」
うん、好評だね。
「少し怯えてる気がするのです」
気のせいだと思う。
「そういえばこの蛇口も魔道具になるんだっけ?」
「蛇口自体は普通の道具ですが、水道の向こうにある貯水槽が魔道具ですわ」
たしかにあそこには海水を浄水する機能つけたね。
水道はメルル任せだったからよく分かってないけど。
アイスメーカーを紹介してみた。
「お茶に入っていた氷はこうやって……とても美味しかったですぅ……」
なぜ泣く。
「氷を作る方法なんて、普通の街には無いですわ」
今明かされた衝撃の事実。
暑い時は風魔法でなんとかしていたらしい。
大変なんだね。
続いてマジカルオーブンの紹介。
夕食のスパイス焼きはこれで作ったと教えてみる。
「均等にじわじわ焼く……ですかぁ。小さな窯ですねぇ」
「アタシもそんな料理方法、存じませんでしたわ……」
窯は鍛冶屋やパン屋しか持たないらしい。
パン以外の料理に使うという発想が、今の時代にはないのね。
うーん、もったいない。
最後はマジカルレンジ。
「用途がよく分からないですわ」
「謎だねぇ……」
「私も分からないのです」
たしかによく考えたら、今の時点で用途はほとんど無い。
「今は飲み物を短時間で温めるくらいしか出来ないけど、野菜やいろんな食材が増えたら活躍するようになるよ」
「そういう物なのですか」
使う所を見たことがないミラ達は、納得できていない様子。
「野菜ならいくらか持ってきましたわ」
「えっ! 本当!?」
念願の野菜に、思わず食らいついてしまった。
「え、ええ。日持ちする根野菜が中心ですが……」
な、な、な、なんですと~~~!!
「メルルー!!」
がばっ
嬉しくてつい抱き着いてしまった。
「ど、ど、どろしーさまっ!?」
再会時と同じ展開に、慌てふためくメルル。
かまうもんか、それくらい私は嬉しいからね!
「ミラ! 明日レンジ使って見せてあげるね!」
テンションが上がったまま、明日の昼食を作ると決めた。
その後、庭にあるランドリーボックスを紹介したら、セニアさんが泡を吹いて倒れた。
何故に。
「だいたい分かりましたわ」
セニアさんが目を覚まして落ち着いた後、リビングで欲しい物のリクエストをした。
本棚、収納箱を中心に、家の中の装飾、食器の追加、部屋の増築。
基本的に2人にお任せ状態だけど、魔道具が必要だったら私が作る事になるね。
快適な無人島ハウスにまた近づいた。
「それではアタシ達も、持ってきた物を紹介致しますわ」
おや?
どうやらお土産を持ってきてくれたらしい。
今まで暮らしていた家で使っていた道具とか持ってきたのね。
ベッド、タンス、灯り、机……なるほど。
これは個室が欲しくなるねー。
食べ物は……おおっ!?
野菜だけかと思ったらお肉まで!!
しかも氷漬けにしてある!
って、あれ?
「街には氷を作る手段が無い、って言ってなかった?」
「ムニエル様に凍らせていただいたのですわ。以前ミラが水を氷に変えていたのを思い出しまして」
なるほど、あれもムニエルの力だもんね。
でもこの保存方法は味が落ちるから、今度ちゃんと教えてあげよう。
巨大魚みたいに緊急時には仕方ないけどね。
他には、小麦粉や果物も沢山ある。
シーラさん達の時は、保存がきく調味料がほとんどだったからね。
永久は無理だけど保存庫なら作れるし、主食の類があるのは嬉しい。
パンとか作れるね!
「その白い粉見ながらニッコニコですけど、もしかして料理のレパートリーが増えるのです?」
「白い粉て……これは小麦粉。これがあるだけで今までと比べ物にならないくらい、沢山美味しい物がつくれるよっ!」
「お、おぉ……。ドロシーの目がマジなのです……」
ミラは今の私のテンションについてこれない様子。
んふふーこれがあればアレもコレも作れるね。
明日のごはんが楽しみだなー♪
「小躍りなんてなさって、持ってきた甲斐がありましたわ」
「明日美味しい物作るから、覚悟なさい!」
小麦粉袋を掲げてビシっと言ってやりましたとも。
そんなに生暖かい目で見ても、今の私は止まらないよ。
「それでは持ってきた食材は、一旦食料庫に入れておきますわ。明日整理しながらお使いくださいませ」
メルルは食材をまとめると、セニアさんと一緒に食料庫へと運んで行った。
それなりに量があったから、私やアザレアもお手伝い。
日用品も運んだり、雑談してたらそろそろ寝る時間。
移動してたメルルとセニアさんにはゆっくり寝て欲しい。
……あ、その前に。
「そういえばここにもう1つ、魔道具あるんだった」
「ヒイッ!?」
…なんで悲鳴上げたのかな、セニアさん。
まぁいいか、寝る前に見せてあげよう。
「せっかくだからメルル、これ持って」
メルルに送信具の棒、セニアさんには受信具の前に座って、見ててもらう。
「じゃあ、その棒に魔力を込めて、先端で本でもクッションでもなんでもいいから、触れてみて」
「はい…えぇと……」
メルルはそれ以上は何も聞かず、言われた通りに魔力を通し、近くにあるクッションに棒の先端を当てると───
「きゃわん!?」
クッションは消え、なんだかワンコみたいな悲鳴が後ろから聞こえた。
「はえ!? セニ…っえぇっ!?」
クッションが消えた事に驚きながら悲鳴に振り返り、先程まで自分の目の前にあったクッションが、セニアさんの目の前にあることにもビックリしてる。
いいねー、なかなかのリアクション頂きました。
これで心置きなく眠れるよ。
「アザレアー、寝るよー」
「はーい」
ベッドを広げてもらい、放心中のメルルとセニアさんを運び、約束通り一緒に横になる。
「え? あの、今のアレの説明は……」
ふぅ、眠い眠い。
「そんな事より、セニアさん寝付き良いね。長旅で疲れたんだね」
「いえ、あの……ドロシー……さま?」
「メルルも疲れたでしょ? 特別に腕枕して頭撫でてあげるね」
なでなで
「ぁぅ……えと…………あれ……?」
むにゃ……。
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久しぶりにトンカツとか食べたい気分です。




