ミラのドッキリ大作戦
「うわぁ~なんですかぁこれぇ~!!」
「いくら見慣れてきても、ドロシーの魔道具はやっぱりとんでもない物ですわね」
2人は魔力測定器を触りながら騒いでる。
どれどれ?
セニアさんは、身体、精神、それと……風と熱と雷もあるね。
精神魔法の強さは、さすが夜魔族って感じねー。
他のは建築とかで上達したのかな?
「へぇ、身体魔法っていうんだ。便利だよねー、何時間も続けるのに」
……何がとは聞かない方がよさそうね。
夜魔族だもんね、うん。
「おねーちゃん、これ……」
アザレアがなんだか困った笑顔で、ぬいぐるみを持ってきた。
お土産で貰った猫のぬいぐるみである。
「どうしたの?」
聞いてみると、ぬいぐるみの下にある葉を少しめくってマギアフォンを見せてくれた。
なるほど了解。
しばらく魔力測定器を触っていたメルルとセニアさんが、こっちにやってきた。
「ん~、精神と身体の魔法は便利だよねぇ」
「誘惑と運動を怠らなかったのですわね、やはり実践経験は大事ですわ」
キミたち、ここにはアザレアもいるんだから、そういう話はやめてくれないかな。
「あら、猫ちゃんのぬいぐるみですわね?」
メルルがアザレアの持っているぬいぐるみに反応した。
「あ、猫ちゃん。かわいいぃ~♡」
セニアさんは猫が好きなのね。
2人が猫ぬいぐるみを撫でたり、なぜかアザレアを撫でたりしている。
撫でられている本人は困っているけど、しょうがないね、可愛いからね。
「えっとね……」
『メルル、聞いてほしい事があるのです。』
アザレアが抱きしめているぬいぐるみから、ミラの声が聞こえる。
「え? このぬいぐるみからミラの声がしましたわ?」
ちなみにメルルとミラも呼び捨てで呼び合う事になった。
なんだか序列的に、私を呼び捨てにするなら……という事らしい。
私は気にしないのに。
「これがミラなの……」
嘘をついたことがないアザレアは、目を閉じて俯きながらそう言った。
間違いなくミラかルティエの入れ知恵だね……。
「どういう事ですの?」
『ちょっとした呪いにかかってしまって、ぬいぐるみと同化してしまったのですよ。』
「えぇっ!?」
そういう設定にしたのね。
あ、やばい、私も顔隠しておこう……。
ニヤニヤしそう。
口だけでも隠せばなんとかなるかな。
「ドロシーさん、これは一体……」
「私も知らないの。ミラの話を聞いてあげましょう」
知ってるふりして新しい設定入れるよりは、こうした方がバレにくいはず。
何かあったらアザレアかルティエが伝えてくれると思う。
ミラがぬいぐるみの向こうから言ったあらすじをまとめると……
・魔法の練習中に、ルティエの呪術が失敗。
・巻き込まれてぬいぐるみに乗り移っちゃった。
・呪術を使ったルティエは行方不明。
・ルティエを探してほしい。
うん、これはドッキリなイタズラだね。
「じゃあ私はアザレアと一緒に家の中から探すね」
「アタシとセニアは外から……案内がてら砂浜方面を見てみますわ」
向こうの家の方だね。
「りょーかい、よろしくね」
2人が出て行ったのを見届けた後、脱衣場に行ってアザレアとミラに話しかける。
「ミラとルティエはどこにいるの?」
『海の中なのです。』
なるほど、夜の海中なら絶対バレないね。
「これからどうすればいい?」
『しばらく探してから、セニアさんを捕獲してほしいのです。メルルだけにしてからが本番なのです。』
「セニアさんには途中でばらして、メルルを驚かせるのね」
『あと、ここからはルティエもぬいぐるみにするのです。セニアさんの捕獲方法はお任せするのです。』
「おっけー、じゃあ家の周辺を探すフリを始めるね」
ぬいぐるみをもう1つアザレアに持たせて、外へ出る。
しばらくすると、2人が旧家の方から戻ってきた。
「ルティエちゃんはいませんでしたわ」
「そう……」
なんとなく気のない返事を返しておく。
「ドロシーさん? どうかしましたぁ?」
「えっとね……」
『わちしならココだよー。』
「えっ?」
「ほぇっ?」
能天気な声がアザレアの方から聞こえた。
呪われた感じがしないけど、大丈夫かな?
2人がアザレアを見る。
猫のぬいぐるみの横には、くまのぬいぐるみ。
そう、ルティエ役のぬいぐるみ。
「まさかルティエちゃん……」
震えながら言うメルルに、アザレアはコクリと頷く。
「そんな……」
メルルとセニアさんの顔から血の気が引いていくのが分かる。
うーん、なんだか悪い事してる気分……してるね。
来たばかりのセニアさんを早く退避させよう。
「アザレア、セニアさんを家に連れていってあげて」
「うん、気を付けてねおねーちゃん」
家に入っていく2人を見送って、私の方はメルルを眺める事にする。
「せっかくセニアを連れてきたのに、こんな事になってしまって……」
罪悪感もあるし、慰めてあげようかな。
「ほらほら、元気だして。魔法でこうなっただけなんだし、どうにかなるって」
「……はい」
うーん、終わったらなんかされそう……。
少しくらいは我慢してあげたほうがいいかなぁ。
むぅ~……。
ミラ、ほどほどにお願いね?
絶対私に最終被害が来るから。
「あの……ドロシー……」
「何?」
メルルは何も言わずに抱き着いてきた。
小刻みに震えている。
やっぱりやり過ぎだよね。
そっと頭を撫でてあげた。
うーん……。
元お嬢様のメルルには刺激が強すぎたかな。
何かの恋愛に発展しないことを祈ろう。
なんとなく落ち着いてきたかな?と思い、家に入ることにした。
「ほら、手繋いであげるから」
「は、はい……」
メルルはホラー苦手っぽいなぁ。
私も超苦手。
怖い話で泣く自信あるよ。
玄関に入ると、明かりが全て消えている事に気が付いた。
「あれ?」
「真っ暗ですわ……」
どういう事?
これはさすがに聞いてないよ。
そう考えていると……
「ふふふ……」
「!?」
変な笑い声が聞こえた。
急いで明かりをつけて、家に入る。
リビングにいくと、椅子に綺麗に座ったぬいぐるみが4体。
「あのぬいぐるみは……」
ミラとルティエ役の猫と熊は分かる。
じゃあ後の2体は……。
「クスクス」
「きゃあっ!」
ぎゅうっ
今の笑い声に驚いたメルルが、思いっきり抱き着いてきた。
ええい、当てるな!
なんかイラつくからっ!
っとそれよりも、今上から……。
見上げてみると、マギアフォンが天井に張り付いている。
いや、これは……アザレアの蔓か。
なーるほどね。
蔓が私の目の前に降りてきて、マギアフォンを近づけてくる。
受け取ればいいのかな。
メルルをぎゅっと抱きしめながら、受け取った。
すると───
『めぇ~るぅ~るぅ~……。』
囁くように、メルルを呼ぶ声。
これはセニアさんだね。
「セッ、セニア!?」
メルルが後ろを振り返るが、もちろん誰もいない。
マギアフォンはメルルの死角となるように私が移動させている。
メルルが私に背を向けていると、私の後ろからスッと、セニアさんが飛んで現れた。
そのままメルルの後ろから手を伸ばし……
むにゅん
胸を鷲掴みにした!
『だーれだ』
すかさずマギアフォンから聞こえる声。
「えっ? 今の声、ミラ!?」
慌てて振り向くと、その目の前にいるのはセニアさん。
『残念はずれ~!』
今度はルティエの声。
メルルからしてみれば、セニアさんからルティエの声が聞こえているように見えるはず。
「え? え? あれ?」
不思議だよねー、セニアさんからいなくなったはずのミラとルティエの声が聞こえるんだもの。
「大成功なのです」
「面白かった~!」
「ごめんなさいメルル……」
キッチンの方から姿を現す3人。
それを呆然と見つめるメルル。
「いつもメルルにいじられたりイタズラされたりするから、たまには私から驚かせたくってね♪」
そう言って、マギアフォンを見せる。
「それは?」
『遠く離れてても話が出来る魔道具なのです。』
ミラがいる方向から逆の、私の方から聞こえるミラの声に、驚くメルル。
「ビックリするよねぇ。ボクもこの魔道具の説明された時はぁ、叫びそうになったよぉ」
そのままセニアさんがネタばらし。
すると、
「ひどいですわっ! 本当に怖かったんですからっ!!」
涙目で訴えてくる。
やっぱり、こういうの苦手だったみたい。
「明かりを消したり笑い声の件は私も怖かったし、今日は一緒に寝よっか」
「むー……なら許しますわ……」
私のお誘いに、しぶしぶ大人しくなった。
セニアさんが横で羨ましそうにこちらを見ている。
「セニアさんも、セクハラをしないならいいですよ」
「むっぐっ……はい、それで大丈夫ですぅ」
今言葉に詰まったよね?
不安だけど最初は一緒に驚かせちゃったし、良しとしよう。
ミラにアイスティーを頼んで、後はのんびり話し合う事にした。
外がしっとり感抜群、とってもムレムレで気が滅入ります_(:3 」∠)_




