無人島へようこそ!
「ムニエルおかえりー!」
アザレアが元気に手を振っている。
小舟を使って島に降りて来たのは、ムニエルの他に5人いるけど……。
一体どこで何をどうやってきたら、あの船に残った人を含めてこんなに人が同行するようになったんだろう……。
見た感じ……人間族が2人、水棲族が1人、獣人族が2人。
う~ん?
「えっと、おかえりムニエル。それで、その……」
どうしても気になって、5人の同行者をチラチラ見てしまう。
向こうも私達の事が気になるのか、私だけじゃなく後ろにいるアザレア達を見ている様子。
すると5人のうちの1人、背が高く、紺色のロングヘアーをしたメイドさんらしき人が、前に出てきた。
「突然の訪問失礼致します。貴女様がリヴァイアサン様の主である、魔女のドロシー様でいらっしゃいますか?」
…………うん?
「ええ、私がドロシーですが…………」
今なんて言った?
リヴァイアサンのあるじ?
えーっと……。
「申し遅れました、私はシーラと申します。本日はこちらにいらっしゃるリヴァイアサン様に同行の許可を頂き、土産の品を届けに参りました」
こちらにいる……のは、ムニエルだよね。
「ムニエル、あんた神獣リヴァイアサンだったの?」
私の問いに、ムニエルは頷いた。
まじっすか……。
まぁ神獣は初めてじゃないし、別に害はないから良いけど。
「ドロシー様はリヴァイアサン様だと知らずに、従者契約したという事なのですか?」
「そんな契約したっけ? 覚えがないんだけど」
再びムニエルが頷いた。
うむむぅ、いつだ……いつそんな事したんだ……。
悩んでいると、後ろからアザレアが私の服をチョンチョンと引っ張ってくる。
「おねーちゃん、この人達だぁれ?」
「うーん、なんだかムニエルが連れてきたお客さんみたいだよ?」
「へぇ、そうなんだー。お姉さんこんにちは!」
アザレアがシーラさんに元気に挨拶した。
メルルとミラの時は、いきなりあちこち触られて怯えたりしてたけど、人見知りではないみたいなんだよね。
良いことだと思う。
……で、挨拶されたシーラさんは……真顔で涎たらしてるんだけど……。
「こっ……こんにちは。じゅる……」
……なんか危ない気がするからアザレアには後ろに下がっててもらおう。
うん? なんでメルルとミラがガチガチ震えてるの?
「あ……あああの……ムニエルさんって神獣リヴァイアサンというのは本当なのです?」
「うん、なんかそうみたい」
「みたいって、知らなかったんですの!?」
「うん」
あら、2人が向き合ってブツブツ言い始めちゃったよ。
うーん、どうしたんだろう。
分からないけど、今はとりあえずシーラさんに用件とか聞かなきゃいけないし、この人達はお昼食べたのかも心配な時間だし。
「シーラさん、詳しくお話を伺いたいんですが、お昼はもう食べました?」
「いえ、準備をしている時に島が見えましたので、挨拶か用件を済ませてからにしようかと思っております」
……このメイドさん、表情ぜんっぜん変わらないなぁ。
「もしよろしかったら、船の人も全員来てもらって、このあたりの好きなところで食べちゃってください。そのついでに詳しいことを聞かせてください」
「よろしいのですか?」
「はい、そこに小さい子もいらっしゃいますし、ずっと船だと疲れるでしょうしね」
シーラさんはペコリと礼をし、船の人に合図を送り始めた。
しっかし、ムニエルに事情を聴きたいんだけど、言葉分からないからなぁ……。
「あのー、ドロシーさん?」
「ん? ミラどうしたの?」
「ムニエ……リヴァイアサン様が『アザレアの喜びそうな物を持ってきた、事情と品については先程のシーラが説明する』と言ってるのです」
まさかの通訳様がいらっしゃった。
「え? ミラってムニエルの言葉が分かるの?」
「…というよりは、リヴァイアサン様が水棲族に意思を伝えられるのですよ」
なーるほど。
ミラがいればムニエルの言葉が分かるってことね、これは嬉しい。
それにしても、投げた時に言った指令をちゃんと守って来るとは。
よくやったわムニエル!
「俺達!」
「海の!」
「男だぜ!」
「どーん!」
ざっぱーん!
ナンダコレ?
……なんで波もゆるやかな何もない砂浜で波しぶきが立ってるの?
最後のどーんってなんだどーんって。
というかその決めポーズなんなのさ。
そしてその一番前の獣人のちびっこは何で混ざってるの?
そこだけ無駄に異質な癒し空間になってるけど。
この一瞬でどれだけツッコミをいれれば満足なの?
「……えーっと、この人達で全員かな?」
「あぁ、近くに丁度良い岸があって助かったぜ」
船長のフランツさんが楽しそうに、船を止めた岸から歩いてきた。
待ってる間にシーラさんから聞いたが、お土産の話、この島に来たちょっとした用事、滞在についてなど、後でゆっくり話したいらしい。
急ぎでもないようだし、こちらも問題ないから水場付近で自由にしていてもらおう。
まずはこの人達の昼食からだね。
「船長さん、持ってきた食料はどれくらい残ってるんです?」
「あと3日分は余裕だが、釣り道具もあるからそれほど困ってはないな」
「そうですか、大きくて食べきれないのがあるので、お土産も兼ねて提供しますよ」
「むぅ? 食べきれないというなら、有り難く頂こうか」
「じゃあ今持ってきますね」
そう言って、無造作に凍らせて岩場に放置してある、魚の切り身を取りにいった。
まだ1切れの半分すら消費できてないから、正直邪魔だし丁度いいね。
2切れ持って行ってやろう、海の男達がんばれ、超がんばれ。
「おまたせー!」
どすん!どすん!
浜辺に置いた2切れの切り身に、船で来た全員が唖然としている。
「いやこれデケェよ!」
「ええ、だから食べきれないって……」
「まさか切り身で船よりデケェとか思わねェから!」
「まぁまぁ、これで食料に悩む必要はないでしょ?」
「今度は多すぎで悩み始めたんだが……」
その気持ち…私はよーく分かるなぁ。
「じゃあシーラさん、この凍った魚の切り身差し上げますんで、沢山食べさせてあげてください」
「ありがとうございます。せっかくなので今夜は浜でバーベキューにしましょう。ドロシー様達もぜひご一緒に」
おお、それは楽しみかも。
シーラさんに以前使ってたキッチンを案内し、アザレア達の元へ戻ると、なんだか楽しそうに話してた。
いつの間にかスキュラの子が増えてるね。
「わっ、わちしをミラ様のお嫁さんにしてくださいっ!」
……タコが魚にプロポーズしてる。
一体どんな話をしてたんだろう。
「あ、おねーちゃん、お話終わった?」
「うん、ひとまずね。いまシーラさんがあっちでお客さん達のごはんの準備してるとこ」
「だったら! 私達も手伝いに行きましょう! メルルさん!」
うおっ?
そんな大声でどうしたんだろう。
「そうね、じゃあ行きますわよ」
メルルがミラの手を取って連れて行ってしまった。
あ、ミラに重力魔法かけてそのまま忘れてたけど、それで良かったんだ……。
どうせミラは自分で動けないんだから浮かせておけば誰かが引っ張るだけで移動できるってことね。
なんで今まで気付かなかったんだろう……。
「あ~んミラ様ぁ~……」
なんでこのスキュラの子は涙目なの。
振り返ると、アザレアと共に船で来た女の子達が私を見ていた。
「あ、ごめんね。もう少しで昼食ができるみたいだから待っててね」
「い、いえ……だっ大丈夫ぅですっ」
セイレーンの子はなんだか緊張してる?
人見知りかあがり症なのかな?
それにしても……。
「ねぇムニエル、あんたやけにそのちっちゃい子に懐かれてない?」
私が船の先導みたいなことしてた時から、ずっと頭に乗ってるような……。
「『すっかり懐かれてしまってな、悪い気はしていない』だそうです」
ああそっか、セイレーンも水棲族だからムニエル語(?)がわかるんだね。
それにしても面倒見のいい神獣だなぁ。
「ドロシーさまーっ! そろそろ準備ができますわ! 丸太か何かで椅子や鍋置きになりそうな物をそのあたりに作ってくださいましー!」
ああ、そっか、ここには4~6人が限界だもんね。
メルルに手を振って了承し、とりあえず椅子サイズの丸太を簡単に作っていった。
ああ、いそがしいいそがしい♪
どうぶつの森が楽しみです。




