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流され系魔女の無人島ライフ  作者: 白月らび
本編

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甘くて苦い蜜の味

「キッチンの使い心地はどうだった?」


このリビングで初めての食卓。


夕食を作ったミラに、早速感想を聞いてみた。


「自分で火を点けられるのがとっても嬉しいのです!」


コンロに大喜びのミラ。


作って良かった。


「現状では問題無さそうですわね。使いながら欲しい物を増やしていけば良いでしょう」


「そうねー。扉が欲しかったり、窓を開閉式に出来ないかなーとは思うけど」


「ふむ、考えてみますわ」


どうやらドアのギミックを作るのは難しいらしい。


木や石で回転軸をうまく作れるのかなぁ。


「アザレアは何かあったら良いなーって思うモノはある?」


「えーっとねぇ……今日はどこで寝るの?」


そういえば今まで寝てた所は玄関になったんだった。


「この部屋ならどこでもいいから、アザレアが決めてもいいよ?」


「ふえぇー。どこにしようー」


キョロキョロ見回して、なんだか楽しそう。


「ふふ。食べてからゆっくり考えるといいよ」


私はアザレアに先に食べるように促し、水を……あっ。


「メルル、水用のピッチャーが欲しいかな」


「ですわね、では家具を揃えていきましょうか」


「それじゃあシンクに水を溜める道具が欲しいのです」


──すっかり夢中になり、夕食が終わっても話はなかなか途切れなかった。




……私は学んだ。


メルルの前にいるから、セクハラされるのだと。


ならばメルルを後ろから掴んでお風呂に入ればいいじゃない!


早速その作戦を実行。


「はぁ、背中にドロシー様を直接感じますわ……♪」


はい、問答無用で失敗しましたとさ。


まさかじりじりと壁に追い詰められて、私がメルルを抱っこする形になってしまうなんて。


「アザレアちゃんも、お昼過ぎはこんな風に抱かれてましたわね」


「えへへ。ナデナデが気持ちよくってつい寝ちゃった」


「あれは勉強になったのです」


ミラは何の勉強をしてるのかな。


「あの、メルル……動けないんだけど……」


「お風呂ではそんなに動かないではありませんか」


ぐっ……確かに。


だったら早く横にスライドして……。


「アザレアちゃん、ミラさん。横にいらして下さいまし」


「はーい」

「行くのです」


右にアザレア、左にミラがやってきた。


しまった!


「アタシがドロシー様を独り占めするのも良くないですわ。みんな仲良くしましょう」


メルルの言葉に、左右からピッタリとくっついてきた。


完全に逃げ場を失った……。


「えーっと……」


動けない、どうしよう。


「さぁ、ドロシー様を綺麗に磨きましょうか」


今日もまた、お風呂場で無慈悲な奉仕活動に襲われたのだった。


もっとゆっくりしたいよぉ……。




キッチンから甘い匂いが漂ってくる。


メルルとミラがアザレアの蜜を使った料理を考案中。


どうやら煮詰めている様子。


美味しいものができるといいなぁ。


私も参加したいけど、みんなでキッチンに立つと動きにくくなるという事で、アザレアの魔力操作の練習を見ている。


「そうそうその調子、すこーしずつ魔力を強めていってね」


「んにゅ~…………」


真剣な顔で蔓の先端に魔力を込めている。


「はいゆっくり弱めて~」


「ん…………」


 パシュッ


「あっ……」


蔓の魔力が散ってしまった。


「惜しかったねー、出してる魔力を減らしながら維持するのってちょっと難しいからね」


「む~、今度こそっ」


うんうん、やる気があるのは良いことだ。


……なにやら焦げた匂いがする。


蜜を焦がしたのかな?


縁側開けてあるから換気は大丈夫だね。


「ぅ~………にゅー………!」


なんだか可愛い唸り声で操作してるけど……。


ああ、そんなに力(りき)んだら……。


 パチッ


「きゃうっ!?」


アザレアの魔力が弾けてしまった。


「アザレア、大丈夫?」


「びっくりしたぁ……」


「力を入れすぎちゃったね。次は力を抜いてやってみたらどうかな?」


「うんっ!」


練習は順調だね


……さてこの甘い匂いの元凶はどうなってる?


「メルル、ミラ? なんだかものすごく甘い空間になってるけど……」


キッチンを覗くとそこには抱き合って寝ている2人の姿が……。


あ、こっち見た。


「………………」

「………………」

「………………」


どうしよう。


こ、声かけたほうがいいかな?


「お、おめでとう?」


うむ、我ながら間抜けな一声。


「ちっちがうのです!!」


慌てて身を起こして何かを否定する2人。


「こ、これには理由が…うっ……」


メルルが口を抑えて俯いてしまった。


まさかっ!


「もしかしてメルル! ミラの子を!?」


「ンなわけないですわああぁぁぁぁ!! ……うぷっ」


気持ち悪いのか分からないけど、しっかりツッコミはするメルル。


しかし一体誰の……。


ある考えが浮かび、私の顔からサーっと血の気が引いた。


「……わ、私は覚えがないんだけど……違うわよね?」


「……へ?」


思わずメルルから離れ、後ずさりしてしまう。


「だって、襲われてばっかりで私の方から手を出したわけじゃないものっ!」


「ど…ドロシー様!? ちょっと待ってくださいましっ!」


「まさか…………私が寝てる間にしたの!?」


私に覚えがない以上、考えられる可能性は私が寝てる時しかない。


「だから違いますわっ!?」


メルルが何か言ってるけど、私はきびすを返し───


「落ち着くのですドロシーさん」


 ガッ ドシャッ


「おぶっ!?」


ミラが私の足を掴み、私は顔面から思いっきり床に激突した。


「~~~~~ったぁ~~!」


うぅ、鼻とおでこ打った……。


「冷静になって下さいまし。アタシは身籠ってなどおりませんわ」


………………。


「……えっ?」


「そもそも女同士じゃありませんか」


もっともな事を言われてしまった。


「えー…あ、うん。ごめん……。いきなりな光景と、メルルが気持ち悪そうにしてたから勘違いしちゃった」


「ふぅ、分かっていただけたなら良いですわ」


安堵の溜息をつくメルル。


落ち着いたところで、状況を聞き直す事にした。


「じゃあ何で2人で抱き合って倒れてたの?」


「蜜をじっくり煮詰めたら、とっても甘い匂いになったのです。それを2人で味見したら苦過ぎてビックリしたのですよ」


「吐き出しそうになり、その弾みでお互いの頭をぶつけてしまい、そのまま倒れてしまったのですわ……。まだ口の中に少し残っていますわ……」


そう言って、メルルは口をゆすぎにシンクへ。


ミラ用の踏み台がコンロ前にあるから、あの鍋に入ってるのかな。


気になった私は鍋の中を覗いてみた。


茶色の液体がある。


ちょっと味見してみよう。


 ペロリ


「……苦い……コレって…………」


「だ、大丈夫ですの?」


心配そうにこちらを見つめるメルルとミラ。


「うん、これカラメルソースみたいね」


「からめるそーすなのです?」


お砂糖を煮詰めて作るソース。


アルラウネの花蜜から作れるのは驚きね、糖分強いのかな?


カラメルソースのちょっとした苦味がスイーツのアクセントに良く、ケーキやプリンなどに使われるんだけど……。


今出来てるコレは苦すぎて使いにくい。


それに、カラメルソースに合いそうなスイーツが材料皆無で作れない!


「このソースに関しては、苦味を抑えて食べやすくするのと、これに合う甘い食べ物が作れるようになるまで使用は保留でいいと思う」


「分かったのです、でも研究はしたいのです」


「うん、火には気をつけてね」


ミラって結構料理好きね。


じゃあ今思いついたアレを作ってもらおう。


「ちょっとお願いがあるんだけど、冷たいハーブティーを4人分入れてくれる? それに蜜をスプーン1杯程度入れてちょうだい」


「注文承りましたわ」


シンプルなアイスティーを頼んだら、メルルは当然のように理解。


ミラは初めての飲み物にちょっと困惑している。


そういえば2人が来てからはお茶を入れたことが無かったなぁ。


ミラの事はメルルに任せ、私はアザレアの方へと戻ることにした。


「どう? 上手く出来た?」


「ほふぅ、ちょっと疲れちゃった……。なかなか上手くいかないよー」


アザレアはすっかりお疲れの様子。


「冷たい飲み物を頼んでおいたから、休憩にしよっか」


「はーい」


しばらくしてお茶が運ばれてきた。


砕いた氷も入っていて美味しそう。


飲んでみると、爽やかな味にほのかな甘みが口の中に広がった。


「あら、レモングラスティー?」


「ご明答ですわ」


蜜を入れたのも大当たりね。


冷たくておいしー。


「おねーちゃん! これおいしい!!」


「美味しいよねー、これはアザレアの畑から採れたレモングラスから作ったお茶なんだよ?」


「ええっ!?」


そっか、畑から採れた草をお茶にするのは初めてだった。


アザレアはお茶をじーっと見つめた後、私に向かって真剣に言った。


「あのねおねーちゃん、畑を凄いのにしたい!」


こうして、明日は新しく畑を作る事になった。


どうやら自分が育てた草でもハーブティが作れる事を知って、やる気に火が着いた様子。


「明日からまた頑張ろうね」


「うんっ!」

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