楽しいお部屋づくり
「──後はここに出入り口を──窓はここで──」
「これでいいかな」
「ありがとうございます。これで屋根をつければキッチンとリビングができますわ」
ここ数日は、魔道具制作、家造り、魔法の勉強と、なかなか充実している。
……島の探索が全く進まない。
まぁいいんだけどね。
屋根用の板は軽いしすぐ持って来れるから、さっと作って来よう。
「おねーちゃん! みてみてー!」
アザレアの声に振り返ると、ミラが両手を上に掲げて噴水のように水を出していた。
水芸……ってやつよね?
ミラの顔は真剣そのもの。
見た目は面白いけど。
「もう水を出せるようになったのね」
「ふぅ、結構疲れるのです」
「最初はそんなものよ」
もうちょっとこのまま頑張ってもらって、早く重力魔法教えたいな。
「おねーちゃんおねーちゃん、アザレアのも見て〜」
「はいはーい」
いくらでもガン見するわよん♪
アザレアは蔓を伸ばし、先端に魔力を込めた。
「へぇ、そんな事できるんだ」
「──水さん 風さんを包んであげて」
そして蔓の先端から飛ばされる泡。
すぐ消えたけど、なかなか面白い事するなぁ。
というか、詠唱まで可愛いなんて、貴女は私をどうしたいの?
「どうかな?」
「凄いよアザレア。私の想像以上ね」
頭を撫でてあげた。
「えへへー♡」
あぁもう、このままチューしたい。
してしまったら、だいたい私の方が気絶する、ぐぬぬ。
私もなんだかアザレアに毒されてきたかなぁ。
……よし、メルルが悪い、そういう事にしとこう。
「ところでドロシーさん、今のアザレアちゃんの魔法って、水魔法なのです? それとも風魔法なのです?」
「んー多分、水と風の複合魔法じゃない?」
「ふくごーまほう?」
んーむ、なんだか知らずに使ってるっぽいし、早めに教えようかな。
「今夜はその辺りをお勉強しようね」
「はーい」
「夜が楽しみなのです」
ポツリ
「ひゃっ、降ってきた」
今は家の増築中の場所に、木や石ブロックを運び込んでいる。
アザレアが雨を感知して、今のうちに出来る事をとメルルに頼まれたのは、家具の材料だった。
雨が降るまで可能な限り、材料をリビングの場所に置いておいた。
「十分ですわ。少々散らかりますが、家具を作っていきましょう」
私はキッチンのコンロや料理台を担当。
メルルはテーブルなどの家具担当。
残り2人は……。
「あめあめふれふれー♪」
「きもちいいーのですー♪」
……家に入る時に乾かしてあげないと。
「それにしても、広く作りましたが、窓が小さいせいか開放感は少ないですわね……。大窓を作ったら雨が入りそうですし……」
窓ねぇ。
「窓代わりに結界みたいな魔法陣作るか、いっそのこと、おっきなポーチでも作って庭にする?」
「いいですわね。今度庇でも組み立てますわ。魔法陣の方はやめておきましょう、自然派に憧れるドロシー様の好みではないでしょうし」
「あはは、バレちゃってるね。ありがと」
魔法を使わないで暮らせる家って、素敵だと思う。
今までも魔法だけで解決できるところを、手間暇かけて楽しんでるし。
「この石壁も、アタシ達の為に錬金術を使ってくれた事くらい、分かってますのよ?」
「ぇ………うん……」
バレてる……。
「……だってしょうがないじゃんあんまり穴の中で長い間窮屈な思いさせたくないし自分のワガママだけで共同作業なんか出来ないしそれだったら工程くらいちゃんと魔法使うよ」
「ふふっ」
「なによー」
「聞いてないのに早口で説明してくださるのが、可愛いなと思いましたの」
う…………。
そういえば聞かれてないわ。
なんでまくしたてちゃったんだろう。
「………………」
「………………」
しばらくの間、木を切る音と組み立てる音、あと雨の音だけが響いた。
「おねーちゃーん!」
「わっ!?」
コンロが出来て一安心…というところでアザレアの声が出て聞こえた。
「なーにー?」
「ほらみて! ミラさんがこんなの捕まえたよー!」
アザレアが嬉しそうに持ってるのは……
「カニだね」
「カニですわね」
「チョロい相手だったのです!」
アザレアにぶら下がっているミラがドヤァって顔してる。
……あっ。
「ちょっとアザレア、ミラ!家が水浸しじゃない!」
「はぇ?」
「です?」
2人は雨と海でずぶ濡れになったまま、玄関からこのリビングまで、カニを持って駆け込んできたらしい。
あーもうしょーがないなぁ!
「ほらほら外出て! 濡れたまま家に入らないの!」
『えー!』
「えー、じゃないよ。濡れないように屋根つけたんだから、乾かして入らなきゃ駄目。ほら外出なさい」
『はーい。』
ミラが便乗して幼児化してる……。
「アタシが床を乾かしておきますわ」
「お願い、私は2人とカニをどうにかしとくから」
入り口までいくと、外で2人が待っていた。
うーん、妖花族と水棲族は雨が好き過ぎる。
「そのカニは夕食にするとして、貴女達は家に入る前に乾かすけど、まだ外にいる?」
「ついでなので、夕食作ってくるのです!」
「ミラさんのお手伝いしてくるね」
「わかった、あっちの家なら濡れてもいいから。ちなみに何作るの?」
「カニスープなのです」
美味しそう……。
「じゃあ行きましょ。火は着けてあげるね」
新しいコンロはミラの為に着火の魔法陣を付けてあげよう。
☆4限目 魔法のアレンジ
夕食が終わり、お風呂で揉みくちゃにされた後は、荒れたリビングでお勉強。
メルルにはお風呂での罰として、調理台を作りながら聞いてもらう事にした。
「さて今日は魔法を使う時の、基本とアレンジについてです」
「アレンジは早すぎるのでは?」
メルルの言う事はごもっとも。
私もそう思ってたんだけどね。
「アザレアが基本より先に複合使ったもんだから、今のうちに教えておこうと思って」
「ほ、本当に天才児ですわね……」
こうなったらしっかり可愛がっ……育ててあげないとね。
「まず基本とは、1属性のみで行う普通の魔法のこと。火だったり水だったり、それだけで使うから簡単ね」
そう言って、掌の上に小さい水球を作ってみせた。
家の中では無闇に火を使ってはいけないのだ。
「そして、多属性だったり、放った魔法を色々な方法で変化させたりするのを、アレンジと言うの」
「なるほどなのです」
「もちろん同時に2つ以上の魔法を使うようなものだから、基本に比べて難しいわ」
メルルが大きな台を組み上げて壁に立てかけているのが見えた。
「ミラがこの前やった水を氷に変えるのもそう。あれは魔法じゃなかったけど、魔法でも似た事ができるの」
掌の上の水を、そのまま凍らせた。
「これを『連携魔法』と呼んでいるわ、省略する人は『コンボ魔法』や『連携魔法』って言ってるけど」
「それって単独で出来る人は少ないんですのよ。普通は数人で息を合わせて行いますの」
おや、そうなのね。
私は常に単独行動だったから知らなかった……。
「次に複数の属性の魔法を同時に使うのを『複合魔法』と呼びます。コンビネーションと似ててややこしいので複合でいいわ。今日アザレアが使った泡の魔法がそうよ」
「なるほど、水と風を合わせて泡を飛ばしたんですのね」
「おねーちゃんせんせー」
なんか私が複合してるよ?
「はい何でしょう?」
「コンビネーションと複合の何が違うかわからないの……」
「良いところに疑問を持ちましたねー。簡単に言っちゃうと、使った後に合わせるのを連携、使う前に合わせるのを複合、って呼ぶのよ」
「へー」
「よくわかったのです」
丁度調理台が出来たっぽい。
あの辺りは壁をくり抜いてカウンターにしたいかも。
「よし、最後に固有魔法ね。これは種族や特殊環境で育つと身につく魔法。メルルなら何か使えるんじゃない?」
「へっ? まぁありますけど……」
突然振られて、ビックリして答えるメルル。
「いま見せる事って出来る?」
「う……やめておいた方が……ドロシー様ならきっと怒りますし……」
「………? じゃあやめとくけど……理由は聞かない方がいいのかな?」
なんで私が怒る事になるんだろう?
「ど、どうしてもという時が来たら教えますわ……」
「わかった、今はいいよ」
メルルのしどろもどろな態度も含めて気になるけど、困ってるし今度にしよう。
「見せれなかったけど、つまりはアザレア達にしか使えない魔法もあるかもね?ってこと」
「よく分からないけど、そういうのもあると覚えておくのです」
よし、こんなもんかな。
「これで今日のお勉強はおしまい。さあ、メルルを手伝いましょ」
「はーい」
キッチン使うのが待ち遠しいな。




