イケナイ大後悔
「この辺りでいいかな」
最初に決めるのは『拠点』。
外でもいいんだけど、やっぱり雨くらいは凌げないとね。
私が流れ着いた浜が見える、とってもわかりやすい場所。
ここを掘ろう。
「ていっ」
バキンッ!
壁に魔力を流すと割れるような音と共に、壁に格子状の切れ目が入った。
そして手前の崖からいくつか切れた岩を取り出してみる。
一つで大人の頭と同じくらいの大きさのブロックなので、それなりに持ちやすいし、軽い。
…以前落石除去を手伝った時に同じことやってたら、何故か恐ろしいものを見る目で見られたり、大工さんや貴族に土下座でスカウトされたりしてたけど……。
「………よし、とりあえず崩落はなしっと」
硬い崖でよかったぁ。
ずっと昔に建築用として作った、石とか木をブロック状に切る魔法………生活するのに便利すぎるっ。
今は掘るのに使ったけど、このブロックは後で使えるかもしれないし、そのへんに置いておこう。
「ふんふふ~ん♪ふ~んふ~んふん♪」
なんか楽しくなって鼻歌を歌いながら岩ブロックを外に運んでいく。
魔法でどかしてもいいんだけど、なんか楽しい。
岩を全部外へと出すと、寝るのには困らない四角い空間が広がった。
「おお~。これならお布団さえあれば快適かも~」
そんな人工的なものは此処にはないし、あとで上の森から葉っぱでも採ってこようかな。
これで雨風を凌ぐ住処はおっけーっと。
設備や小物は暗くなってから作ればいいよね。
まだ外は明るいし、水と食べ物を調達しなきゃ!
「運動したら喉渇いてきたし、丁度いいから先に水を作ろうかな」
水を貯める容れ物が必要よね。
木をくり抜いて容器にするか、穴を掘って溜め池にするか………ん?
「ををっ!こんなところに使えそうなブロックが!!」
はい、さっき穴掘りで作った岩ブロックです。
早速出番がきたねー。
ブロックを積み上げて幅はテキトーにして、高さはお腹よりちょっと上くらいでいいかな。
最後に魔法でブロック同士をしっかりくっつけて完成ー。
これで水漏れ対策もバッチリね!
あとはここに海水からとった水を入れるだけ。
「どーしよっかなー。錬金術で分離してもいいけど、蒸留装置作るのも捨てがたいなー」
手段が多いのもある意味困り物ねぇ。我ながら贅沢な悩み。
長い間『魔女』と呼ばれてるのは伊達じゃないもの。
こーゆー時は………。
「迷ったら合体させればいいじゃない!」
というわけで、またしてもブロックの出番!
まずはさっき作った水槽の斜め上に底部分を作ってと。
「えっと、水からその他を分離する魔法陣でいいよね」
その底部分に魔力で『素体分解用の魔法陣』を描いていく。
あとは水槽と同じ要領で壁を作って、水槽方面だけ出口を開けておく。
これで本体は出来た。
次に分離した水以外の物を受け取る為の小さな台と魔法陣を、本体のすぐ隣に設置。
「よしっ、出来た。ちょっと高くなっちゃったから、後で階段と土台作らなきゃ」
即席の水精製装置かんせーい。
さぁ試運転………。
「あ、海水運ぶ為の容れ物がないや」
すっかり忘れてた。
「まぁいいや、とりあえず水持ってこよう」
海まで歩いていって、バケツ二杯程の海水を球体にして宙に浮かせる。
「うーん、この光景は生活するにしては情緒がないなぁ、早めにバケツ作ろう………」
便利だけど『水汲み』としては気に入らない。そんなこと思いながら作った装置にたどり着き、
「ほい、起動」
水精製装置の魔法陣に魔力を注いで起動させ、その魔法陣に向けて海水を放りこむ。
すると、私の魔法から解放された海水は魔法陣の上に浮き、球体になる。
そのまま少し泡立った後、球体からキラキラした物が湧き出て、隣の不純物用の魔法陣に向かって降りて行く。
「あ…そういえば海水からはお塩がとれるんだった」
こんな当たり前のコト忘れてた、ラッキーだけど………私ってうっかりさんだなぁ。
しばらくしてお塩が出なくなった。分解が終わったっぽい。
魔法陣の上に浮かんでいた水が落ちて、出口から流れて水槽に溜まっていく。
「うんうん、大成功」
通常、錬金術では液体は取り扱いにくい。魔法陣に容器をのせると、容器ごと加工してしまうから。
でもこうして魔法陣を装置の一部として使用すれば、非常に便利な道具になる。
ま、応用力が全く無い大がかりなものになるから、個人では普通やらないだけなんだけどね。
それはともかく、不純物を完全に取り除いたこの水は間違いなく蒸留水。
美味しくないけど生活する為には一旦これで良しっと。
なにより装置作るの楽しかったし。
飲むだけじゃない。洗濯、料理、あと体を洗うのにも使えるね。
あ、そのうち水を使う為の桶とかも作らなきゃ。
さて、最初の目標もあと1つ、食べ物を調達しなきゃ!
………って思ったんだけど………。
「うそぉ………。もう日が暮れるの?」
もー…、時間経つの早すぎない?
起きたの昼頃だったような気がするけど、それにしては早すぎ…あっ………。
寝床と水精製装置かぁ………。
気にしてなかったけど、よく考えたらガッツリ作ってたかも。
「あはは…」
はぁ…。今夜は仕方ないかな。
寝床と水はできてるから、明日は朝から食料探しに行こうっと。
明かりの魔法で穴の中を明るくして、夜でも出来る作業をするつもりよ。
危ない生物がいないとも限らないから、入口には侵入防止のための結界を貼っておく。
「さーて、できるだけ快適空間にしたいなぁ」
……………。
「し……しまった………」
ここにきて重大なことを思い出した………。
「トイレ……考えてなかった………」
旅をしてる時は前もって携帯トイレとか便利なもの用意してあったけど、流された時に荷物は全部なくなった。
無いものねだりしてもどうにもならないし。
設備は明日作るとして、今はその辺りに穴掘って済ませるしかないよね………。
「さっさと済ませてこよ……」
夕日がほとんど沈みかけているから、魔法の明かりを持って小走りで穴を出てみたけど………。
すでにかなり暗い………
この、人が来る気配が完全に無い無人島でたった一人。
………………………。
「これは……アレね……」
ほんのちょっとの好奇心。
普通出来ないコトに対する背徳感。
恥ずかしいけどドキドキする。
「………いいのかな……いいよね………」
意味なく照れながら。
意味のない自問自答をしながら。
海が見える開けた場所で穴を掘り………。
ごくり………。
生唾を飲む。顔が熱い。
「………ん…………」
いつの間にか沈んだ太陽に代わって黒い海面に写る月を見ながら………。
下着を下ろした。
「あーーーーーーーーッ!!」
外の穴を埋めてからすぐに戻って一息ついた瞬間、顔の温度が急上昇!
慌てて隅っこでうずくまって思いっきり叫んでしまった。
「もうダメっ!!何してんの私っ!!」
まったくだよ!
人が居ないからってなんであんな…こと……。
「は、はじゅかしい………」
もちろん自分が。
自分の行いが。
自分の存在が。
「やるんじゃなかったやるんじゃなかったやるんじゃなかったやるんじゃなかった………」
恥ずかしさのあまり呪文のように後悔の念をつぶやきまくった。
何なのアレ最初から最後まで解放感200%でヤバくてヤバすぎ!
ダメだ頭おかしくなってる!誰か助けて!いや助けないで恥ずかしい!
くぁwせdrftgyふじこlp
「うひいぃぃぃぃ………」
我ながら情けない悲鳴をあげながら、しばらく壁にへばりついてドンドン叩きまくってしまった………。
こんなの………………!ならないから!癖になんて!絶対ならないから!
「わわわわたしぃ、ノーマルだもん………ノーマルだよね………」
必死の弁解が………とっても虚しい気がするんだけど、なんでなの………。
一人でなにしてんだろ、私。
恥ずかしくて蒸発しそう………。
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気が付いたら朝だった。
ねぇ私って、もしかしてバカなのかな………?




