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流され系魔女の無人島ライフ  作者: 白月らび
本編
23/373

伝説のお仕置き術

メルルを驚かせて、朝食を終えた私はそこそこ上機嫌。


「おねーちゃんが元気になった」


「そうかもね~、ふふふ」


アザレアに笑顔で返事ができるほど。


思えば昨日から今朝まで滅茶苦茶だった。


たまにはこんな日もあるだろう。


「さて……」


私は目の前のメルルとミラを見て話を切り出した。


「貴女達はこれからどうするの?」


「どう……?」


ミラは質問の意味が分かってない様子。


「ここは無人島、そして私は遭難して住み着いてるの」


「そうだったんですのね。ですが、のんびりと設備を整えていってるように見えますが」


「いや、なんか楽しくて」


大変な事もあるけど、楽しいよね。


アザレアとも会えたし。


「それで、貴女達はどうしたいのかなって思って。ここは空から見ても陸が全く見えないし、例え船を作れても貴女達が住んでいた場所へ無事帰れるかは私にも分からないの」


私は正直に今の状況を伝えた。


「あぁ、そういう事ですの」


「なるほどなのです」


2人はキョトンとした顔で納得した……のかな?


でも帰りたいって言ったらどうしよう。


「もちろんアタシはここに住みますわ」


「同じくなのです」


「えっ?」


かなりあっさりしてるけど、大丈夫なのかな?


「もともと帰る所などありませんわ。仮の家はあれど、ずっとフラフラしていましたの」


メルルはあんまり私と変わらないのね……。


「私は新たな住処を求めて2年ほど旅をしていたのです。なので問題は無いのです」


なるほど……。


「ミラ、一応聞くけどここでいいの? 定住の地は」


「みなさんの事が気に入ったので、むしろ一緒がいいのです!」


うーむ、まぁ本人が良いと言うなら良いけど。


「メルルは……」


「昨日ドロシー様に恩を感じていると言ったでしょう?」


むぅ、別に恩なんていいのに。


「ですから家事や夜のお世話はお任せ下さいまし」


ひっ……。


朝の事もあってその言葉と瞳に少し怖気づいてしまった。


いけないいけない、怖がる程の事でもないはずなのに。


「あ、ごめんメルル。怖がるつもりじゃ無かっ───」


「メルルさん? お仕置きなのです」


 ガシッボフッ


「むぎゅ!? え? ちょっとミラさん? 力が強くないですか?」


見ていた私もびっくりした。


ミラは座ったまま、片手でメルルを引っ張り、バランスを崩したところを両手でつかんで持ち上げ、うつ伏せにして膝?の上に置いたのだ。


しかも片手で抑えつけているだけでメルルは動けない様子。


「あ、あの……ミラさん……ごめんなさい……。わざとじゃないですわ……その……い、いや……」


あまりの力の強さに本気で恐怖するメルル。


実は私も怖い。


「わざとじゃなくても、と言ったはずなのです」


「ひっ………」


メルルは顔を真っ青にしながら涙目になっている。


そして、島にメルルの笑い声が轟いた。


 こちょこちょこちょこちょ


「あはははははは!!やめっ!んひっひはははは!!」


私とアザレアの目の前で行われたお仕置き。


それはミラによるくすぐりの刑だった。


「あーはははははっんいーーーやだああああはははははは!!」


笑いながらメルルは逃れようと暴れるが、ビクともしない。


そんなに力があるのね……。


「これぞ地上から海へと伝わってきた伝説のお仕置き術なのです」


伝説はしょーもなかった。


それにしても、うーん……。


まさか即答で島に住むと言い出すとは思わなかったなぁ。


「ここかぁ?ここがええのんですかぁ?」


「やめてくださっあはははははは! あぁぁぁぁぁぁ!!」


ところでコレはいつまで続くんだろう。


それなりの時間やってるような……。


「アザレア、退屈じゃない?」


「ううん、ちゃんと見て勉強しておきたいの」


え?勉強?何の?


アザレアを見ると、なにやら真剣な顔をしている。


この子は何を───


「いやああああはははは! やあああ出ちゃう! 出ちゃうからああははひひひひひ!!」


えっ!?ちょっと待ってまさかっ!!


「ミラ! ストップストップ!!」


「くすぐりは急には止まれないのですぅぅぅ!!」


「ひああぁぁぁぁぁぁ!!」


 ブシャアアアァァァ


「はぁははははイヒヒヒヒ!!」


「わっ! なんなのです!? メルルさんから水が出たのです!!」


驚きながらも手は休めない。


えげつない! なんてえげつないの!?


うつ伏せでお尻を突き出して笑いながら漏らしちゃうサキュバスなんて初めて見たよ……。


………………。


 モジモジ…


あ、あれ?なんで私ドキドキしてるの?


おかしいな……。


「わぁ……」


あっこんなのアザレアの教育によくないっ!


「アザレアっ! 見ちゃだ…め……?」


えーっと、なんで私をみつめてるのかな?


「すごかったね! おねーちゃん!」


「え、うん……? すごかったね……」


この子は一体何を言ってるんだろう?


いつの間にかお仕置きは終わっていた。


「はぁ……はぁ……こんなの、初めてですの……」


顔を赤くしながら満たされた顔で呟くメルル。


え?何?目覚めた訳じゃないよね?


一方ミラは、メルルの下半身が気になる様子。


「なんなのです? この温かい水は。どこから出たのです?」


自分とは全く違う体に興味を持ったようで、体を傾けてまじまじと見ている。


良くない、それ以上は色々と良くない。


「あー、ミラ? そこまでよ。メルルを開放して頂戴」


「もうしてるのです。動かないのですよ」


そりゃそっか、明らかに力尽きてる。


私はメルルの下半身に水をかけ流しながら、現実逃避するかのように今日はどうしようかと考えていた。




「……やりたい事を考えるのです?」


メルルが落ち着いて、ようやく話を進められるようになった。


「もともと快適ってほどでもないし、人数増えたからね。出来る事とやるべき事は増えたと思うのよ」


「たしかに、言ってしまえば穴と野外の原始生活ですものね」


メルルの言う通り不自由はしないけど、それだけだからね。


だからこの機会に生活を改善したいと思ってる。


「流石にアタシもいきなり家を作るのは難しいですわ」


「私は家というものがよく分からないのです」


はやくもピンチ。


「そっか、でもこれ以上穴を広げたり増やしたりするのはねぇ……」


「そういえばこの住処はどうやって作ったのです?」


「ん? こうやってブロック状に切り出して掘ったの」


そう言いながら、壁に手を当て、1ブロックだけ切って取り出して見せた。


「溜めも詠唱も無しで、その様な魔法を……」


「す、凄いのです……」


2人は信じられないって顔をしている。


まぁ魔法使い続けて結構長いからね。


「そのブロックを使えば家を建てる事が出来るのではありませんこと?」


「うーん……」


メルルの問いは当然だけど、私は乗り気ではない。


「木造がいいなと思って、やってなかったんだよね」


「そ、そう言う理由でしたのね……」


メルルはがっくりと肩を落とした。


まぁ、こうやって人数が増えたらそんなワガママもお終い。


今出来ることで環境を作らなきゃ。


「じゃあまずはブロックを使って家を建てますか」


『おーっ!』




服を着てやってきた場所は、お魚の切り身が置いてある南側の平地。


海からやや離れた森の近くに建てることにした。


ちなみに服を着た時、メルルとミラが心底残念そうな顔をしたのは、見なかった事にしてある。


「ここなら多少海が荒れても平気でしょ。家や畑も好きに作れるわ」


今の住処からもそんなに離れていないのもポイント。


「ではここに枠組みから作っていきますわ」


私に建築センスは無い。


そこはメルルがカバーしてくれた。


経験は手伝い程度だが、いろいろ見て知識はあるようだ。


色々話した結果、支柱・床・天井は木製で、壁を石ブロックで作ることになった。


理由は、床天井はその方が作り易くて崩れにくいとのこと。


うん、何かの理由で石天井が壊れたら怖いもんね。


砕けて拡散することのない木の板の方がいい。


「測量など環境的にも技術的にもアタシ達には不可能ですわ。なので組み立てながら大きさを決めていくのですわ」


メルルが今からやる事と理由を説明してくれる。


「なので、木を切り、四角形に並べて広さを決めますわ」


なるほどなるほど……。


「アザレアちゃん、わかるのです?」


「むー、あんまり分からないのですー」


ミラとアザレアはサッパリな感じ。


私も言われて納得する程度だし、何も知らない2人は仕方ないよね。


簡単な作業をやってもらおう。


「それでは、必要な木材を調達しに参りましょう」


こうして私達の初めての建築が始まった。

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