楽しいお食事タイム
あれから少し寝てたみたい。
……うう……よりによって人前でネガティブになっちゃうなんて……
恥ずかしいよもう……。
目の前にはアザレアのお腹、頭を撫でてくれてるのはアザレアかな。
ちょっと嬉しい。
……起きよう。
「あっおねーちゃん、起きたの?」
すぐ側から聞こえる、心配そうなアザレアの声。
「うん、ごめんね、変な事になっちゃって」
「ビックリしたけど、おねーちゃんが大丈夫なら良かったよ」
どうやら安心してくれた様子。
あれ?そういえば。
「ねえ、メルルとミラはどうしたの?」
「あら、お目覚めになりましたの?ドロシー様」
背後からメルルの声が聞こえた。
その手には鍋?
「なんかごめんなさい、お見苦し───」
「それについては謝るべきなのはこちらですわ。でもそのお話は後でゆっくり落ち着いて致しましょう?」
メルルが優しく微笑んで鍋を置き、焚き火に火を点ける。
「あ、もう夕方なのね」
空を見たら太陽が沈みかけていた。
私は周囲に明かりの魔力玉を4つ浮かべて夜に備えておく。
「メルルさーん! 具材の下ごしらえ終わりましたー!」
キッチンの方からミラの声がする。
晩御飯の準備してくれてたんだ……。
「アザレアちゃんに聞いてキッチンや食材を使わせて頂いたんですの、しばしお待ちくださいませ」
そういってメルルはキッチンの方へと駆けていった。
……ミラは何をどうやっているんだろう……。
しばらくアザレアに撫でられていると、メルルが大皿にお魚の切り身と野草を盛ってやってきた。
晩御飯はお鍋かな。
「食材の種類あまり無いけど大丈夫だった?」
「そうですわね、何が作れるかで少々悩んでしまいましたわ」
「何か新しく手に入るといいんだけどねー」
そんな会話をしながら、メルルは鍋で具材を煮込んでいく。
…………あれ?
「ねぇ、そんな綺麗なお玉あったっけ?」
メルルが手に持ってるのは、同じく木で出来てるけど丸くて使いやすそうなお玉。
「これですか? ドロシー様はどうやらこの手の作業は得意でないとお見受けしましたので、使用していい木材をアザレアちゃんに聞いて作りましたの」
「おぉ……凄い」
おっしゃる通り、私は不器用だから助かるなぁ。
「ついでにスプーンやお皿も少々作っておきましたわ」
貴女が神か。
「おねーちゃん、メルルさんって凄いね」
「そうだね~私にはきっと真似できないよ」
素直に思ってることを本人の目の前で話した。
「いっいえ! ただ得意なだけですわっ! これで大体準備はできましたっ! ミラさんっそちらはどんな感じですのっ!?」
メルルはなぜか早口で言いながら真っ赤になって、キッチンの方へと走っていった。
「わっどうしたのです!? 顔赤いのですよ?」
「違いますのっ! なんでもないですのよっ!」
「わけがわからないのです~!」
キッチンがなんだか賑やかだなぁ。
こういうのも良いかもしれない……。
「ねぇアザレア、あの2人は好き?」
「うん、倒れたおねーちゃんを心配してくれたし、こうやっておねーちゃんの為に晩御飯作ってくれてるし……好きだよ?」
そっか、メルルにもミラにも心配かけちゃったか。
「私達の新しいお友達だよ、仲良くしようね」
「うんっ! 仲良くするの!」
「おまたせしたのです!」
声のした方を見ると、メルルが空を飛びながらお皿を持ち、そのメルルにミラがしがみついて、ふよふよとやってきた。
なかなかシュールね……。
目の前には焚き火の上で蓋をして煮込んでいるお鍋、そして丸太テーブルには食器。
メルルはそのテーブルの真ん中に大きなお皿を置いた。
「あれ? こっちは野草サラダで、これは………」
「デザートのイチジク寒天ゼリーですわ」
「えっ!?」
メルルの言葉に思わずびっくりした。
というのも、イチジクも寒天も私は持っていない。
メルルかミラのどっちかが持ってたのかな?
どういう事か分からずメルルを見ると、説明してくれた。
「イチジクはアタシが、寒天はミラさんが持ってましたの」
なるほど。
それにしてもゼリーなんて久しぶりだ、嬉しいな。
「おねーちゃん、これ食べ物なの?ツヤツヤで綺麗だねー」
ゼリーを初めて見るアザレアの顔は、もちろん可愛い。
「アザレアちゃん、ゼリーは最後に食べるのです。食後のデザートなのですよ」
「デザート?わかったー」
無人島にきてからデザートは初めてだから私も楽しみ。
「どうぞドロシー様、熱いのでお気をつけてお召し上がり下さいませ」
いつのまにかメルルが鍋奉行をやっている。
お椀を受け取り一口。
「美味しい……」
私が作っていた鍋とは大違い。
何を使ったのか気になるけど、今はただ堪能しておこう。
「よかったのですー」
「お口に合ったようでなによりですわ。はいアザレアちゃんもどうぞ」
「はーい!」
すっかり暗くなった空の下、私達4人はのんびりとした食事を楽しんだ。
食後のゼリーはというと……。
「キラキラでプルプルだぁ」
スプーンの上で揺れるゼリーを不思議そうに見つめるアザレア。
「私もフルーツゼリーというのは初めてなのです!」
ミラも感動中、海にはフルーツが無いからね。
「はいアザレア、あーんして」
「あーん♪」
ぱくっ
「どう?」
「ん〜〜〜! あまあまでチュルチュルでおいしーのー!」
その顔見てるだけで、私は幸せになれるよ、はぁはぁ。
「とっ、尊い。アタシこのまま天に召されてしまいそうですわ……」
堪らず這いつくばってプルプル震えているメルル。
その気持ちはよーく分かるよ。
「これがベストカップルというものなのですね……」
………………?
え?カップル?
食事を終えてメルルとミラが後片付けをしている。
私もやろうと思ったけど、今日のせめてもの恩返しだそうなので、甘える事にした。
ちなみに先程のメルルの呟きは、なんだか怖かったのでスルー。
さて、昼頃からバタバタして汚れてるし、せっかくだから……。
「アザレア、お風呂入ろっか?」
実は数日かけてお風呂場にあったアザレアの花蜜は木の容器に詰めて保管してある。
そしていつでも使えるようにしてあるのだ!
「えっ! お風呂できるの!? はいってみたーい!」
そんなに楽しみにしてたのね。
早速私は水場から浴槽へと水を魔法で移動させ、丁度良い具合に温めておく。
あとで水を補充しておかなきゃ。
一旦お風呂場を出ると、メルルがミラを背負ってやってきた。
「丁度よかった、貴女達もお風呂入る?」
「えっ?お風呂があるんですの!?」
「なんなのです?お風呂って」
驚くメルルとお風呂を知らないミラ。
海にそんなものがあるわけ無いということで、メルルが説明する。
「はー、地上にはそんなものがあるのですね」
「マーメイドがお湯に入って平気か分からないから、メルルが見ててくれる?一応4人で入れる広さだし、困ったら手を貸すよ」
「了解しましたわ」
さーて、無人島にきて初のお風呂ターイム♪
まだ洗う道具とか無いから、浸かってゆっくりするしか出来ないけど。
「さ、アザレアは私につかまってゆっくり入ってみて」
「う、うん……うわぁ、あったかいねー」
アザレアとミラがいるので、低温のお湯にしておいた。
私とメルルにしてもゆっくりできるし、問題ないだろう。
ちなみにメルルは、私達の横で恐る恐るミラを湯船に入れている。
それにしても2人ともよく揺れてるなぁ……。
「お風呂入ってみてどう?気持ちいい?」
私に抱きついてるアザレアは、ちょっと恥ずかしそうに……。
「うん……おねーちゃんって、柔らかいんだね」
「えっ!?ちょっ!」
ななな何いってるのこの子!
そんでもってメルルとミラ! 高速で顔をこっちに向けて涎垂らしながら凝視しないで! 怖いから!
せっかくのお風呂なのに落ち着けないよぉ……。




