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靴でも何でも舐めますから! はぁはぁ……

 

「本当にすみません。僕の不徳の致すところです」

「本音は?」

「むっちゃ心地よくて、叶うならもう1回したい!」

「このケダモノめぇ!!」


 やあ! なんと今、僕はノエルちゃんに押さえつけられながら頭を床に擦り付けている途中でね! 賢者の威厳なんてどこにも無いように感じるけれど、これはこれで美少女に組み伏せられるというのも悪くないね!


「ムー君、心の声がダダ漏れだよ!?」

「はっ、しまった! でも、事実そう思ったんだから仕方ない!」

「貴様、反省しているのか!!」


 うーん、美少女2人に責められるこの感じ。

 前世では女の子と触れ合う機会なんて無いくらいに殺伐としていた。まぁ、この場も殺伐としていなくはないけど、青春を取り逃がした独身男に最高だ。


「お願いだからムー君、しっかり謝って!」

「おのれ、本当にこの場で叩き斬ってくれようか!!」


 銀髪美少女の騎士ちゃん(仮)が腰に提げた剣の柄に手を伸ばすが、それを幼馴染みの美少女が何とかして収めようと奮闘している。


「頑張れノエルちゃん!」

「いや、私じゃなくてムー君が悪いんだからね!?」


 いやー、僕の為にその身を削るような行為をしてくれる時点で、彼女の僕への好意は決まったような物だ。全く、可愛いやつ。やはり、1人目はノエルちゃん君に決めた!


 まぁ、そろそろノエルちゃんだけに任していては力及ばない。

 僕も加勢するとしようか。


「靴でも何でもどこでも舐めますから! 許して下さい! はぁはぁ」

「ムーくぅぅぅぅぅん!! 本当に反省してるのぉ!?」


 何を失礼な。

 日本人なら土下座して相手の靴を舐めて謝意を見せるというのは常識じゃないか。それを更に、()()()()()の何でもどこでも舐めてやると言っているんだ。これ以上の誠意があるものか!


「反省の色なし、成敗だ!」

「ぎゃあ!」


 僕が1人うんうんと頷いていると、ノエルちゃんの制止を振り切った騎士ちゃんの鉄拳制裁を頭にくらう。くそ、賢者の頭を殴るとは……やりおる。


「マルディナ様、本当にすみませんでした」

「……はぁ。そなたの謝罪の意に免じて今回はこれ位にしておく。しかし、以降このような事が起きれば私は容赦なくこの男を斬る」

「すみません。今度は手順を踏んでゆっくりと、2人きりでしましょう」

「そういう問題ではない!」


 どうやら許してもらえた様子。

 ノエルちゃんの誠意のおかげで助かったみたいだ。


「しかし、女性に手を煩わせるとは……このクズめ。貴様なぞケダモノ以下だ」

「く、クズっ……! それはそれでそそる物が……」

「それ以上罪を重ねないで! 私が謝ることになるんだから!」


 うむ、幼馴染みの切なる願いを聞かない訳にはいかないね。

 こう見えても僕は賢者なんだから、寛大な心で周りの人々の意見を取り入れなければね。


「そなたもよく、こんな男と一緒にいられるな」

「悪い人じゃないんですよ? ただ、ちょっと拗らせてるだけで……」


 ようやく気分が落ち着いた様子の騎士ちゃん、いやマルディナちゃんはノエルちゃんの隣の席に腰を下ろし、そのまま僕の話で盛り上がり始めた。


 なんだなんだ、隣に当人がいるって言うのに僕のどこが好きみたいな話かな?


「急に私の、その……か、下腹部に抱きついてきたと思ったら、匂いを嗅ぎ始めるものだから怖くて……」

「分かります。私も何度同じような事をされたか。その度に私は頬に1発食らわせていますけどね」


 おおっと、何だか荒々しい会話をしているぞ?

 女の子がそんな事を言っていたら、メッ、ですよ?


「「キモい」」

「僕は生まれる所を間違えたかもしれない」


 美少女2人に暴言を吐かれて意気消沈するが、すぐに考えを改める。そうだ! これは素直になれない彼女たちなりの愛情表現なのだろう。そうでなければこの僕に、''キモい''だなんて言葉を浴びせられる訳がない。


「また都合の良い解釈してるよ。ムー君は昔からそう」

「ノエルも苦労しているのだな」


 ……何も聞こえないったら聞こえない!


 そんなこんなで式が始まるまで、何とかマルディナちゃんとも打ち解けて彼女の事を聞かせてもらった。

 何でも、有名な貴族の出であり、父は騎士団副団長、兄は近衛隊で活躍しているという、れっきとした騎士ちゃんだった。


「私も父上や兄上のように、王のお力になる為にこの剣を捧げるのだ。そしてここで勉強して、兄上と同じ近衛隊に入るのだ!」

「マルディナなら出来ますよ! 平民の私たちもあなたのご活躍は耳にしていますから!」


 いつの間にかノエルちゃんまで呼び捨てにする仲になっている。美少女のコミュ力恐ろしや。


「ノエルはここを卒業したらどうするんだ?」

「えーっと、出来れば魔法師団に入りたいなぁと。夢のまた夢ですけどね」

「そんな事ないさ。隣のケダモノはさておき、そなたなら十分にやっていけるだろう」


 僕は変わらずケダモノ呼びのマルディナちゃん。

 まぁ、あんな事されたんだからしょうがないか。


 ……いや、これは名前で呼ぶのが恥ずかしいから敢えてケダモノ呼びしているんじゃないか? そうだったらマルディナちゃん、めちゃくちゃ可愛いじゃん! 毅然としているけれど、中身は乙女なんだね!


 そんな風に考えていると、またもやノエルちゃんとマルディナちゃんから冷たい視線が送られる。僕の考えが読めるなんて、2人はエスパーかな?


 しょうもない事を思っていると、突然アナウンスが場内に響く。


「もうすぐ入学式が始まります。新入生の皆さんは席について、静かに待っていてください」


 ……あ、トイレ行き損ねたわ。

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