表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

入学式でやらかす

 

「珍しく早く起きれたみたいだね」

「今日くらいは流石に寝坊できないよ」


 ノエルちゃんと2人並んで新しい学舎へと向かう道すがら、そんな事を言われる。しかし、本日は待ちにまったチーレム無双生活第1日目! そんな晴れ舞台の始まりの為に目覚まし魔法をかけておいたのだ!


「ムー君ってそういう変な魔法だけは得意だったよね」

「変な魔法とは人聞きの悪い! 真の賢者どはどんな魔法も扱えて初めて名乗ることが出来るのだよ」

「はいはい。ほら、そんな事言ってる間にもう着いたよ」

「めっちゃ軽く流されとるやん……」


 辛辣なノエルちゃんの言葉にちょっとの悲しさを覚えつつも、見えてきたのは堂々と建つ魔法使い育成機関の''ウェントラ魔法学園''だ。ここでは、数多くの優秀な魔法使いを排出してきており、卒業生たちはほとんどが第一線で活躍中である。しかし、そんな優秀なやつらが集まるとはいえ、この僕には勝てない。


 な・ぜ・な・ら!


「このサクラダ・ムモンこそが最強なのだから!」

「ムー君が最近、痛キャラになってきて幼馴染みとして本当に困るよ……」


 ノエルちゃん言い過ぎや、おいちゃんそろそろ泣いちゃうよ?


「そんな悲しい顔しないで、ほら行こっ?」


 下から覗き込むように、上目遣いでこちらを見てくる幼馴染みの美少女に、心をクリーンヒットされる僕。素直に、手を引かれていった。


 しばらく歩くと受付の看板を見つけて、入学式が行われる会場へと無事に入場する。


「わー! 結構人いるね!」

「でもノエルちゃん。ここにいる人はほとんどがモブにしか過ぎないんだよ。僕を引き立てるだけのね!」

「どこからそんな自信が出てくるのか分からないけど、滅多な事は言ったらメッ、だよ?」


 お、おっふ。

 またもや、メッ、頂きました。ありがとうございます!


 しかし、ノエルちゃんに窘められてもこのニヤニヤは止まらない。なんたって、もう少しで僕のチーレム無双生活が始まるんだからね。心が震えるよ!


「ふっふっふ……!」

「ムー君が悪い顔してるよ……! 絶対に碌でもない事考えてる」


 隣でまたもや非難を浴びるが、僕には崇高な夢があるんだ。

 そう! 今度こそ金髪お姉さんのおっぱいをっ……。


「だらしない顔しないで、早くあの席に座ろ」

「あ、そっすね。行きましょうか」


 この僕の溢れる闘気をものともしないノエルちゃんの肝っ玉に驚愕しつつ、手を引かれるままに前の席の方へと向かう。


「えー、前はやだよ。後ろがいい」

「駄々こねないの。前の方が先生の顔もよく見えるし、何より心象が良い風に見えるでしょ?」

「そんなの、授業が始まったら実力でいくらでも見せつけられるじゃん」

「そうかもしれないけど、何事もコツコツとだよ。私は成績優秀を目指して、こういう細かな所から重ねていくの!」


 そういうものかね。

 まぁ、ただ自己顕示欲が強いだけなのかもしれないけれど、いい心がけだとは思う。その内を出さなければ、ね。


 前世の記憶が蘇るまでの今生の僕の記憶を漁ると、ノエルちゃんはどうも計算が得意な女の子のようなのだ。僕も気を付けないと、いつ手のひらで転がされることになるか……!ノエルちゃん、おそろしい娘っ!


 「あ、僕トイレ」

 「もう、女子の前なんだから少しは気を使って言葉を選んでよ!」

 「ごめんごめん。ちょっと行ってくるね」


 急にもよおした僕は、座ったばかりの席を立ちトイレへと向かおうとする。が、その矢先に椅子の脚に躓いてしまい、体が傾いてしまう。


 賢者の僕がまさか、こんな事で恥を晒してしまうのか!

 そう思ったのも束の間、床が眼前へと迫ってくる。こういう時に便利な魔法があれば良いのになぁとつくづく思う。帰ったら早速、開発してみよう。


 そんなことを考えながら目を閉じていたが、自分の顔に来るはずの衝撃がいつまで待ってもこない。それどころか、何か暖かくて柔らかい。そしていい匂いがする。


 すー。くんかくんか。


 「……っ!! ぶ、無礼者! いきなり顔を埋めて来たかと思いきや、体臭を嗅いでくるとは……! このケダモノぉ!」

 「ギョバッハァァア!?」


 気づけば、およそ悲鳴とも言えない謎の奇声を発しながら宙を舞う自分がいる。視界には、慌てたような幼馴染みの顔と、与えられた羞恥に怒り、顔を赤くする気高き女性の顔が!


 「ま、マルディナ様! 申し訳ありません! 私の幼馴染みが!」

 「いや、そなたは何も悪くは無い。悪いのは全てこのケダモノだ! この場で成敗してくれる!」


 そう僕に吐き捨てるのは、気品に溢れながらも、武人に備わっている雰囲気を放つ銀髪美少女。そんな彼女の怒りを鎮めようと、ノエルちゃんが必死に僕を庇ってくれるが、こんな美少女の成敗をくらえるのならば、それもありかもしれない……。


 「ほら、ムー君からも! ごめんなさい、この人もわざとじゃないんです、許して下さい!」

 「ヒデブっ!?」


 そう言って僕の首根っこを掴んで土下座させるノエルちゃん。

 今日は忙しい日になりそう。ね、ムモ太郎?


 てけっ!


読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ