002/或る宝石の化身の『再会』
【キーワード】異世界/人外/異世界転生?/異世界転移
わたくし達は人間でした。大半の者は異世界の出身です。
わたくし達の『器』も、元はこの世界の人間でした。
でも今は違います。
化け物のせいで宝石の原石と化した器。石として価値があるため、悪党により狙われている器。そんな危機から守るべく、わたくし達の魂が器に押し込められたのです。
封じられた魂達は、石の肉体を繰る事に長けています。髪や瞳が宝石の色に染まる故に、宝石の化身だのと呼ばれて。
元の世界でのわたくしは、記憶力に優れ、体に爆弾を抱えてはいたものの、ただの人でした。短い生を終えました。先天的に脆い肉体では、運命を凌駕するのは到底不可能だったのです。
ただ一つあったのは、恋の奇跡。大人になれないと散々言われていたのに成人となり、愛しい者との間に子を……。
産み出した宝のためにも足掻いたけれど、それ以上は叶いませんでした。そんな人生だったのです。
異世界に魂だけ喚ばれて硬質な肉体に封じられ、わたくしは宝石の化身と化しました。
肉体の元の主は、魂の力が弱すぎて、石と化した肉体を自力で操れないそうです。
今のわたくしになって、記憶力が更に強化されてしまいました。見聞きしたことを文字通り一切忘れない、そんな類のものです。わたくしを喚んだ者で、とある王宮の重鎮いわく、元来魂が持っていた能力なのだと。
生前の肉体では余り発揮できなかったのだろうと。
弱いと思っていた肉体は、魔力抵抗が大きすぎてわたくしの魂を上手く納められないものだったようです。
ともあれ、発揮された能力は、異世界での生活において大きな助けになりました。それと同時に、わたくしを著しく蝕みました。
王宮の歴史に触れて抱いたあらゆる感情が、蓄積されて増幅されていくのです。この上なく苦痛でした。
そうして、この世界で八十年。厳密には八十二年と四百二十一日。かつての世界と、時間感覚が何もかも異なっているものの、陽が沈んだ回数だけは忘れようがありません。算出は容易なのです。
わたくしにもう一度、奇跡という来訪者が。あの瞬間を何と表現したらいいのか。膨大な語彙は、ものの役にも立ちません。使い古された陳腐な表現はしたくなくて悩みます。
時折、この世界に迷い込む異世界来訪者。わたくしのように魂だけではなく、肉体ごとの。そこに懐かしい顔があったのです。
面差しは大分変わりました。けれども、生気あふれる眼光と、深い傷跡は健在で、すぐにわかりました。わたくしの死によって別れた、あの男性だと。幸せの絶頂を与えてくれた彼なのだと。
不可能だと分かっていたけれど、深く再会を願っていました。
夢か現か。痛覚の失せた体による判別は困難でした。
わたくしは、元の世界に戻されるまで、彼の世話をしました。接触は最低限。名乗り出るつもりはありません。
異世界では突飛すぎる現実で、彼の老体に負担をかけたくなかったのです。彼の妻は彼岸の人なのですから。
寡黙ですがぽつぽつと話してくれました。曾孫までいると知り、胸が詰まりました。
送還の準備が整った頃、彼は帰郷を拒みました。曾孫たちと会う余生を過ごしていたのに、一体……?
飛び込んだのは、ずっと呼ばれることのなかった、かつての名前。
すっかり皺くちゃになったあなたが、嗄れながらも放ち、わたくしの心が強く揺さぶられました。
──また一から始めましょう。
XXXさんには「私達は人間でした」で始まり、「また一から始めよう」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり
https://shindanmaker.com/801664