1-1 よろしい、ならば転生だ!――ただし〇〇〇でな!
というわけで記念すべき一話目です。
十中八九後々に風景描写や文の変更などを行いますがご了承下さい。
とりあえず・・・二日に一回更新目指して頑張るぞぉーう!(フラグ
修学旅行。
それは数ある学校行事の中でも多くの学生が長い学校生活の中で最も楽しみにしていると言っても過言ではない行事の一つだろう。
一応読んで字が如く、元々の目的としては学を修めるための旅行であり、同時に学校という枠を外した際の集団行動や時間厳守等に関する約束事がきちんと守れるか否かというのが試される場でもある。
だが等の学生達はそんな漠然とした目的よりもただ単純に『某テーマパークでネズミと写真を!!行くぜ野郎ども、ネズミのついでに犬とアヒルも狩ってやるぜヒャッハーッ』といった感覚で行くものが多いだろう。
まぁ行く場所それぞれで抱く感覚に差異はあれど大体はこんなものだ。
つまりは完全に慰安旅行気分である。
そしてそんな浮かれに浮かれまくった学生、というのは倉敷 遥の属している白崎高校の愛すべき2- B生徒も同じであった。
「なあ、遥。今日ってでけぇ露天風呂つきのホテルに泊まるんだよな?」
「パンフ見る限りそうみたいだなあ。それがどうかしたよ?」
「おいおい、皆まで言わせるなよ・・・わかってんるだろ?」
本当、お主も悪よのう。
言外にそう言いつつ、ニヤリと笑った生徒―――本田 健一は隣に座った遥の肩をポンポンと叩く。
そう、今現在修学旅行へと出かけている白崎高校の2年生達は皆、クラス事に別れバスに乗っての移動の真っただ中であった。
席順は通路を挟んで右側が男子、左側が女子と別れてはいるものの、基本的にどう座ろうが自由であったため遥は小学校からの付き合いである健一と隣同士で座っていた。
他を見渡してみても基本的には皆仲の良いグループで固まって座っているため遥や健一達が特別そうしているというわけではないだろう。
今日はまだ修学旅行一日目であり、まずは一泊するためのホテルへと向かっている最中なのだが健一の言う通りどうやらこのホテルの目玉は大浴場らしく遥の手にしたパンフレットにも写真付きで大きく掲載されていた。
風呂好きな遥としてはかなり楽しみである事間違いなしな情報であったが自分の隣に座る健一も風呂好きだったけか?と首を傾げる。
「いや分からねぇよ・・・というかお前ってそんな露天風呂好きだったっけ?」
「え、本当分かんねぇの?いや露天風呂は好きだけど、そうじゃなくてさ、ほら、修学旅行の露天風呂、隣には女子、な?」
「あぁ・・・なる程な」
そこまで説明され遥はようやく健一が何を言いたいかを悟った。
要は覗きを慣行したいという事なのだろう。
確かに修学旅行のお風呂時間といえば女子風呂への覗きが恒例と化している現代だ。(偏見)
ソースは健一に貸してもらったライトノベルとかいう小説やアニメからだが殆どの作品に似たような描写が出ている事からまず間違いないだろうと信じて疑わない遥。
そして尚且つ健一の表情が過去今までに無いほど真剣なものだと気付いた遥は静かに健一の目を見た。
お前、本気か?と。
それはここでその後の事を考え保身に走るようであれば何としてでもお前を止めるぞ?という意を込めての問いかけだ。
確かに、アニメや小説の登場人物たちは皆覗きという名の戦争をしていた。
だが、どの物語でもその後に待っていたのは大抵女子にバレてお仕置きされるか教師にバレて怒られるかという生き地獄だ。
かくいう自分達もバレればまず間違いなく女子からの壮絶なバッシング後、教師陣によるお説教という魔フルコースが待っていることだろう。
だから生半可な気持ちで行くくらいならば友として、一人の男としてお前を止めて見せる。そう、遥は決めていた。
しかし、返ってきたのは保身やその後の事などまるで考えていない・・・ただただ純粋な男の目だった。
少し頑張れば桃源郷に辿り着けるというのに・・・何もしないで終わる事なんて出来ない。
いや、したくない。
ここで覗きをしないのはむしろ女子に対して失礼なのではないか?
もはや、覗くのが正しいマナーというものだろう!紳士として、そして男として女子に恥をかかすなッッ!!と。
そんな無駄としか思えない熱意を健一の瞳から確かに感じた遥は一つ納得したように頷くと無言で健一の前へと手を差し出す。
遥とて立派な男子である。
例え背が160センチ少ししかなくとも。
例え周りから女顔だと言われようが、え?変声期過ぎてるのそれ?と言われるくらいに声が高かろうが生物学上は間違いなく男子なのである。
なので男の子としてのそれ相応の感情は持ち合わせていた。
ガシッと音がする程しっかりと遥の手を握った健一は「お前が俺の親友で・・・よかったぜ」と実に男らしい笑みを浮かべる。
そしてふと遥が視線を感じて周囲を見渡してみれば右側の席―――つまりは男子達一同が皆覚悟を決めた戦士のような顔してこちらを見ていた。
前方や後方に座っている生徒達も体勢的にキツイだろうに器用に身を乗り出してまでこちらを見ていたのだ。
その瞬間、遥は理解した。
こいつらは皆、同志なのだ、と。
今、このクラスの男子達は心が一つになっていた。
全ては夜、風呂の時間に桃源郷を目指すために。
案の定健一なんかは「へっ、お前ら・・・揃いも揃ってバカばっかかよ・・・けど、そんなバカは俺ぁ好きだぜ。いいさ、やってやろうじゃねぇか!!」などと叫んでいる。
そんな光景を見た遥は思った。
うん、たまにはこういうバカをやるのもいいかもしれない、と。
この2-Bというクラスは本当に一年しか一緒にいないのか?と疑いたくなるほど皆とても仲が良いクラスなのだ。
実は男らしい笑みを浮かべた男子の中には「おい、遥ってそもそも男子風呂入れんのか?」とか「あいつ、男、なんだよな?」とかいう会話が飛び交っていたりするのだが席が離れているため肝心の遥には聞こえていなかった。
「さて、ホテルまで後どれくらッ―――」
遥が未だに一人騒ぐ健一やざわつく男子達を華麗にスルーしつつ手にしていた腕時計に目を移したその時、不意にバスが揺れ始めた。
その揺れはガクガクと道無き道を走っているかのような振動でありバスの中にいたクラスメイト達は先程の楽しかった雰囲気を一変させ何事だと揃いも揃って慌てだす。
そしてその中の誰かが外の光景を見たのだろう。
バスの中に誰かの叫び声が響き渡った。
「おい・・・俺ら、このままじゃガードレールに突っこむぞ!!」
そう、突然暴走し始めたバスは何を思ったかガードレールの方へ一直線に走り始めていたのだ。
ちなみにそのガードレールの奥は見事なまでの崖であり、このままバスが落ちれば悲惨な事になるだろう。
丁度、本日泊まるはずだったホテルが山奥の方にあったので山道を上っている最中だったのだが、今はそれが仇となったのだ。
誰かが運転席へいってハンドルを取れだのブレーキを踏めだのと騒いでいたが―――その努力も虚しくかなりのスピードを維持したまま、バスはガードレールの方へと刻一刻と近づいていく。
「・・・やべっもう間に合わないんじゃッ」
誰かが呟いたその言葉と同時にドンッという音が鳴った。
そしてそのすぐ後に軽い衝撃がバス内を襲う。
危惧していた通りバスがガードレールを突き破ったのだ。
その瞬間、2-Bの生徒達を浮遊感が包み―――生徒たちの意識は闇へと飲まれていったのだった。
♢♢♢
最初に感じたのは身体を襲う鈍い痛みだった。
続いてどこか湿ったような土の臭いを感じ、そこで遥は自分がまだ生きている事に気が付いた。
「いっつ・・・ッ」
僅かに身体を動かしただけでも感じる痛みに呻きつつ、遥はゆっくりと瞼を開ける。
するとそこには昏い空とそこに広がる満天の星空があった。
確かバスに乗っている時は朝だった筈なので今が何時かは分からないが少なくとも半日は意識を失っていた事になるだろう。
チラリと自らの腕を見ればしていた筈な腕時計が無くなっていたため正確な時間は知る術もないがそこまで空腹感などを覚えていない事から数日意識を失っていたという事はなさそうである。
そして空が見える事によりどうやら自分は仰向けに倒れているらしいと改めて自分の状態を確認した遥はなるべく体に衝撃がいかないようにゆっくりと身を起こした。
「・・・ってぇ」
相変わらず体のあちこちは痛むのの、動かない部位はなさそうなので骨には異常はなさそうだ。
不幸中の幸いといったところだろう。
こんな状況下で骨でも折れていたらと思うとゾッとする遥だったが、ふと周りを見渡しある事に気づく。
「あれ、他の皆んなは・・・?それにバスもない・・・」
そう、遥の記憶では確かにバスに乗ったまま崖から落ちた筈なのだが辺りを見渡してみてもそれらしきものがない。
それどころか自分以外に人一人見当たらないのだ。
あるのは無造作に生えている木々や草ばかり。
恐らく、あの崖の下は森だったのだろう。
普通に考えればあれだけの高さからバスごと落ちて助かるとは考えられないが、辺りの様子を見るに落ちる途中に幸運にも枝や葉に引っかかり落下の衝撃が和らいだのかもしれない。
そのお陰で命が助かった、といったところだろうか?
それにしても骨折一つないというのは少し出来過ぎな気もするが。
「まぁ俺の事はいいとして。他の皆んなの事だよな・・・」
取り敢えず自分の体は異常ないみたいだし今は皆んなの心配をするか、と考えた遥だったが周りに誰もいないこの状況に眉を顰める。
それは自分一人しかいないという不安や他のみんなの心配をしてのものだったが変に冷静な遥はふと疑問に思ったのだ。
自分一人外に放り出された可能性もあるけれど・・・それにしてもここまで事故に関してなんの痕跡もないというのは流石におかしくないか?と。
そういった事故に関する事象のプロフェッショナルでもない遥には詳しい事は分からないが少なくとも、遥自身きちんとシートベルトはしていたし他の皆んなもしていた筈だ。
だとすれば自分一人そこまで離れた位置に放り出されたとは考えにくいのだ。
「・・・まぁ考えても分からないし、取り敢えず適当に歩き回ってみるか」
ある程度まで考えた遥だったが分からないものは幾ら考えたところで分からない。
だったらここでジッとしているよりも歩き回って実際に探した方が良いだろうと結論付けた遥は早速適当な方向を決め歩き始めた。
実はこうして森に遭難した場合は下手に動かずにその場で助けを待つというのがセオリーなのだが当然そんな知識を遥が持っている筈もなく、他の皆んなを探すために暗い森の中へと入って行くのだった。
―――この時、痛む体と共に改めて自分の身体を見ていればいち早く異変に気付いていたのかもしれない。
もしくは呟いていた独り言に耳を澄ませていればその声にある僅かな違和感に気付けたのかもしれない。
だが思考自体は冷静に思えた遥もやはり急な出来事に動揺していたのか最後の最後まで気付かなかったのだ。
そう、もはや自分の身体が180度変わっている事に―――
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あぁ、仕事ほっぽりだして小説書いてたいなぁ。
社畜はつらいじぇ・・・。