07-欲求
「他人事って、あの他人事なのかな?」
「他人事のように振る舞うという他人事だと思いますが…」
自分の事なのに他人の事のように…ってことだから、他人の所為ってことじゃ無いってことだ。
私の考えは違ったらしい。
「しかし、お嬢様、このあまり首を突っ込まない方がいいかも知れません」
「なんで?」
「野口英世という人物をご存知ですよね?」
「うん。知ってる」
何と無く察した。野口英世…そういうこと。
「黄熱病の研究をして黄熱病に冒されて死んだ人物です」
「つまり、センマが言いたいのは、私が壊れるのが嫌なんでしょ?」
「はい。そうです」
「心配、してくれる?」
「いくらでもします」
ふと思った。なんでセンマはこんなに優しくしてくれるのだろう? 仕事だからか? それとも…
「ねえ、センマ」
「なんでしょう?」
「なんでセンマは、私にそんなに優しいの?」
「……それはですね。仕事だからですよ。それとお嬢様だからです」
「ふぅーん」
「お嬢様、どうかされましたか?」
「いや、なんにも。それよりも、他人事症候群について、ネットで調べてみましょう。案外、あっさりと分かってしまうかもしれないわね」
そう言って、部屋のパソコンの電源を付ける。
「あの、お言葉ですがお嬢様」
「どうかした?」
「主様が現在ネット回線を外しておられますので、インターネットに繋ぐことは無理かと…」
「おとうさーん! なにやってんだよー!」
ネット無いとか…。この世の終わりだ…。
「お嬢様、それは引きこもりの台詞でございます」
「なっ! 心の内が読まれてる!?」
「いえ、口に出しておられましたよ」
それもそれで嫌だな…。と今度は確実に心の中だけで思った。
「さて、と、なら、外で聞くしかないわね」
それが如何程に面倒なことか予想はしていた。それでも私は情報が欲しかったのだ。
「センマ、行こ?」
「分かりました」
私達は、今しがた帰って来たばかりの家を鍵を閉めて、出ていった。