02-刺激
7月16日。どうにも暑い。私こと笹峰ユナはこの暑い炎天下の中、学校へと向かっていた。
「もう、どうなってるのよ。この暑さは」
「私が察するに、地球温暖化の影響ではないかと思われます」
私が口を開くと後ろをついてきている執事のセンマが応えてくれる。
「そんなの分かってんのよ。私は…まあ、いいわ」
言おうとしたことをグッと飲み込んだ。
「そういえば、お嬢様、よろしいですか?」
「なに?」
「他人事症候群、というものをご存知ですか?」
「知らない。なによそれ」
「なんでも最近の若者に多い病気のようで精神病ですが、とても強力で現在の医学技術では到底、治療は無理だそうです」
そんなものがあったなんて知らなかった。新聞もテレビも見ないし、ネットもしないから、情報には疎い。
「それはそうと、お嬢様」
「次は何?」
「いえ、お嬢様は家に課題を忘れております」
………え?
「はあ!?」
センマは煩いと言いたげな表情をしながら、耳を塞ぐ動作をした。本当にわざとらしくてイラつく。そして、課題は言われたとおり鞄には入っていない!
「センマ! 取り帰って!」
「戻ってくるのが放課後でよろしければ」
「よろしいわけないでしょ! あーもう! 分かったわよ! 一緒に取りに帰るわよ!」
「かしこまりました」
ふと、腕時計を見ると7時20分を指していた。あと約1時間もある。うん。急げばなんとかなる時間だ。
「それでは、帰りましょうお嬢様」
「うん。帰ろっか」
センマの冷静と言うか冷酷と言うか、そんな態度に幾分か頭が冷やされたらしい。呼吸が整っていて、だいぶ落ち着いた。