470,大体父親が一番悪い。 S
エクエスリリウム四兄弟のまとめ
・先妻の子である長子、愛人の子である次子、後妻の子である第三子と第四子。後妻が嫁いでくる前の段階で先妻も愛人も死んでいる。というよりも先妻が愛人を呪った結果、諸共に死んだような感じ。先妻は政略結婚。後妻は子供には母親が必要だという名目
・次子がめちゃくちゃハイスぺなので長子はコンプレックスを拗らせている。異性だったら近親相姦手籠めコースになっていた。正直同性でもルートによっては危ういかもしれない。どうあがいても無視できない相手なので。この一家概ね面食いだし。まあ面が普通でも仲良くはできないだろうが
・長子は幼い頃から当然のように己は父の後を継いで騎士団長になるものと思って育ち育てられた。それ以外の選択肢はよぎる事さえなかった。それが揺らいだのは、母を失った次子が屋敷に引き取られてきたころ。比較対象ができてしまった。唯一無二だと思っていたその存在に、代わりの存在があるのだと。しかもそれが己と遜色ない、否、より優秀かもしれないものだった。だから、根底には恐れがあった。
・次子は騎士に憧れた。騎士の家に引き取られ、己も立派な騎士になろうと思い努力した。だが、それは望まれていないことなのだと気付いてしまった。己の資質と、望みと、周囲の求めるもの。それらの不一致に悩み、求められるように振る舞うことに決めた。そうすれば、少なくとも己の居場所だけは確保できるものだと思ったから。それが己の望み通りのものではないとしても。それが一番、平和に皆過ごせると考えたから。
・第三子は上二人より十歳ほど年下に生まれた。物心ついた時には上二人が優秀な騎士見習いであると評判だった。己も兄たちのように優れた騎士になりたいと憧れ、けれど女であったし、剣を扱う才はなかったために挫折した。そして兄らが妬ましくなった。自分にできないことをすいすいやってのける兄らが羨ましかった。特に実力はあるのに不真面目な次子が妬ましくって嫌いだった。その苦悩に気付ける聡さはなかった。
・第四子は普通だったので蚊帳の外になった。普通というのは平凡ということではない。何事もそつなくこなし、偶に失敗や悩み事があったりもするけれど、その年代の人間の平均的を逸するものではなかった。兄らの確執や姉の鬱屈に気付くこともない程度には鈍感で、健全で、家族を慕っていた。容姿も父似の平均よりやや整ったイケメン。とにかく普通。友人も多くいる。一周回ってモブい。ある意味この兄弟の清涼剤担当。
・次子が第三子に格別の情を抱いてしまったのは、なんてことはない。ただ、彼女の求める彼の姿というのが、彼のそうありたいというものだったから。本当はそう在りたい姿を、あなたはそうあるべきだと言われたので、嬉しかった。そうするには最早色々なしがらみに雁字搦めにされて難しかったのだけれど。ちゃらんぽらんに振る舞っていても、彼は根が真面目なので鍛錬を怠っているわけではなかった。人前ではそれを見せないようにしていたけれど。
・その格別の情が、兄妹の親愛の情とズレたものになってしまったのは。それも十歳も年下の妹への恋心へと変質してしまったのは、ある意味で呪いみたいなものだったのかもしれなかった。深い愛にはいつの間にか情欲が付随し、罪悪感を伴うようになった。彼は当然ながらそれを実らせるつもりはなかった。騎士としてそれは間違ったことだから。腹違いとはいえ血の繋がった妹なのだから。だが、ある日、酒によってそれを踏み外しかけた。
・第三子は兄のそんな秘めた玖能など一切気付いていなかった。けれど、深い口付けと、その瞳の中の熱情に気付いて、何も思わないわけがなかった。この男は己を女として愛しているのだということを無意識に感じとっていた。その意味を問いただす前に兄は酔って眠ってしまった挙句、翌朝目覚めた時にはいなくなっていて、そのまま出奔してしまったので怒りに転化してしまったが。…実は満更でもなかったのだが。
・次子は酔って記憶をなくすタイプではないので、自分のやらかしを全て覚えていた。年頃の娘に強引に口付けた上に同衾するなど、騎士として許されざることだった。それに、このままでは秘めた気持ちが白日の下にさらされることになる。罪を犯し、犯させることになる。それは不幸しか生まないことであると彼は思った。だから、二度と過ちを犯さないために妹と距離をとった。それが彼の愛であったゆえに。
・長子は下二人のことは然程コンプレックスを抱くことなく可愛がれた。末弟は特に無邪気に慕われて次代であろうしわだかまりもなかった。顔が整っている事に対する男としての嫉妬みたいなものは多少あったが。次子に対するものほどではない。第三子はある意味妹ということで元よりカウント外扱いだった。女が騎士になるためには本人の情熱と能力と周囲の助力の全てが揃わなければならない。騎士団長は余程の女傑でなければ誰も望まないだろう。妹には騎士の才はなかった。美しい娘に育ったのだから、良い婿を探してやらねばとは思っていた。
・次子と第三子が生きて再会していたら近親相姦ガチ√が開通していた。己を深く愛し情熱的な口付けをしたにも関わらず不誠実にも逃げ出した兄を妹は真正面から追い詰めて問い詰めて、白状させたら、自分からキスして押し倒すので。兄だから対象外にしていただけで、美しい兄のことを魅力的な男であると妹は知っているので。二人は見目に共通点は一切ない。余所の土地に行けば兄妹なのだと知られず夫婦になることもできるだろう