246、猫と劇作家 S
猫市長が子猫の頃の話
「おい、猫よ…子猫。お前、うちの子にならないか」
その目をじっと見つめ返すと、男はふっと薄く笑みを浮かべた。
「一人で生きるのは寂しい。お前が我輩の家族になってくれると嬉しいのだが」
私は、男をもう一度じっと見て、
猫:ただの子猫。
飼い猫になってからは首輪代わりに襟付きの蝶ネクタイを貰う。
男:おっさん。劇作家。
猫の飼い主だが猫に名前をつけていない。子猫、猫と呼ぶ。
気難しそうだが、意外とぽやぽやしている。マイペース。律儀。人とタイミングや呼吸を合わせる気がない。協調性皆無。自分のペースを崩される事を嫌う。人嫌いと評判。
悲劇から喜劇まで何でも書く。寧ろ気が向いたものを書く。
猫には微笑する事もあるが、ムスッとした顔をしている事が多い。
・男やもめ。子供たちが自立するかしないか位で嫁が病死し、それ以来一人で暮らしている。子供たちとは、あまり連絡を取っていない。
・孤独死するんじゃないかと子供たちに心配されているが、同居する気はない。
・割とセンシティブな方で、偶に"向こう側"の世界を垣間見る。でもどうもしない。子供の頃からの事だが、死に触れるたびにより鋭敏になっている気がする。
・猫に名前をつけないのは、彼なりの思いがあっての事ではあるらしい。口には出さないが。猫と他の猫の呼び方は微妙に違う。微妙に。
・猫の鳴き真似が地味にうまい。猫が間違えるレベル。
女性:隣人。男の作品のファン。お人好し。
柔らかい雰囲気を持った女性。まだ年若く、結婚はしていないが恋人はいるらしい。美人。
動物は好きなのだが、獣毛アレルギーがあるらしく、あまり近づけない。体がかゆくなるらしい。
青年:新聞記者。
男の子供の同級生で、子供の頃からの知り合い。
新しもの好きの伊達男。爽やか系好青年だが、男には悪戯小僧だった事を知られているため、クソガキ扱いされている。情報収集能力が高い。
演出家:男の腐れ縁の友人。
よくタッグを組み、気心は知れているのだが、仲良いかっていうとよくわからない。あくまでも腐れ縁。
派手好き。恰幅が良い。よく通る声の持ち主で、偶に声楽家と間違われる。
プリマ:歌劇のプリマドンナ。優秀な歌い手。美女。
幼い頃、男の書いた戯曲の演劇を見て、それに憧れて歌い手になった。努力家。天才というよりは秀才だが、様々な事に対する認識能力が高い。真面目。