21、自分の寿命がはっきり判っている世界 W
腕に表示されている数字。それが俺の命の残量だ。
この世界では、その生き物の寿命は生まれた時から判っている。皆、体のどこかに(大抵は四肢。たまに目、胸部、顔)命の残量を示す数字が書かれているからだ。それは、時を刻むにつれ、減っていく。そして、零になった時、その生き物は自然に死ぬのだ。もちろん、例えば、誰かに危害を加えられたり、大きな怪我をしたりすれば”寿命”が尽きていなくても死ぬ事はある。また、その場合、助かっても寿命が縮んだりする。文字通り、”命が縮む”思いをするわけだ。
”寿命”は基本的に増やすことはできない。だが、例外もある。例えば、生まれつき大きな病を持っていた者がその病を克服すればその分・・・病で減っていた分の寿命が追加される。・・・外法だが、他人の命を吸い取って自分の命にする、などという事をする者もいるらしい。外法だし、外道だし、で実行する奴はまともな奴ではないだろう。ただ、逆に、自分の命を相手に分け与える、などというものもあるらしい。
”寿命”は種族によって、ある程度決まっている。人間だったらせいぜい100年前後。竜は300~500年、竜は1000年以上。犬猫は20年ぐらい、ネズミは2年程度、といった具合だ。ハーフだったりすると、妙に寿命が長かったり短かったりするという話もある。だが、母親の種族に近くなるらしい。
数字は古イゼラ文字で書かれている。見た目は、知らぬものが見れば、何かの刺青のようにみえる・・・らしい。古イゼラ文字はこの世界でもっとも原始的且つ美しい文字だと俺は思っている。表現のシンプルさ故、逆に読みづらいらしいが。
”命”を消費して戦うボルテ式武術やリウス魔術は強力だが、自らの命を文字通り”武器にしている”わけだから、敬遠する者が多い。少なくとも、平凡かつ平和に生きていくうえでは必要の無い技だ。だが、そういった技術を使っても強くなりたい者がいるのもまた事実で、戦うことを生業にしている者だけに限定すれば、その技術を身につけているものは少なくない。