20、孤高の魔王と孤高の勇者 W
それは孤高同士、戦うことを宿命付けられた二人のお話。
魔王。それは魔族を率いる存在。力こそが全ての世界で、ただ一人勝ち残った者。全ての魔族はその強さの下にひれ伏し、従う。強さこそが魔王が魔王たる証。故に魔王は常に勝ち続けなければならない。
勇者。世界のバランスが崩れた時、それを正すために生み出される存在。親兄弟も子も友も無く、ただ、戦うために、バランスを本来のものに戻すためだけにある存在。勇者にあるのはただその使命のみで、目的が達せられるまでは死ぬことも許されないが、達せられた時には、新たなゆがみを生み出さぬため、勇者自身も消滅する。
最強であり続けるため、孤高である存在と、自らが独りである事も自覚せずに孤高であり続ける存在。その二つが出会ったとき引き起こされたのは一つの戦いだった。だが、一度目の邂逅は決着の前に終わってしまった。二人のぶつかり合いに世界のほうが耐え切れなかったのだ。二つの強大な力がぶつかりあう事で生まれた衝撃とゆがみは、さらなる戦いを呼んだ。・・・それが俗に言う、聖魔大戦の始まりである。
衝撃が地を割り、ゆがみは異形の生物を生み出した。魔王の力が生み出した異形”魔獣”と、勇者の力が生み出した異形”聖獣”は互いにぶつかり合い、さらに世界を歪めていった。ゆがみは新たな魔獣と聖獣を生み出し、その異形がさらにぶつかり合ってゆがみを起こし・・・その連鎖が全てを歪めていった。
一年が過ぎた頃、世界は完全に歪み、変質していた。世界はゆがみと衝撃によって分断され、容易には行き来ができなくなっていた。
孤高は自らの孤高たる所以を証明するため、再びぶつかろうとしていた。
分断された世界を行き来するためには異形の力を借りる必要がある。
また、今のままでは決着がつかないので、より、強くなる必要がある。