197、無垢なる刃 S
「君はその無邪気さが時に誰かを傷つけているという事を知るべきだ」
「そんなの、とっくの昔にちゃんと知っているわよ」
「何…?」
「私だって、傷つけたくて傷つけている訳じゃないわ。でもしょうがないじゃない。いつだって、気がつくのは傷つけてしまった後で、行動に移す前に気付く事は出来ないんだもの」
「・・・」
「私は、あなたたちが他者の事で笑い、泣き、怒り喜び妬み苦しみ憎み愛し羨み、人に救いを求める事が理解できない。だって、所詮他人は他人。私じゃないじゃない」
「誰も私を救ってはくれなかった。だから私は誰も救わない。救えない。救いたいとも思えない。…ねえ、誰かに優しくできるのは、優しくしてもらったからなのよ」
「…それは私も知っているよ。…よく知っている」
彼女:人間の良い所を集めた様な、無邪気で善良な少女。
八方美人。どんな時も無邪気に笑っているイメージを大抵の人に持たれている。
人を傷つけるより自分が傷つく事を選ぶような優しい人間。何をやっても不思議と偽善者イメージは持たれない。勤勉だが若干器用貧乏くさい。
どんな相手にも等しく同じように接する。他者の善性を信じているような無邪気な言動が多い。敵味方はっきり分かれる方だが、本人は誰とも敵対しようと思わない。おおらかで受容属性。包容力がある。
・受容の根底にあるのは無関心。他者の人格に興味がない為、相手の人格を受け入れるかどうかの判断に使わない。さらにその無関心の原因は人間不信から心を閉ざしている事。相手がいずれ手酷く自分を傷つけて裏切るものと思って行動している。
・特別不幸な人生を送ってきているわけではなく、家族は至って普通だし、それなりに仲もいい。ただ、思春期の頃、精神的ないじめと友人を失う(正確には、友人と思っていた相手に友人と思われていなかった事を知る)事が重なり、他者を理解できなくなった。以来、他者を友とみた事がない。アレな言い方だが、真面目すぎて中二病を拗らせている。
・自分が殊更不幸とは思っていない。ただ己の心が弱かっただけなのだと承知している。
・救われたい、救いたいと思っているが、それを見ない振りしている。
彼:悪人。自分の目的の為なら例え大切な肉親だって犠牲にできる。
嘘ではないが全くの真実とも言えない、欺瞞に満ちた言動をする。
自信家。目的の為なら世界だって敵に回す。所謂天才に分類される人間。
・大切な人を失い、復讐の鬼と化した。元々は家族愛に満ちた優しい人。根は善人なので悪に徹しきれないが、既にやらかしているので己は悪と断じる。
・客観的に見ると不幸な人生を送ってきているが、己が不幸だとは思っていない。少なくとも、大切な人を得られた日々は幸せだったのだと。
・思いつめるタイプ。失った人が復讐を望んではおらず、只の自己満足にしかならない事をわかった上で復讐の為に全てを注ぎ込んでいる。
・悪である以上、最後に破滅するのは必然だろうと思っている。