192、聖杯の乙女 S
「君はこれからも秘密を守り続けるつもりなんだね」
「ええ。それが私の役目ですもの」
彼女はにっこりと笑みを浮かべる。その小さな肩にどれだけの重責を背負って此処に立っているのか、私は既にそれを理解している。…してしまった。
「大丈夫。私は一人ではありませんから」
「…そうだね、君は一人じゃない」
今までも、これからも、沢山の人に支えられて彼女はそこにいるのだ。
ヴァージニア:ヴォルフシュテインの若き当主。長い黒髪と紫の瞳が特徴的な14歳の少女。
両親と兄姉を事件で失い、生き残った末娘である彼女が当主の座を継いだ。
聖杯の伝説が残る古城に、使用人を除けば一人で暮らしている。
城の中では大抵薄い色のついた眼鏡をかけている。
頭の回転が速く、1を聞いて100を知ると言われるほどの才女。
年の割に落ち着いた言動を見せる事が多いが、実は不眠症に近い状態で、睡眠時間が極端に短く、目元には常にクマが出来ている。
受け継いだ莫大な(少なくとも、一家族が慎ましく一生働かないで過ごせる程度)財産と経営する会社や土地の権利などを狙って取入ろうとする親戚その他、他の人間を鬱陶しく思っているらしく、そういう話題を持ちだす人間には頑なな態度を見せる事が多い。普段はそれなりに人当たりのいい少女である。
事件の後遺症として車椅子を使っているが、完全に歩けないわけではないらしい。あまり活動的ではなく、一日中書斎に籠っている事も多い。
・根は素直で好奇心旺盛な少女。末っ子らしく甘やかされていた面もあるが、自律心が高い為、あまりそう見えない。
・髪を結い上げて茶髪のかつらを被り、クマをコンシーラーで隠し、兎のぬいぐるみリュックを背負って、"ビビ"というただの少女として城下町に降りる事もある。その時は年頃の少女らしく振る舞っている。
・直感で大抵の謎が解けてしまうチートで、どんなに巧妙な変装も見破るが、面白いと思えばそのまま放置する。
ジュリアス:フルネームはジュリアス=ブレンディック。ヴァージニアの叔父(父の弟)であり、名目上の後見人。
冒険家であり自由人だが、その知識と目は確か。聖杯について詳しくは知らないものの、その伝説の一端を過去に解いている。
彼が後見の座についたのは以前から交流があった事に加えて、彼が彼女が受け継いだものに対してあまり興味がなく、口出ししない為。経営に関しては既に彼女の方が詳しく口を出せないというのもある。
人懐っこく、知らない人間にも気軽に話しかけに行く度胸を持っている。年齢はそろそろ20代後半になる位だが、そうした落ち着きを普段はみせない。
・ヴァージニアにビビというニックネームを与えた張本人。二人きりの時はビビ、ジェイビィと呼び合っている。
・いわゆる妾腹であるらしく、他の親戚からは貴族の面汚しだのなんだの言われている。その為、貴族関係の集まりには基本的に顔を出さない。
・ロリコンではないが、彼女が幼い頃にその言葉で救われた為、今度は自分が彼女を守りたいと思っている。彼女の不眠症にも気付いていて、どうにかしたいと思っているが、どうすればいいのかわからない。
・兄弟仲はけして悪くなかったが、彼が一方的に兄に対してコンプレックスを持っている。
・城に伝わる聖杯の伝説に強い興味をもっており、そこから発展して冒険家になった。神出鬼没というか、訪れる前に連絡をしない。
・ある種の天才であるため、時々突拍子のない事を思い付いて行動に移すことがある。