186、人外と少女の主従関係 S
「紅葉、こんな所で寝ると風邪をひくぞ」
「うー…まだ宿題終わってない…」
「だから宿題は先に終わらせてから遊べといつも言っているだろう。ほれ、宿題は朝早く起きてやる事にして布団に入れ」
「早起きとか、無理…」
「我が起こしてやるから問題ない」
「鬼だ…」
紅葉:譲刃紅葉。現在女子高生兼退魔師見習い。
従えている使い魔は糸杉と隠岐の二体のみだが、糸杉には主従というより孫扱いされ、隠岐とは飼い主とペット状態になっている。
退魔師としての能力は、所謂天才であり女帝の異名を持っていた祖母にはまだ遠く及ばないものの、将来は有望と目されている。幼い頃から人外と普通に関わってきたからか、魔に対しても甘い対応をしてしまう傾向がある。
大のおばあちゃん子でおばあちゃん大好きなのだが、その祖母と人格実力の面で比べられる事を嫌がっている。退魔師としての祖母を本人と糸杉他使い魔からの話でしか知らない。
簡単なまじない程度は教えられていたものの、祖母が死ぬまで退魔師を継ごうとは考えていなかった。本格的な技術は現在糸杉に教わっている真っ最中。
糸杉:本性は闇そのものであり死の概念。
元々は紅葉の祖母・呉葉の使い魔だったが、彼女の葬儀の日に紅葉と契約を結び、現在では紅葉の使い魔となっている。
呉葉とは彼女がローティーンだった頃からの付き合いで、彼女の夫が死んだ後はその姿を借り、一般人に不審に思われないよう彼女と共に年をとって来た。現在では引きしまった体を持ったロマンスグレーとなっている。
その気になれば想像の追い付く限りどんな姿も取れるし、本来性別などもないはずなのだが、長年男性の姿をとってきただけあって女性の姿を取る事には違和感を感じるらしい。本性が闇であり死だからか、体温は常に低い。
本来はかなり高位の魔であり、呉葉の死後は"在るべき所"に還るつもりだったが、紅葉に泣きつかれて絆されて居残る事になった。
紅葉との関係は主従というより祖父と孫か保護者と子供。
かなり有能だが、時々天然ボケを発揮する。
隠岐:紅葉が初めて下した魔であり使い魔。
人間で言うと五歳児程度の知能しかない事、ぬいぐるみの様な愛らしい外見をしている事などから殆どペット状態になっている。よく紅葉の抱き枕になっている。
魔としてはまだ生まれたばかりの部類だが、実は紅葉より実年齢は上。
好奇心旺盛で単純思考。割と騙されやすいが敵味方の区別だけはしっかりしている。
宙に浮いて移動する事が多いが、本体の属性は土、木。順調に年を重ねていけば高位の魔になれるだけのポテンシャルは持っているらしい。
紅葉とは割と気が合うらしく、それなりに仲が良い。
柳葉:呉葉が息子(紅葉の父)の守りとする為に糸杉から株分けして生まれた魔。
分けられるまでの糸杉の記憶も持っているが、魔としての格は糸杉より低い。
現在では糸杉とは完全に別個の人格を持っており、話し好きで陽気。紅葉に呉葉の全盛期の異名と言動、女帝というか寧ろ女王様だったという事を教えた張本人。隠れドS。
契約上そろそろ"在るべき所"へ還ってもいいのだが、本人の意思で今も紅葉の父の傍に留まっている。
己が彼の守りだという威嚇の意もこめて、黒い人外の姿をしている事が多い。
よく余計な事を言って糸杉にしばかれる。