174、奏者と楽器職人 S
「…これはすごいね。これが君の…?」
「いや、それはまだ未完成なんだ」
「それは、君に奏でられてこそ、本当に完成する事が出来る」
「…私が?」
「ああ。何しろ、それはボクが君の為だけに作り上げたものだからね」
奏者:優れたヴァイオリン奏者。
幼い頃からその才覚を現し、たゆまぬ努力によって技術を磨き、神童・天才などと呼ばれている。意外にも絶対音感は持っておらず、相対音感のみ優れているらしい。
普段はおっとりとしているが、音楽に関してはストイックで情熱的。演奏中はよくとても楽しそうな笑顔を浮かべている。根は真面目らしく、卑怯な事を嫌っている。基本的にマイペースで、中々ペースを崩したりしないが、逆に、ペースを崩される相手は苦手だし、崩されると挙動不審気味になる。
持っている知識が地味に偏っているため、偶に頓珍漢な事を言いだす。ヴァイオリンと音楽以外にはほぼ興味がない為か、周りの人間の感情に疎く、的外れな答えを返してしまう事もままある。多分、世間知らずと言っても差し支えない。少なくとも世間ずれはしていない。
頭は悪くないが、音楽に打ち込んでいる為それ以外の分野にはかなり疎い。
・ヴァイオリン以外の楽器も演奏できない事はないが、金管楽器は少し苦手。
楽器職人:奏者の年上の幼馴染であり、神の手と呼ばれる凄腕のヴァイオリン職人。
ヴァイオリンは美術品ではなく楽器だ、というのが信条であり、ストイックに、ただ良い音を奏でる為に作られた彼の楽器は結果的に見た目も美しいものになっている。量よりも質を追求し続ける姿勢に、ファンもいるらしい。
楽器に対して強いこだわりを持つ為か、大切にしてくれると思った相手にしか自作の楽器を売る事はない。普段は楽器の修理とチューニングをして生計を立てている。店自体は代々受け継いで来ているものらしい。客には偏屈だと思われる事が多いが、日々試行錯誤を繰り返しているという意味では寧ろ柔軟な人間。
タバコが嫌いで、店も工房も居住スペースも禁煙であり、喫煙者や喫煙席にはけして近づかない。
頑固で気難しい所もあるが、ある程度の二面性もあるらしく、仕事が関わらないければ気のいい男。
頭はいいが、基本的に勘に従って動いているので、行動を言葉で説明できない事も多い。常識がバグっている。
知識は広く浅く、ヴァイオリンやそれに関わりそうな事は徹底的に深く追及している。正直ヴァイオリン以外にほぼ興味がない。基本的に他人には興味がないが、ヴァイオリン関係の活動をしている人に関してはある程度情報を集めているし、公の場でヴァイオリンを弾く人の事は須らく調べている。
・子供の頃はヴァイオリン奏者を志望していたが、事故で左手の人差し指と中指を失くしてその道を諦める事になった。その事に対して思う事はあるようだが、滅多に表に出さない、ヴァイオリンと音楽自体への愛は失くしていない様である。
・ヴァイオリン奏者としての才能は秀才以上天才未満らしい。絶対音感持ちで少々神経質なきらいがある。少し音がずれただけでも苛々してムキになる。