165、すれ違いの愛言葉 S
「何故、私に後を継がせてはくれないのですか?!…私が、あなたの本当の息子ではないからですか?」
「いいや。ただ単純にあの子に次代を任せても良いだけの資質があるとボクが判断したからだよ。血の繋がりは関係ない」
「そんなの、詭弁だ」
男は溜息をついて肩をすくめる。
轟音。
ごほり、と血を吐き、男は青年を困った子供を見る様な目で見て目を細める。
「…それでもボクは、君たちを愛しているよ」
青年の手の中の銃は薄く煙を上げている。男はゆっくりと目を閉じ、その場に倒れ込んだ。
男:とある組織のボス。
誰もが跪きたくなるようなカリスマの持ち主だが、性格は穏やかで滅多に腹を立てたりしない。基本的にクールというか、公私の区別がしっかりしている。
嫁とは政略結婚だったが、愛妻家で浮気などは全くしていないし、愛人もいない(立場上いる方が普通)。
人を動かすのは得意だが、己自身の肉弾戦闘力は低い。所謂魔術師タイプか学者タイプの人間。
・幼い頃のトラウマで不能。童貞処女。実はネクロフィリアの気があるが自覚は無い。性に対する知識はちゃんとある為、子供が出来ないのが己の所為である事は知っていた。自分では嫁に母になる喜びを教えてあげられない事をわかっていたので、部下にはそういう意味では感謝している。後継ぎに関しては兄弟の子を養子に取ればいいと思っていた。
・精霊との盟約などの関係で、ボスは初代の血を引く者にしかなれない。男は直系。嫁は所謂傍系で薄いが、後を継げる程度には初代の血を引いており、青年たちも資質はともかく後継になる資格はある。
後継を資質で選ぶと男が宣言したのは嫁の妊娠前だが、妊娠後に、嫁が生んだ子だからという理由では選らないと宣言を付け足した。
・嫁:男の政略結婚で嫁いできた妻。
箱入りのお嬢様で、夫婦で仲良くしていればその内神様が赤ちゃんを授けてくれるのだと本気で信じこんでいた程度には脳味噌お花畑。子供(後継ぎ)が中々生まれない事で周囲のプレッシャーを受けていたが、部下との燃える様なラブの後の一発誤射で無事妊娠してしまう。
男との間に生まれた子としてその子を生むが、少し後に子連れで部下と駆け落ち。追手がかかるも行方をくらます。5年ほどの後に敵対者によって部下共々殺され、最初の子と逃亡中に生まれた子は男に引き取られる事になる。
・部下:男の腹心とも呼べる部下。
男に対して心酔に近い程の忠誠心を持っていたが、何の因果か嫁との大恋愛の後駆け落ちに至る。
嫁を愛していたのも、男に惚れこんでいたのも本当で、NTRした事に対して強い罪悪感を持っていた(が、男と嫁は全く気にしていなかった)。
・青年:男の息子。母似。
幼くして両親を失くして男に引き取られた事もあり、男を本当の親、弟を異父弟だと思っていたが、正真正銘同じ両親から生まれた兄弟である。
色々と屈折したコンプレックスの持ち主。度々ヒステリーを起こす事がある。
・弟:男の義息子。父親似。
幼くして両親を失くして男に引き取られた為、両親の顔は覚えていないが、周囲の大人たちの噂話から、自分が嫁の愛人(のようなもの)の子であるという事を知っている。それでも兄と変わらず愛してくれる男にはとても懐いている。
物静かというか気弱。