表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

あなたを傷つける・・。

電話に出たのは、忘れもしない人の声だった。あぁ・・。この声だ。翔は、思った。忘れたくても、忘れられない。メルアドを変えようかと何度も、思った。それでも、凛との接点を失いたくない。悩んでる間に、先に凛が変えた。先を越された感じだった。連絡をとろうとも、思った。何度も、思いながら、思いとどまっていた。二人の恋に先はない。行き着く答えは、別れだけ。自分達の恋が、人々のつまらない中傷を浴びる前に形を変えてしまうしか、方法はない。終らせよう。はっきりと、別れを告げ、互いに触れない。それが、互いを思い別れる形・・・。

「凛?」

何を話そうか。自分達が、こうなる事が最初から、わかっていて、逢っていたのか?凛は、本当に自分を思っていてくれたのか、つまらない疑問が、胸を焦がしていた。

「翔?」

久しぶりに聞く凛の声。忘れた事はない。

「凛。やっぱり、きっちり、話しておくべきだったよね。」

「・・。」

凛は、黙っていた。

「俺達、一緒には居られない。」

「ごめんなさい。」

「どうして、謝るの?」

翔は、尋ねた。

「最初から、こうなると思ってた・・。」

「最初から?どうして・・。わかっていて、一緒にいたの?」

「あたしの我儘だから。翔とただ・・。このまま、一緒にいられればって、思って。」

「凛。無理だよ。最初から、俺達は、無理だったんだ。」

何も考えずに、過ごした日々があった。

「真剣に考えれば、答えは、わかっていたんだ。その答えを見ないふりをしていた。」

「でも。翔。あたしの気持ちの変りはない。」

「凛。迷わせるなよ・・。」

「翔を、今でも・・。」

「あなたは、勝手すぎる。」

翔は、声を荒げた。今。別れを決めてる。諦めて、別れるのだ。未練はいけない。ここで、凛の翔への気持ちを聞いてしまったら、また、決心が揺らぐ。潔く、凛を突き放そう。

「いつでも、そうだ・・。自分の都合のいいように、解釈する。」

一緒になれない不安。哀しみが怒りとなって、突き上げた。

「終ったんだよ・・・。凛。俺達は・・。」

「翔。」

凛が、電話の向こうで泣いていた。このまま、嘘だと言って、傍に行きたかった。すぐ、抱きしめてやりたかった。でも、それでは、更に、凛を傷つけてしまう。

「最初から・・。」

言い様のない哀しみがあった。もう、この人に逢う事は無いのだろうか・・。二度と逢っては行けないのだろうか。少し前までは、何も考えずに逢っていた。もっと、大切にすれば良かった。あの時間には、戻れない。

「最初から・・。無理だったんだよ。」

自分に言い聞かせるように、翔は言った。未練だけが、残ってしまう。自分にとって、凛に対して、最後にして、最大の愛情って、なんだろう。やっぱり、あおれは、冷たくする事しかないのだろうか。翔の冷たい言葉に、凛は、絶句していた。

「ごめんなさい・・。」

消え入りそうな声だった。泣いている。凛が、自分の言葉で傷つき、泣いていた。

「さよなら。」

翔は、乱暴に告げた。これ以上、話していたら、自分も泣き出しそうだった。

「凛。」

切った後で、翔は、呟いていた。

「ごめん・・。」

力がなかった。今、すぐ、凛を受け止めるには、非力だった。翔は、一人、誰もいない部屋で、遠い街を見下ろしていた。雨が、激しく降り出していた。自分の迷う続ける気持ちを打ち消すかのように・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ