表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

別れの雨。

自分の大切な人を、人の道から、外させてはならない。後ろ指さされるような人にしては、ならない。

自分に出来る事はなんだろう。あれから、翔は、考えていた。雨が降り出していた。甘い匂いは、街中を包む。アスファルトが、濃厚な色に変っていく。行きかう親子連れが、あわてて、駐車場まで、走り出していた。幼稚園のお迎えだろうか。目に映る親子連れが、全て、凛と優奈に見えた。

「「子供にとってはさ、本当の親と一緒にいるほうが、幸せなんだよ。」」

兄貴に言われた。

「「例え、どんな親でもだ。」」

そうだと思う。

「「人妻に手を出すなんて・・。お前・・。」

友人が、絶句した。

「「別れろよ。リスクが多すぎるだろう?親の事考えろよ」」

親の事。

「ふっ・・。」

翔は、ベランダから、下を見下ろしていた。

「結局。あなた達が、ついてまわるのか・・。」

「翔?どうしたの?」

後ろから、話しかけられた。翔の母親だ。

「連絡がないから、来てみれば、こんなに、洗濯物ためてて。もう帰るからね」

母親は、仕事を辞めた事に気付いていた。だが、五月蝿い父親には、内緒にするつもりだ。

「いつでも、帰ってきていいのよ。あなたには、会社を継いでもらうつもりで、大学まで出したのよ。それなのに、卒業すると、お菓子作りを勉強するなんて、フランスにいっちゃうんだから・・。前の会社も、ただの雑貨屋っていうじゃない?」

「いいんだよ・・。親父の会社なんて。」

「お兄さんには、失望してるの。せめて、あなただけでも、会社を手伝ってくれれば、楽できるのに・・。」

母親が、帰り支度を始めたので、少し、安心した。

「期待するなよ。」

親も年だ。先の事を考えなければならない。だが、今の翔の心には、凛の事だけが、深く、のしかかっていた。

「早く、お嫁さん。みつけてね。」

曖昧な顔をする翔を後に、母親は、マンションを出て行った。雨が強く、降り始めていた。

「凛。」

逢いたい。・・・が。

「もしもし・・。」

翔は携帯をとった。相手を思うなら、迷わせなく、次の人生を送るために、自分が、しなくてはならない事。・・・・それは。冷たく、凛との別れをはっきりさせる事。凛にとっても、優奈にとっても。ここで、自分との判れをはっきりしておいたほうがいいであろう。最後の優しさであり、最善策。

「翔?」

携帯に出たのは、紛れもなく、自分の大切な人の声であった。雨が更に強く降り出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ