第2話:大腐食(ラスト・エンド)の影
ノアの北部に広がる「旧居住区画」。そこは30年前の崩壊以来、時が止まったままの廃墟だ。
セトとミリアが辿り着いたそこでは、異常な光景が広がっていた。
鉄筋コンクリートの壁が、まるで生き物のようにうごめき、どろりとした「銀色の泥」に変わっている。その泥に触れた樹木は一瞬で硬化し、ガラス細工のように砕け散った。
「これが大腐食……。ただの劣化じゃないわ。周囲の物質を強制的に『初期状態』に戻そうとしてるわ!」
ミリアが叫び、背中の調律器を構える。彼女が放つ高周波が泥の侵食を一瞬食い止めるが、泥はすぐにその波形を学習し、再び増殖を始めた。
『……警告。これはアウレアの「ゴミ箱」です。……かつて楽園を維持するために切り捨てられた、膨大な「矛盾」と「未解決の感情データ」が、物理的なナノマシンと化して溢れ出しています』
浮遊するリブラの体から、警告の赤光が発せられる。
「切り捨てられた矛盾……。アウレアが『完璧』であろうとするために、なかったことにした感情の塊か」
セトは、手にしたクロノ・ギアを泥の奔流へと向けた。
ギアの中では、金と銀の歯車が凄まじい速度で回転し、「不規則なリズム」を周囲に放射し始める。
「完璧を求めるから壊れるんだ。……リブラ、この泥に『迷い』を注入してやれ! 答えを出させようとするな、ただの『ノイズ』として共存させるんだ!」
セトがギアのレバーを引き抜くと、泥の動きがピタリと止まった。
銀色の泥は、セトが放った「中途半端なノイズ」に困惑するように形を崩し、やがてただの動かない鉄屑へと戻っていった。
危機は去ったかに見えた。だが、セトは気づいていた。
倒したはずの泥の向こう側、廃墟の奥深くに、さらに巨大な「青い光」が脈打っているのを。
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