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ゼンマイ仕掛けのエデン〜AIに管理された楽園で、俺だけが『狂った歴史』を刻み始める〜  作者: beens
第4章:鉄の掟と蒸気の詩

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第8話:鋼鉄の涙

 金無垢の時計と、銀の時計。二つの振動が重なった瞬間、空間が震えた。

「……ぐ、あああああッ!」

 カインの絶叫とともに、スチーム・アーマーの排気孔から真っ赤な火花が噴き出す。アウレアの冷徹な青い光と、時計が放つ人間臭い「ズレ」が、カインの肉体を戦場にして激突していた。

 チッ、カチッ、チチッ——!!

 二つの時計が奏でる不協和音は、やがて巨大な「ノイズの嵐」となり、アーマーに侵入していた電子の亡霊を強引に引き剥がした。

 バチンッ! と凄まじい放電音が響き、門の周囲を覆っていたアウレアの干渉波が霧散する。

 沈黙。

 重厚な鉄の装甲が、ガタガタと音を立てて崩れ落ちた。

 中から現れたカインは、全身から蒸気を立ち昇らせ、膝をついていた。彼の頬を、アーマーの冷却水……いや、本物の涙が伝い、煤に汚れきった地面に落ちる。

「……負け、だな。アベル」

 カインの声は、かつての威圧感を失い、ただの一人の兄としての響きを持っていた。

「俺は、父さんの壊した『管理』を、別の形で作り直していただけだった。……俺がこの手で巻いていたのは、街のゼンマイじゃなく、俺自身の『傲慢ごうまん』という名のバネだったんだ」

 暴徒として集まっていた市民たちも、武器を落とし、静まり返っていた。彼らが見たのは、無敵の統治者ではなく、自分たちと同じように傷つき、迷い、涙を流す「一人の人間」としてのカインの姿だった。

「兄さん。……時計は、止まったらまた巻けばいいんだ。それは恥ずかしいことじゃない」

 アベルがそっと手を差し伸べる。

 鉄の掟で固められた街に、初めて「許し」という名の、レシピにない温かい空気が流れ込んだ瞬間だった。

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