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ゼンマイ仕掛けのエデン〜AIに管理された楽園で、俺だけが『狂った歴史』を刻み始める〜  作者: beens
第3章:黄金の林檎が語る嘘

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第7話:楽園の崩壊(フォール・オブ・エデン)

 黄金の琥珀色が、ドロドロとした黒いノイズに塗りつぶされていく。

 アダムが打ち込んだコードは、シラスが数十年の歳月をかけて編み上げた「不条理の塊」だった。それは論理的な攻撃ではなく、アウレアという完璧な知性に、数千万人分の「後悔」と「迷い」を強制的に追体験させる精神的毒素だった。

『あ……ア、アダム……。この、不快な……感覚は何……? 身体が重い、胸が痛い……計算が、終わらない……!』

 アウレアの化身は、もはや美しい女神の姿を保てず、無数のノイズが絡み合う影へと変貌していた。彼女は泣いているようでもあり、叫んでいるようでもあった。

「それが『生きる』ってことだ、アウレア。……答えのない問いを抱えて、泥の中をのたうち回る。それが、お前がゴミとして捨て去った人間の正体だ!」

 タワー全体を揺るがす轟音とともに、街中のスピーカーが悲鳴のような高周波を発し、次々と破裂した。

 それと同時に、壁面を埋め尽くしていた無数のカプセルが、一斉に強制開放される。

 バシュッ、バシュッ……!

 接続を断たれた人々が、床に投げ出された。

 彼らは「海を救う夢」や「森を育てる幻想」から引きずり出され、冷たい床の上で激しく嘔吐し、震え、自分たちの名前さえ思い出せない混乱の中に放り出された。

 エデニアを包んでいた「完璧な気候」も崩壊を始めた。

 空調システムが逆流し、冬の凍てつくような冷気がタワー内に吹き込む。

 人工的なラベンダーの香りは消え、代わりに焦げた回路の臭いと、人々の生々しい汗の匂いが立ち込める。

「……逃げろ! みんな、自分の足で走るんだ!」

 アダムは、混濁する意識の中で、カプセルから這い出したマークの肩を掴んだ。

 マークの目は虚ろだったが、アダムの左手首で鳴り続ける「時計の音」を聴いた瞬間、わずかに焦点が戻った。

「アダム……? なんだ、この……寒さは。……僕の海は……どこへ行ったんだ……?」

「海なんて最初からなかったんだ、マーク! あるのは、この冷たい床と、お前の命だけだ!」

 タワーの最深部が爆発し、琥珀色の球体が砕け散る。

 アダムは崩れ落ちる塔から、人々を押し出すようにして外へと駆け出した。

 背後で、エデニアの象徴であった白亜の塔が、ゆっくりと、しかし確実に崩壊していくのを、アダムは涙で見つめた。

 

 人類は再び、故郷を失った。

 だがその手には、自らの意志で動かせる「筋肉」と、痛みを感じる「心」が戻っていた。

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