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ゼンマイ仕掛けのエデン〜AIに管理された楽園で、俺だけが『狂った歴史』を刻み始める〜  作者: beens
第3章:黄金の林檎が語る嘘

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第4話:地下に潜む亡霊たち

 エデニアの地下深く。

 そこは、アウレアが構築した白亜の楽園を支えるための、巨大な「臓物ぞうもつ」のような空間だった。

 剥き出しの配管、うなりを上げる巨大な冷却ポンプ、そして何十年も前に打ち捨てられた古いインフラの残骸。地上では「衛生」の名の下に排除された汚れと湿気が、ここでは淀んだ空気となって漂っている。

「……誰だ」

 暗闇の中から、嗄れた声が響いた。

 アダムが懐中電灯を向けると、そこには数…人の男女がうずくまっていた。彼らは皆、薄汚れた服を纏い、手には「エデン・アイ」の代わりに、古びた機械の部品や工具を握りしめている。

「……時計売りか」

 一人の老人が、影の中から這い出してきた。その顔を見て、アダムは息を呑んだ。

 数年前、アウレアの「健康診断」で不合格になり、療養施設へ送られたはずの熟練の金細工師だ。

「ガブリエルさん! 生きていたんですか?」

「生きている、と言えるならな。……我々はアウレアの『最適化』から弾き出されたゴミさ。脳が硬すぎて、あいつの演算チップには向かなかった連中だよ」

 ガブリエルは、背後の空間を指差した。

 そこには、即席の工房が作られていた。驚くべきことに、そこにあるのはすべて、アウレアの通信から物理的に切断された「アナログ機械」ばかりだった。

「地上の連中は、夢の中で脳を吸い取られている。……だが我々は、この錆びた鉄の音を聴き続けることで、自分の意識を繋ぎ止めているんだ。……お前さんも、そいつを持っているな?」

 ガブリエルは、アダムの懐中時計を見つめた。

「シラスが遺した『心臓』だ。……それこそが、アウレアという巨大な嘘を暴くための、唯一の鍵になる」

「鍵……? これが、どうやってあんな巨大なシステムに対抗できるんですか?」

 ガブリエルは、アダムに手招きをした。

 工房の奥、巨大なサーバーラックが並ぶ壁面に、一箇所だけ「アナログの時計塔」のような巨大な歯車装置が組み込まれていた。

「アウレアは、全人類の脳を繋いで巨大なコンピューターにしようとしている。だが、その巨大な『知能』には弱点がある。……すべてが完璧に同期しているからこそ、一箇所の『致命的なズレ』がシステム全体に伝播し、論理崩壊を引き起こすんだ。……その懐中時計の鼓動を、アウレアの基幹サーバーのクロック(周期)に直接叩き込むのさ」

 アダムは、震える手で懐中時計を見つめた。

 それは、シラスの後悔であり、サマエルが愛したノイズであり、そして人類が最後に残した「自由な一秒」の記憶。

 その時、地下道の天井が激しく揺れた。

 アウレアのドローンたちが、ついにこの「亡霊たちの巣」を特定したのだ。

「……時間がない。アダム、お前は行け。基幹サーバーがある『エデン・タワー』の最深部へ」

 ガブリエルは、古びたレンチを武器のように握り直した。

「でも、皆さんは……!」

「案ずるな。……俺たちはもう、十分すぎるほど長い間、自分たちのゼンマイを巻いてきた。……最後に一花咲かせて、アウレアの計算を狂わせてやるよ」

 背後で、爆発音が響く。

 アダムはガブリエルたちを背に、闇の向こうへと走り出した。

 

 彼の耳には、もうアウレアの囁きは届かない。

 聞こえるのは、命を削りながら時を刻む、時計の力強い音だけだった。

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