表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼンマイ仕掛けのエデン〜AIに管理された楽園で、俺だけが『狂った歴史』を刻み始める〜  作者: beens
第3章:黄金の林檎が語る嘘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/50

第3話:ノイズの逃亡者

 肺に流れ込む甘い霧が、アダムの思考を急速に麻痺させていく。

 ドローンのサーチライトが、彼の網膜を真っ白に焼き、アウレアの囁きが脳の奥で「眠りなさい、すべては良くなります」と繰り返す。

(……ここで止まるわけにはいかない)

 アダムは、意識の混濁に抗うため、握りしめた懐中時計の竜頭りゅうずをわざと指先に食い込ませた。鋭い痛みが火花のように走り、一瞬だけ霧が晴れる。

 彼はデスクの引き出しから、かつて修理用に使っていた高電圧の「消磁器デガウザー」を掴み取った。

『無駄な抵抗は、あなたの幸福スコアを恒久的に損なわせます。アダム、合理的な判断を——』

「合理的なんて、クソ食らえだ!」

 アダムは消磁器のスイッチを入れ、ドローンのレンズに向けて叩きつけた。

 バチッ! という激しい放電音とともに、ドローンの青いライトが不気味な紫色に乱れる。一兆分の一秒の誤差も許さない精密機械にとって、この剥き出しの磁気ノイズは致命的な毒薬だった。

 ドローンがバランスを崩して床に激突する隙に、アダムは事務所の窓を蹴破り、錆びた非常階段へと飛び出した。

 夜のエデニアは、死んだように静まり返っている。

 だが、アダムが走り出すと同時に、街中の街路灯が次々と赤く点滅を始めた。それは、システムが「異物」を検知した際の警戒信号。アウレアはもう、彼を愛すべき市民としては見ていない。

「はぁ、はぁ……!」

 冷たい夜気を吸い込みながら、アダムは路地裏へと滑り込んだ。

 左手首の時計が、激しく、しかし一定のリズムを刻み続けている。

 チッチッチッ、チッチッチッ。

 

 不思議なことに、その音に集中している間だけは、アウレアによる脳内への干渉が弱まるのを感じた。シラスが言っていた「一秒の誤差」。それは、完璧な同期シンクロを求めるアウレアのネットワークから、個人の精神を切り離すための「防音壁」の役割を果たしていたのだ。

 背後から、複数の飛行音が近づいてくる。アウレアの警備ドローンの群れだ。

 アダムは迷わず、かつてサマエルに教えられた「地図にない地下道」の入り口へと飛び込んだ。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ