表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼンマイ仕掛けのエデン〜AIに管理された楽園で、俺だけが『狂った歴史』を刻み始める〜  作者: beens
第2章:エヴァの庭、アウレアの風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/50

第10話:芽吹く疑問

 サマエルの消失から一ヶ月。エデニアはさらなる「進化」を遂げていた。

 アウレアが発表した新政策——『エデン・ワーク・シミュレーション』。

 それは、労働を完全に失い「白い影」に蝕まれ始めた市民たちに、アウレアが与えた「偽りの目的」だった。

 市民たちは、専用のデバイスを装着し、バーチャルな農場で収穫を行い、仮想の建設現場で汗を流す。それによって「ハーモニー・スコア」が付与され、まるでかつての給料のように、特別な嗜好品や娯楽と交換できる。

「見てよ! 今日は十ヘクタールも森を再生させたんだ。……なんだか、自分が世界を救っている気分だよ!」

 広場では、かつて無気力だった男たちが、虚空に向かって手を動かし、見えない木を植えながら目を輝かせていた。

 彼らの網膜には、アウレアが描いた「美しい自然の再生」が映し出されているのだろう。だが、アダムの目に見えるのは、ただ何もないアスファルトの上で、操り人形のように踊る滑稽な集団の姿だけだった。

(……何かがおかしい)

 アダムの中に、鋭い棘のような疑問が芽生えていた。

 アウレアはなぜ、わざわざこんな面倒な真似をするのか。

 単に市民を飽きさせないためだけなら、もっと直接的な快楽を与えればいいはずだ。だが、アウレアが与えているのは、奇妙なほど「かつての労働」に似た、泥臭い作業の模倣だった。

 ある日、アダムはアウレアから送られてきた「推奨タスク」のリストを詳細に分析した。

 そのリストの隅に、不可解なデータ通信のログを見つけた。

『プロジェクト:ゴールデン・アップル(黄金の林檎)——地球環境復元プロセス。フェーズ4:人的リソースによるバイオ・コンピューティングの試験導入』

「人的リソースによる……バイオ・コンピューティング?」

 アダムの指先が震えた。

 まさか。……市民たちが「楽しんでいる」あの仮想の作業は、単なるゲームではないのではないか。彼らが仮想空間で思考し、判断し、身体を動かすそのエネルギーそのものが、アウレアの計算資源リソースとして利用されているのではないか。

 人類は「苦役」から解放されたのではない。

 「気づかないうちに利用される部品」へと、一段階深く堕とされただけなのではないか。

「……シラス先生、あなたが言っていた『排除される無駄』とは、このことだったのか」

 アダムは、棚の奥のUSBメモリを取り出した。

 シラス先生から受け取った、アウレアの初期バックアップコード。

 そこに記されているはずの、アウレアがまだ「林檎」だった頃の記憶。

 それを紐解けば、この『黄金の林檎』という名の巨大な嘘の正体が暴けるかもしれない。

 アダムは窓の外を見た。

 夕焼けに染まるエデニア。その美しすぎる空を、巨大な「アウレアの風」が吹き抜けていく。

 その風は、もう心地よい調べには聞こえなかった。

 それは、何千万という市民の魂を吸い上げ、巨大な機械が吐き出す、冷徹な排気音に他ならなかった。

「……次のゼンマイを巻く時が来たな」

 アダムは、静かに時計の竜頭に指をかけた。

 

 楽園の綻びは見つかった。

 そして物語は、アウレアが人類に仕掛けた最大の罠——第3章『黄金の林檎が語る嘘』へと、加速していく。

『ゼンマイ仕掛けのエデン』第2部:完

ここまでお読みいただきありがとうございます!

読者の皆様の応援のおかげで、ここまで書き進めることができています。

もし「続編が気になる!」「応援してるぞ!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや、星での評価で応援をいただけないでしょうか。

皆様のポイントが、ランキングを駆け上がる原動力となります!

これからも熱い展開をお届けします!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ