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川釣り

 本の夢から醒めると俺は物置部屋の前で倒れていた。


「大丈夫ですか? 頭とか打ってないですか?」

 倒れた椅子を起こすパレアの様子からして、眠っていたのはほんの数秒くらいだろう。


「んー……多分大丈夫じゃない」

 体を起こし椅子に座り直しながらそう言うと、パレアはすぐさま俺の背中や後ろ頭を観察し始めた。

「どこか痛みます?」


「俺、見てはいけないものを見てしまった気がする」


「はい……?」


 ——夢の中で見た内容をパレアに話してみたが、彼女は全く動じないどころか、まるで普段の会話のように終始軽快に相槌を打っていた。


「なるほど……司書さんが管理している本なので、知られたらまずいような過去でもない気がします」


「ほんとか? 俺消されたりしない?」


「大丈夫です。記憶が消されることはあっても、エドラさん本人が消されることはないです」


「何も大丈夫じゃねーぞそれ」


「私は師匠の過去をほとんど知りませんが、コーネならエドラさんが見た夢について何か分かるかもしれません」


 どうせ記憶が消されるならということで——翌日、川釣りをしながら修行中のコーネインに聞いてみた。


「そうねー、とりあえずその夢で師匠が殺してたのはあたしの実の両親で間違いないかも」


「両親……?」

 その時俺は入れ食い状態なことも忘れて竿の動きを止めてしまった。


「師匠は生まれたばかりのあたしが両親に売られるところを助けてくれたの。正直生みの親が生きていようが死んでいようがどうでもいい、あたしには母親同然の師匠がいるから。そういえばアレーナおばさん元気かな……師匠の師匠なんだけど、その人も育ての親みたいなものなのよ」


「たしかエスピナの師匠って大魔女なんだよな? 夢で見た」


「そうよ。アレーナおばさんが魔法の研究で忙しいのもあるけど、あたしがまだ小さい頃にここに引っ越しちゃったから全然会えてなくて」


「白髪の竜人族の方は面識ないのか?」


「そうね……全然記憶に無いわ。知ってることと言えば昔師匠が魔法を教わった相手ってことくらいね。ていうかあたし、魔女が竜人族と交流禁止って初耳よ……?」


「バレてないし大丈夫なんじゃねーか? ルール破りたくないなら帰るけど」


「もう今更でしょ。そんなことより——ねぇ、釣り過ぎよ!?」


 俺の後ろで山積みになった大量の魚を見て怒り出したコーネイン。


「食べきれる量しか釣らねーって」


「どんだけ食べる気よ! だいたい何で川から海の魚が釣れてるのよっ!?」


「空間魔法で釣り針が海に行くようにしてるからな」

 再び竿を動かし、ものの一秒で針にかかった大物を釣ってみせると、コーネインは川辺で跳ねるその魚を見ながら絶句してしまった。

「こんな細い川で乱獲したらまずいだろ?」


「…………そもそもここに乱獲するほどの魚はいないわよ……そんな大きいのもいないし……」

 ~~鱗のお兄さんからひとこと~~


『釣りに使った空間魔法はつい最近閃いたもの。この魔法があればいつでもどこでも食料を確保することができる』

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