マジックショー
空はすっかり暗くなり、もうすぐ幻竜祭の締めくくりであるマジックショーが始まる。
例のマジックショーはカナフ村上空で行われる。
俺とシューバはこの露店から二人でショーを見る——はずだった。
「お前らもっといい場所で見てこいよ……」
「こういうのは場所よりも一緒に見るメンツが大事なの~」
露店のすぐ傍、あんなことを言うバニリアに加え、パレアにコーネイン、ハルバ、ナターレの計五人がシューバの用意した追加に椅子に座ってマジックショーの始まりを待っている。
「まぁまぁ、こうやって皆で見るのも僕は良いと思うよ?」
「ほら~、シューバさんもそう言ってるし」
「お前はシューバと見たいだけだろ」
「——なんだぁエドラ、お前って結構ノリ悪いタイプなのか?」
俺から最も離れた場所に座るハルバが野次を飛ばしてきた。
「うるせーぞ! 村長に頼んで村出禁にしてやろうか!?」
すると次の瞬間——村中のかがり火やランプなど全ての明かりがひとりでに消えてしまった。
「おぉ……!?」
「あ、始まるよエドラ」
村から溢れるほど居る観光客たちの声が段々と静まっていく。
今の火消しの魔法——山の頂上からだったな。
期待に胸を踊らせる観光客たちが皆揃って夜空を見上げている。
そしてカナフ村が静寂に包まれた瞬間、北の山の向こう側から幻影魔法で描かれた光の竜が翼を広げて現れた。
観光客たちの拍手と歓声が村に響き渡る中、竜はカナフ村の上空を旋回し光の粒子を雪のように降らせる。
「へぇー、結構迫力あるな」
ついさっきまでは、竜人族の俺をひどく嫌ってるドラゴンに頭の上を飛ばれてもな~なんて思ってたが、魔女が描いた光の竜を見上げていると不思議とそんなことはどうでもよくなってくる。
隣に座るシューバが空を見上げながら突然昔話をし始める。
「村の伝承では、遥か昔——まだカナフ村が小さな集落だった頃、病気で寝たきりだった少女がある日突然ベッドから居なくなって、一年後の夜に健康な体で大きな光に乗ってあの山の向こうから帰ってきたんだって。それから集落の人々は少女が乗っていたあの光を竜に例えて、毎年この時期にお祭りを開くようになったんだとか……これが『幻竜祭』の由来だよ」
「ん~……? 誰かさんの幼馴染も似たような経験してないか?」
「ナターレのこと?」
シューバがナターレの方へと顔を向けると、それに気付いた彼女は笑みを浮かべながら手を振ってみせる。
そしてバニリアはまるで虫でも見つけたかのように彼女の手を払う。
「ありがとうエドラ。彼女から聞いたよ、君に王都から連れてきてもらったって」
「働き者だろー俺、王都に店の宣伝しに行ってその上店主の幼馴染まで連れて戻ったんだぞ?」
「そうだね、本当にありがとう。でも配達を考えると距離的に厳しいから王都では宣伝しなくていいよ……あと、他の人に店番頼むのもなるべく控えてね。僕が帰ったとき、パレアさん置物みたいにカウンター座って店番してたから……」
「す、すまん……気をつける……」
椅子の上で縮こまっていると、シューバの隣に座っていたバニリアがキンキンに冷えた瓶を二つ差し出した。
「はいこれ~、マジックショー限定のキラキラジュース」
「キラキラジュース?」
「はいエドラ」
「お、おぉ……」
子供向けのネーミングに困惑しながらシューバからそのうちの一本を受け取る。
片手にジュースを持ち肩を並べて座る俺たちの目が合った。
「「乾杯」」
星と共に夜空で輝く光の竜を見上げながらキラキラジュースを飲む。
「んぶっ————まっず!!」
「あれ……やっぱり口に合わなかった? 子供にも人気な野菜ジュースなんだけど……」
「それ先に言えよ……」
「ごめんごめん。言ったら飲まないと思って……」
「子供扱いするな!」
するとまたしてもハルバが野次を飛ばしてくる。
「なんだなんだー? シューバのとこの店番は野菜を残すようなお子様なのかー?」
「うるせー! お前あとであの山に埋めてやるからな!?」
せっかく屋台巡りで腹いっぱい旨いものを食べたのに、このふざけたジュースのせいで台無しだ……。
これ作ったやつ絶対許さないぞ……。
~~鱗のお兄さんからひとこと~~
『野菜は好き好んで食べないだけであって、別に苦手なわけでも食べられないわけでもない』




