剣術大会
エドラとバニリアを追いかける途中、なぜか剣術大会に出場させられて、なぜかチャンピオンを倒してソードマスターなんて呼ばれて、なぜかエドラが俺への挑戦者として大会に参加することに————
なんでこうなった!!
「エドラ、やるのか?」
「この盛り上がりを台無しにするのも悪いしな……」
「……そうだな」
こいつとは一度手合わせしてみたかった——良い機会かもしれない。
「負けても泣くなよ? 剣の腕には自信があるからな!!」
エドラの懐に飛び込み至近距離から突き技を仕掛ける。
「っ——」
初撃を咄嗟にかわしたエドラに複数の斬り技で追い打ちをかけていく。
「どうしたエドラ、剣は苦手だったか!?」
「苦手でもないし得意でもない」
喋る余裕こそあるがエドラは防戦一方、なんだか拍子抜けだ。
「なら俺の勝ちだな!」
「背中がガラ空きなのにか?」
「背中? 一対一の試合で何言って——」
その瞬間、目の前で俺の攻撃を防いでいるはずのエドラの気配が背後に移動した。
咄嗟に彼の残像に背中を向け、振り向きざまに突き技を仕掛ける。
「そこだ————」
——!? 視界に映るはずのエドラの姿がない!!
「どこ行っ——」
彼を探す余裕すらなく俺は突然足をすくわれ転倒してしまう。
「ぐっ……!」
仰向けに転がった俺にエドラが勢いよく木剣を振り下ろす。
会場に歓声が響く中慌てて体を起こして攻撃を回避しエドラの追撃に備える。
しかし彼のとった動きは予想とは大きく異なり、涼しげな顔で木剣を肩に担ぎ動きを止めていた。
なんだこいつは……何を考えてる……。
また気配が背後に移動した——
エドラのこの奇妙な技、背後に回られたと錯覚するだけで残像に見えるあれは本人で間違いない。
現実的に考えて魔法もなしに残像を残るような速度で相手の背後に回れるわけがない。
距離は離れているが突き技なら届く。
「無駄だ!!」
攻撃を繰り出すため一歩踏み出したその瞬間、背中にとてつもない衝撃を食らった。
「ぐはっ————!?」
背後に回られてる……!? そんなはず……!!
足音——今度こそエドラの追撃が来る!!
あまりの衝撃で派手に転倒してしまったがすぐに起き上がりエドラの攻撃を受け流す。
「ぐっ——っ……!」
鋭く重い剣撃を無言で一方的に繰り出すエドラ。
その攻撃は回数を重ねるごとに威力も速さも上がっていく。
まずい、捌き切れない……!
そう感じたときだった————エドラの木剣が音を立てて根本から折れてしまった。
俺が息を切らせ呆然と立ち尽くす中、エドラはざわつく観客たちに木剣の柄を指先でつまんで見せる。
「あー降参降参、攻撃弾きながら剣折ってくるような奴に勝てるわけないって。みんな、新星ソードマスターは本物だ!」
エドラがわざと負けたことに気付いていない観客たちが大歓声をあげ始めた。
魔法を禁じられ木剣ひとつであの強さ……本気を出したら王都の冒険者が束でかかったところで敵わないだろうな。
初めて会ったときからエドラは強い奴だとなんとなく思っていたが、実際に戦ったことでハッキリ分かった。
あいつは魚人じゃない、世界最強の種族————竜人だ。
~~ハルバお兄さんからひとこと~~
『実は俺、人並みに魔力はあるのにシューバにどれだけ魔法を教えられても何一つ習得できなかった、いわゆる魔法音痴なんだ』




