表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Star trail.  作者: メロ
encore episode.
43/43

Bonus track. Ⅱ

 •side.茜



 一月一日。

 お姉ちゃんと一緒に待ち合わせの駅の改札を出ると、マフラーにコートと暖かそうな格好をしたややくせっ毛の女性──結々さんの後ろ姿が視界に入ってきた。

 だから、すぐさま駆け寄り、お姉ちゃんと声を合わせて、

『あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします』

 すると、結々さんはいつもの眩しい笑顔で新年の挨拶を返してくれた。ただ挨拶をしただけなのに、早朝から山道を頑張って登り、山頂で初日の出を見たような清々しい気持ちになって新年早々ラッキー。なんて思ったり。

「じゃ、いこっか」

「ハイデス!」

「です」

 三人で並んで歩き出して向かうのはもちろん神社。今日は受験の合格祈願も兼ねて初詣へ行く。

 私は別に近場の神社でもいいと言ったのに、お姉ちゃんがちゃんと学業成就のご利益がある場所にすべきと譲らなかったので少し遠出をする事になった。

「いやぁ、今日も寒いね」

「うぅ、デス」

 寒そうに身体を摩る結々さんとお姉ちゃん。二人の言うように今日はとても寒い。二日程前はこんなにも寒くなかったのに突然ガクンと気温が下がり、厚着はもちろん。マフラーなしでは外には出られないと言っても過言じゃない程寒くなっている。その影響でマムは体調を崩してるし、本当なら今日一緒に行く予定だった菊花さんも風邪でダウンしてしまった。

「ちょっとコンビニ寄ろっか」

 結々さんの提案への返答は言葉にする間でもなく、自分の口から出る白い息が物語っている。当然それはお姉ちゃんも同じで私達の足は自然とコンビニへ向いていた。

「……ほぉ……」

 コンビニの中に入った瞬間暖かい空気に包まれ、幸せな気持ちに。最早、この為だけでも来て良かったとさえ思う。

「んー、んー。 うん──ッ‼︎」

 ココアか、ホットレモネードか。少し悩んだ末に後者に決め、陳列棚から取ろうと手を伸ばしたその時。突然、美采さんの歌声が聴こえてドキッとした。

 フルじゃないとはいえ今日の零時になると同時にリリースされた新曲がもう店内放送で流れるとは思ってもみなかった。

 家にお邪魔したり、普通に連絡先を教えてもらってるからつい忘れちゃいそうになるけど。美采さんはプロのアイドル、しかも超がつく程の売れっ子。今日だって生放送のお正月番組に出ていたし、すごい人なんだよね──。

結々(ゆゆ)。 一口クダサイ!」

 コンビニ退店後。あんこ好きのお姉ちゃんにしては珍しくピザまんを買っていると思ったら、そういう事だったんだ。

「んふー。 あかねも一口クダサイ!」

 お姉ちゃんは結々さんの肉まんと自身のピザまんを一口ずつ交換し終えたら、予想通り私にも同じ提案をしてきた。私はあんまんを買っているので、これで三種類の味を楽しめると。別に姉妹ならよくある事なので、いつもと同じようにあんまんを一口あげ、ピザまんを一口もらう。そこまでは良かった。

 まさか、その後に……。

「茜ちゃん! 私も一口ちょーだいっ!」

「はい。 どうぞ」

 下手に動揺すると『嫌がっている』と思われるかもしれない。だから、何とか。本当に何とか平静を装い、結々さんにあんまんを一口食べってもらった。

 あんまんについた結々さんの歯形。別にこれくらいどうという事はない。小学生じゃないんだから、間接とか……ほんと、気にしてなんか……。

「じゃあ、はいっ!」

「ッ‼︎」

 失念していた。

 私が一口あげたという事は、結々さんから一口もらう流れになるのは当然で……。

「あ、あむ」

 しかし、それもどうという事はない。冷静に考えれば、お姉ちゃんが食べた場所を同じように食べればいいだけなのだから。

「いやぁ、やっぱり冬は肉まんだよね。 あむ」

「ッ‼︎」

 結々さんが……さっき私がかじったところを……。

「あ、あむ! あむ! んっ!」

「ん? どうしたのデスカ? そんなに急いで食べて」

「んぐっ、ん……。 べ、別に──」




「まずは鳥居で軽く一礼をするのデスヨ!」

 神社に着いて早々、自慢気に参拝マナーを説明するお姉ちゃん。今まで一緒に行ってそんな風にした覚えはないので、すぐに今日の為に予めネットで調べてきたのは分かった。

 学業成就のご利益がある神社がいいと言ったり、事前にマナーをきちんと調べてきたり。

「では、行きマショー!」

「うん」

 お姉ちゃん。ありがとう。



 それから参道は端を歩いたり、手水は左手から清めたりとお姉ちゃんの言う通りにしてから、お詣りの為にご神前へ。そして、賽銭箱へお賽銭を入れて。



 ──去年のクリスマス。『A’Ste×ride(アステライド).』の一員としてステージに立てて、すごく嬉しかった。

 曲作りで悩んでいた事、体力をつける為にお姉ちゃんと一緒にしたトレーニング•初めてのダンスレッスンが大変だった事、当日の不安。それら全部を忘れるくらいライブが楽しくて、夢中になっていた。

 雪が舞う中、憧れていたステージから目にした光景。戸惑いや不安が滲みでる顔から徐々に笑顔に変わっていく人、大きな声で応援してくれた人、涙を流してくれた人。色んな人達に温かい気持ちをもらったおかげで。最後まで、今の自分の全てを出し切る事が出来た。

 思い出せば、今でも胸が熱くなってドキドキする。

 また歌いたい。また踊りたい。もっと頑張って、最高のステージを作りたい。みんなと。

 だから、今年も『A’Ste×ride(アステライド).』のみんなと一緒にいれますように。



「長かったデスネ。 たくさんお願いでもしましたか?」

「ううん。 お願いしたのは一つだけだよ」

「そうデスカ。 では、それが叶うか確かめる為におみくじを引きマショー!」

「うん。 いこっ、お姉ちゃん!」



 ──そう。私のお願いは"たった一つ"でいい。




 fin.



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ