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Star trail.  作者: メロ
3rd episode. 「きらきら」
13/43

Prologue.

この胸に火を灯す

死よりも恐ろしい 根絶を遠ざける為に

 グラウンドの草むしり、花壇の手入れ、トイレ掃除等、一週間に及ぶ雑用を乗り越え、晴れて活動をスタートしたアイドル同好会。SNSや動画配信等を除けば、雫の体力づくりの為にランニングや筋トレを中心としたメニューをしていて、活動内容はほぼ運動部だった。

『はぁっ……はぁ……はぁっ……はぁぁぁぁ……』

『大丈夫?』

『うぅ、もう無理ィ……レェス……』

 初めの頃の雫は本当に体力がなかった。

 助っ人で部活経験豊富かつトレーニング法に詳しい菊花にも相談して、初心者でもこなしやすいメニューになってるはずなんだけど。いつも途中で力尽き、パタリと倒れて、翌日には筋肉痛で動けなくなるまでがお約束だった。

 それでも地道にトレーニングを続けて、一ヵ月もすれば。

『はぁっ……はぁ……あぁぁぁぁ……』

 休憩をちょくちょく挟み、終わった瞬間にパタリと倒れるとこは変わっていないけれど。途中リタイアはしなくなり、何とか最後までこなせるようになっていた。

『お疲れ様』

『あ、アリガトござい、ましたぁ』

 まだ一緒にステージには立っていない。それでも雫と二人で練習する時間はとても楽しくて。毎日、胸がドクン、ドクンと高鳴っていた。

 今のところ目立った目標はなくて、焦る必要もない。だから、秋の文化祭を目処に良いパフォーマンスが出来るようになろう。

 と、呑気なことを考えながら過ごしていた私の前に、突然彼女は現れた──


「久しぶり、でいいのかしら。 宇佐美結々」


 いつものように早朝の運動公園でトレーニングをしていた時、背後うしろから声をかけられて振り向くと──そこには腕を組み、堂々とした佇まいで不敵な笑みを浮かべるブレザーの女生徒がいた。

 彼女の着ている白い制服は近隣の学校のものじゃない。それはどこか遠くからやって来たことを証明していて、普通なら見知らぬ他人だ。

 でも、私は彼女を。そのダークブロンドの長髪と強気な瞳、この世の全てを統べる覇者の如く自信に満ちた顔を知っている。いや、忘れるはずがない。

 だけど、信じられなかった。

「どうして、貴方が……ここに……」

 もしここがステージや何かのイベント会場なら彼女と出会っても不思議じゃなかったかもしれない。でも、違う。ここはただの運動公園。例え、オフの日だろうと彼女が現れる可能性は万に一つもない。

 何せ彼女は今最も注目を集めている新進気鋭のスーパーアイドル。そう易々と人前に現れるはずがない。

 なのに。なのに。

「コレを渡す為よ」

 彼女は得意気な顔で懐から丁寧に封が施されている白い封筒を取り出し、それを私に突きつけてきた。

「え。 渡すって。 なんで」

「いいから受け取りなさい。 この私、"神姫みきみこと"と戦うステージへの招待状を」

「たたか、う……?」

 まるで意味が分からない。

 どうして、素人の私があの神姫命と戦わなくちゃいけないのか。そんな理由はないし、悪い冗談にしか聞こえないけれど。

 この肌がヒリヒリする感じ、それにあの真っ直ぐな。間違いなく彼女は本気だ。

「ほら、早く」

 声が出ない。

 現実が受け入れられない。

「あーもう、さっさと受け取りなさいよっ!」

 次第に彼女の眼は鋭くなり、目に見えて苛立ち始めていた。それはまるでヘビに睨まれてるみたいに怖くて、足が竦んだ。けれど、これ以上は黙っていられず、意を決して──戦う理由がないから嫌だと、得体の知れない物は受け取れないと伝えた。

 すると、彼女は私との距離を詰め、吐息がかかる程顔を近づけてきて。

「なら、その気にさせてあげる。 あの日、貴方がオーディションに落ちたのは"私のせい"よ」


 ──それはあまりにも衝撃的な言葉で。

 しばらくの間彼女が何を言ったのか理解出来ず、頭が真っ白になっていた。


「じゃあ、渡したから」

 気がつくと私の手には封筒が握らされていて。

 いや、今はそんなことはどうでもいいっ。

「待ってください! どういう意味ですか! なんで貴方が! 私をっ!──」



 当然、彼女は返事をすることなく私の前から去っていった。

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