旅の始まり
昼ご飯の片付けと腕の治療を行ってもらい、町に向けて出発することになった。全員優しい感じの人たちのようで良かった。町まで1日の距離だと聞いた。その町が領都だそうだ。怪我をしている僕もキャンベルさんの好意で馬車に乗ることができた。馬車にはアレックスさんとキャンベルさん、俺そして、御者の人が乗っていた。馬車は外見こそ普通だが中は快適だった。
キャンベルさんがご機嫌に話しかけてきた。
「私はそれなりに大きな商会を営んでいてね、君の服装に興味があったのと、なぜあんな何もないところにいたのか気になってね。」
僕はことの経緯を簡単に説明した。名前や服装、ただ、神様の話だけはしない方がいい気がした。
「そうだったのか、私は盗賊の一味かとも思ったが、アレックスが大丈夫と言うし、カノンおるしな、『緑の森』はBランクパーティーだし、カノンはAランクの冒険者だからなそこらの盗賊には負けることは無かろう」
(冒険者や魔術師なんて本当に異世界に飛ばされたんだ)
「あの、今回は本当にありがとうございます。アレックスさんには、命を救っていただいたうえに馬車にまで乗せていただいて。ただ、返せるものがなく本当に申し訳ありません。」
キャンベルさんがまた、ニヤリと笑い
「たぶん、シンジは迷い人なのだろう、あまり公言することではないが時に風変わりなものがふらっとあらわれることがある。ただ、基本死体だがね。」
(本当に運が良かったようだ、あのままゴブリンに殺されていたかもしれない)
「ここはドランク王国というところで今から向かうのはトルティーヤ伯爵がおさめる領都グランドというところだよ。シンジは聞いたことあるかい?」
「いえ、ありません。違う世界だと思います。」
「シンジ、ものは相談なんだがうちは服飾系の分野の仕事もしていてね。その服を売ってくれはしないだろうか。」
(命の恩人に服を売るぐらいですむなら大歓迎だ)
「是非、お願いします。命を救っていただいた御礼もかねて、もしあれなら差し上げます。」
「シンジ、その申し出は嬉しいがあまり、良くない回答だね。君はいろいろなもの価値や事柄を理解してなさすぎる。」
(?マークがでてしまった。)
「まず、その生地と縫製にデザイン今の服飾の世界では考えられない。世界に一点ものだということ。これは貴族に高く売れるし、我々も研究することができる、それだけで莫大な利益につながる。」
(話を聞いているとなるほどと思ってしまった。)
「それで服の価格なんだが300万ソルでどうだろうか?」
(あまり、ピンと来なかった、高いのか安いのか全くわからなかった。あと単位ソルっていうんだ)
ずっと話を聞いていたアレックスさんがガックリした顔をしていた。
「アレックスさん、どうかされましたか?」
「いや、今回の護衛代金が50万ソルなんだよ。割りのいい仕事ではあるけど少し残念な気持ちになってね」
(あ~それはなんとも言えないが、命の恩人でもあるしなぁ)
「キャンベルさん、もし良ければ今回の300万ソルのうち、50万ソルを『緑の森』の皆さんとカノンさんに渡してもいいでしょうか?」
「シンジがいいなら別に構わないよ」
目に見えてアレックスさんに笑顔が見えた。
「ありがとう、シンジなんだか悪いね。」
「こちらこそ命を救っていただいた御礼もできたので。」
「後でみんなに伝えておくよ。」
キャンベルさんがふっと思ったように
「シンジ他の服のデザインや技術についても教えてくれるかな、我々もこちらの世界の事をいろいろと教えてあげるからさ」
(まさに渡りに船、気になることがたくさんあるなかでありがたい。)
「是地お願いします。」と頭を下げた。
「あと、アレックス今回のことは秘密厳守だこれが守れないなら冒険者ギルドに訴えるからな」
「もちろんです。必ず秘密にします。」
「シンジのことについてもだ、迷い人についてはいろいろあるからな」